休日、県庁所在地郊外にある巨大イオンモールに出かけた。

 今日は姪も乗っている。妻は無印良品に、姪は問題集を買いに書店に、俺はスタバで脚本書き。その帰途、姪のテンションはさらに上がる

 

 「私はこの町を出たい。都会に憧れているとか、町が田舎だからとかじゃない」

 「普通に勉強できる環境、勉強が自由にできる場所に行きたい。この町にいると、コソコソ勉強しないといけない。頑張っていい成績取るとバカにされる。だから、数学とかだとわざと計算間違いして満点にならないようにする。おじさんはどうだった。私は女だから、うっかり満点取ると本当にいじめられることがある。バカな男子に変なことされるんだ。」

 

 「勉強ができる女の子の進路って何か知ってる? 大学に行く許可を親からもらうためには、先生か保育士か、看護師か公務員って言わないといけないんだよ。地元の普通高校の進路実績見た? 県内の私大の教育学部か高等看護学校ばっかりでしょ。それしかないんだよ。その中には、本当は文学部だったり、理系希望だったりした人もいたと思うし、学力的には早稲田とか行けた人もいたかもしれない。でも、それ以上を望んでも、それ以下のことしか認められないんだよ。」

 「結局、県庁所在地の高校に進学できる人は限られる。おじさん気づいている?

市外の高校に進学する人の多くは、この町の地元人ではないんだよ。おじさんみたいに地元の人もいるけど、移住してきた家庭の人が多い。お父さんかお母さんが県庁所在地の出身とかね」

 

 「生徒会の先輩で県庁所在地の高校に進学した先輩いるんだけど、その人に、裏切り者っていう人いるんだよ。戻ってくるなとかいうの。何でそんなこと言うんだと思うんだけど、その人の親かお祖父さんかかそういう考えなんだと思う。祖父さんが市政刷新ネットワークだっていう同級生の子の考え方も」

 「そのくせね、市内の高校はバカの集まりとかいうんだよ。おかしくない、自分はその高校に行くんだよ。そして、どうせこの町はダメだとか言いながら、この町で暮らしていくわけ。でも、町を良くしようという市長のことは嫌いだっていうのね。」

 

 「大人も変だよ。子供の数が減っているから学校も減らさないといけないでしょ。でも学校を減らそうとすると教育が大事とか急に言い出す。普段は地元の高校はバカばかりとか、市外の高校に行くのは裏切りとか言って、全然教育のことわかってないのにさ。しかも学校を減らすのは市長の陰謀だとか、わけわかんないよ。こんな町で暮らしたくないよ。」

 「だからね、i-pad配られたのは本当にありがたい。スタディサプリが無料で使えるのは本当に助かる。ネットやスタディサプリの使用料は市が負担してくれてるよね。勉強組は毎日見てる。私は英語の先生と小論文のF先生尊敬している。」

 「もちろん、勉強しない組は使ってない。関係ないとか、無駄な予算とか平気で言う。それでもう一つ道の駅作った方がよいとか言う。もうクラスの中に市政刷新ネットワークがあるみたいで本当に嫌」

 

 「まだ大学で何を勉強するかとか学部とかは全然決まってないけど、できれば、勉強したいんだけどそういう環境にない子供たちに、勉強を届けたい。そんな仕事がしたい。勉強がしたいけど、勉強をしようとすると親が反対するとか、同級生にバカにされるとか、そもそも町の大人が子供たちを支配して自分の思い通りにしようとしているとか、そういう町で生まれても大丈夫だよって言ってあげたい。」

 

 助手席にいる妻が少し泣いていた。