言語の身体感覚 | ZENT進学塾

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読解が苦手なお子さん、苦手な方へ

【流し読み】
以前、中一と中二に話をしたことがあるのですが、読解が苦手な子は、「読む」ということがどのようなことかわかっていない子が多いです。
 

字面「だけ」を追っている可能性が高い。

字面だけ追っていると、全く頭に入らず、大まかにこういう話〜とはわかっても、細かいところは全て抜け落ちています。
 

結果、「内容を説明して」というと、大まかな話は説明できても、細かい部分はうまく覚えていなかったり、説明できなかったりします。

 

本当は、高度な文章になればなるほど読みながら内容を自分なりに噛み砕いたり、考えたりする必要があるのですが、それはなかなかハードルが高い作業です。
 

そして、その前段階である場合もあります。
 

 

ということで、以下をお試しください。


【黙読】
一度、そんなに長くない文章を黙読させてみてください。

一段落だけとかでも構いません。

新書の1ページ分か、半ページ分くらいの長さで十分です。
そして、黙読にかかった時間をはかる。
その後、全く同じ文章を音読させてみてください。

普通に考えれば、音読は2回目ですから早く読めるはずです。


もちろん、黙読と実際に口を動かすのとでは動作が増える分時間はかかりますが、大人なら、そんなに時間の差は生まれません。
 

しかし、子どもたちにそれをやってもらうと、音読に黙読の3倍、4倍の時間がかかる子がいます。

こういう子は黙読の時、本人は、読んでいるつもりなんです。


しかし、現実は文字を流しているだけで、読んでいるとは別の作業が行われています。


音読になると一音一音発しないといけないので、文字を流すわけにはいかなくなります。

 

その結果、音読させると時間が倍以上になることが多々あります。


音読の遅さは問題ではありません。

 

問題なのは、黙読の「異常な」速さです。

読解問題をやると、こちらの想定している時間より、圧倒的に早く解き終わる子が大勢います。


だいたい、この現象です。


文章を読むときは頭の中で音読してみてください。


黙読は音読と同じ速さ


それを意識させてみてください。


今度は時間内に解き終わらないということも起こるのですが、正答率、内容の理解は段違いにあがります。
 

速さは徐々についてきます。

全員に当てはまるとは思えませんが、試してみるとよいかと思います。


【現代文以外でも】
この黙読と音読の差、英語や古文などでも同じことが起きている場合があります。

文章は、いかなる文章であろうと文字面だけで理解しているわけではなく、音のリズムとあわせて理解し、覚えていくものです。

歌詞などを読んでまるまる一曲、リズムなしで覚えるのは難しいのに、音楽に合わせてなら、わりとまるまる一曲覚えることができる
 

それは、リズムのおかげです。


以下をご覧ください。

まわれ まわれ メリーゴーランド
もうけして止まらないように
動き出したメロディ
LA・la・la・la・la  LOVE SONG

久保田利伸
LA・LA・LA LOVE SONG
 

ですね。

おそらく、皆さんご存知でしょうからなかなか、イメージは難しいかもしれませんが、これをリズム無しで暗記するとしましょう。
その場合、さて、laは何回あるの?となります。
ところが、これを歌うときはlaは何回かなんて、気にしません。
リズムで身体感覚が覚えているからです。
 

暗記はリズムと共に。

これは暗記する場合ですので読解とは微妙に異なるのですが、読解の場合もこれと似ていることが起きています。


普段あまり気にしていないことですが、言語には言語ごとの、文章には文章それぞれのリズムがあります。

大人や語学に堪能な方は、無意識的にそのリズムに合わせて文章を読んでいるはずです。


ところが、それはたくさんの文章を読んだ経験や、学習をした結果として身についた身体の感覚なのであって、初めから皆がそれに対応できていたわけではありません。

初学者は、このリズムを持ち合わせていないんですね。


そして、黙読となるとさらに、このリズムというものは影を潜めてしまいます。

だから、幼い頃は音読しながら日本語のリズムを身につけていくんですね。


これをおざなりにしてはいけません。

英語も古文も漢文も、音読は必須です。


それは、現代日本語ではある程度身につけたはずのリズム感覚が、それらには無いからです。


それをせずに、さあ長文読もー! 古文読もー!っとなっても、リズムがないのですからうまく読めず、結果、頭に残りにくくなってしまいます。

『竹取物語』や『平家物語』や『おくの細道』の暗唱は、その文の暗記に意味があるのではなく、音のリズムを知るためにやっているわけです。(と、私は勝手に思っています)
何故か冒頭文を覚えることそのものに意味があるかのようになっていますが…。

そして、リズムを掴んできたら今度は黙読してそのリズムにあわせながら読む。

そのように心がけていくと良いのではないかと思います。

 


【自分で書くときだって】
読みやすい文章と、読みづらい文章というのも、ここから見えてくると思います。

読みやすい文章というのは、皆がそのリズムを知っている文章といえるでしょう。


音楽のカノンコードみたいなものでしょうか。


一方、読みづらいものというのは、聴き慣れないリズムで書かれているか、コード進行がめちゃくちゃだったり、不協和音のような構造だったりするわけです。


あえてそういう文章にしている高度な技術を持つ作家さんもいらっしゃると思います。

記述問題や作文、小論文の際に、非常に読みづらい文章になる子と、読みやすい文章を書く子といます。


これも、日本語のリズム感覚の問題であることが多いです。(語彙力の場合も多々あります)


「なんでここでその助詞使うの?」「なんでここ、こんなにクドいの?」「なんでここに読点あって、ここにはないの?」みたいな子は、言語の身体感覚が弱いんです。

皆さま、綺麗な文章を音読して、言語のリズムを身につけましょう