地元に戻って3年目になった。

 地域おこし協力隊としての任用なので、今年度末で任期切れである。

 その後のことに、館長や教育長からの話はない。こちらから問いかけても何となくはぐらかされる。口では褒めてくれても、その先はない。田舎だなと思った。

 再び父に告げた。

 3年の任期が終了して、その後何もないなら東京に戻る。

 これは脅しとかではない。補償がないなら東京でお仕事を探すだけである。

 

 しばらくして、山川さんという人がやってきた。

 現職の市議会議員で、市民会館の指定管理企業のオーナーでもある。

 新年度から山川さんの企業で働かないかというのだ。山川さんは、いろいろな事業を立ち上げている人で、市内に複数の企業を所有している。ただ、市議会議員でもある山川さんが社長という役職に就くと都合が悪いことがあるようだ。そこで山川さんは自らをオーナーと称し、周囲にもそう呼ばせている。

 その山川さんが、「観光協会の嘱託職員ではどうか」という。

 観光協会から、市民会館の職員として派遣するというのだ。そうか、観光協会も市民会館の指定管理企業もオーナーはこの人だ。

 観光協会からの派遣となるとと、観光協会と市民会館とそれぞれに俺の机を置ける。つまり今と同じお仕事ができる。観光協会の映像制作も劇団の指導も継続可能だ。

 給与を聞くと、基本今と同じだと言う。その代わり副業はOKで、労働時間もある程度自分の裁量が許される。任期の期限はない。地域おこし協力隊としての「事業費200万円」はなくなるが、それは仕方がないだろう。

 

 俺は承諾の返事をした。これで俺は地元の人間になるのだな…と思った。