国会議員から票の取りまとめを依頼され、お金をもらって逮捕された市長が辞職した。半年前に行われたばかりの市長選挙がまたある。
俺がお世話になっている観光協会のオーナーである「山川さん」も、同じ罪で逮捕された市議会議員の一人だ。議員は辞職したが、オーナーは継続。観光協会も俺もとりあえず無事。
それがわかって、少し安心した。
夕食の時、父に市議会はこれからどうなるのか聞いてみた。
元市議会議員だった父は「田舎町の議会の流儀」を知っているだろう。
父は、現在の副市長が市長になるという。
「市長になるってどういうこと? 選挙があるよね」
「市長選には副市長しか立候補しない。だから無投票当選だ」
「前回の市長選で立候補した人は? 負けたけど結構競った人いたよね」
「彼女は市長選には出ない。その後の市議選に出て市議会議員になる」
「どういうこと?」
「そういうことでもう話はついている」
「…」
「副市長も市長を1期つとめたら退任する。そして、辞職した市長が市長に復帰する」
「禊が済んだということ?」
「そういうことだ。市長選が終わったらすぐに市議会選挙がある。選挙には辞職した市会議員がみんな出る」
「当選できるの?」
「お前がお世話になっている山川さんがな、辞職した議員の分までお金を出すといっている。山川さんが国会議員と知り合いで、いろんな人に紹介したのがそもそもだからな。責任を感じているんじゃないか。」
「…」
「山川さんは自分も含めて辞職した議員の票の取りまとめに動いている。手ごたえはあるそうだ。」
これが田舎の流儀らしい。