ここまで俺自身のことを語ってきたが、少し長くなった。申し訳ない。

 履歴書風にまとめるとこうなる

 ・専業農家の長男として誕生(5歳年上に姉がいる)

 ・小学生の時、シェイクスピアと出会いはまる。

 ・中学生の時、演劇に目覚め、早稲田大学で学びたいと思う

        Sと出会う。

 ・高校    地元を離れ県庁所在地トップ進学校に進む

        放送部に入る

        第一志望の早稲田大学第一文学部合格

 ・大学    演劇サークルに入る。

        4年生の時、サークルの先輩の紹介で映画出演を果たす

        これ以降、オーディションを経てテレビ・舞台に出る

 ・卒業後   東京に残って役者から裏方まで何でも引き受けながら

        演劇に関わる生活をする

 ・31歳     東京の生活をたたみ、地元の町に戻る

          地域おこし協力隊として町の文化振興にあたる

 ・34歳     地元の観光協会の嘱託職員として町の文化振興にあたる

 

 俺の実家は代々の専業農家で、町の中では富裕層である。

 ただ、俺は農業は性に合わず、読書と勉強ばかりしていた。成績はよく、小学校は1番で卒業した。中学で「S」に出会った。ただ同じクラスになったことも、しゃべったこともない。「S」は隣町の小学校を1番で卒業して中学に進み、中学も1番で卒業した。俺の中学の卒業成績は俺は2番だった。地元の高校から大学進学は望めないので、俺は町を出て県庁所在地のトップ進学校に進んだ。そこから早稲田大学に進んで、卒業後も演劇の世界で生計を立てていた。

 食うには困らなかったが、役者としては芽が出ず、脚本家としてもゴーストライター止まりである。一方で、中学で成績1番だった「S」は、京都大学から旧財閥系の銀行に進み、そこで海外勤務になったと聞いた。30歳で年収1,000万円を越えるらしい。

 

 30歳の時、俺は将来どうするか考えた。二つの選択肢があった。

 このまま東京に残って演劇の世界の片隅で生きていく。

 地元に戻って長男の役割を果たしつつ、新しくできた文化会館で地元で演劇の指導をする。

 

 俺は後者を選んだ。

 31歳で地元に戻り、中高生の演劇の指導や映像制作、企業のHPデザイン・管理・運営、脚本のゴーストライターなどをしつつ暮らしている。実家で暮らせるので家賃はない。可処分所得は東京時代より大きい。

 田舎の高卒社会人より稼ぎが大きくなったところで、俺は遅い結婚をした。

 そして、町をゆるがす事件が起きる。