先日、メディアによる政局報道の問題点を指摘したところ、多くの反響をいただきました。実例を挙げて内閣改造を巡るメディアのスクープ記事が食い違っていることを指摘しましたが、今朝の新聞でその結果が出ました。続編として記しておきたいと思います。
『「改造」報道にみる日本メディアの内向き度』
政策工房 Public Policy Review
BLOGOS
http://blogos.com/article/90800/
日本経済新聞は16日の朝刊一面で8月下旬に安倍晋三首相が内閣改造に踏み切ると報道。産経新聞は17日の朝刊一面で「9月上旬に内閣改造と自民党役員人事」と報じました。少なくとも改造の時期についてはどちらが間違っていると指摘しましたが、答えがはっきりしたようです。
共同通信や時事通信は昨夜、「9月第一週に内閣改造」との記事を配信。NHKや民放各社も一斉に同様のニュースを流しました。今朝の朝刊各紙も同様の記事を掲載し、日経新聞も政治面に「内閣改造 9月第一週に」という記事を載せています。
一度、改造時期を8月下旬と報道した日経が軌道修正したのは、自分たちの報道が間違っていたとはっきり確信したからでしょう。民放各社まで足並みをそろえて同じニュースを流しているということは、政府・与党の幹部が記者たちに対してはっきり認めたのだと想像できます。
苦しいのは日経です。政局報道で間違えた場合、メディアは基本的に「訂正」をせず、取材相手の方針が変わったのだとごまかします。今回もまさにその通りでした。今朝の記事では「改造時期はお盆休み明けの8月下旬を一時検討していたが、インドのモディ首相が8月31日~9月3日に来日することが固まったため、後ろ倒しすることにした」としています。
インド首相の来日時期が報じられたのは20日ごろ。その前には産経新聞が「9月上旬の改造」を言い当てていたのですから、苦しい言い訳です。「正確さが売りの新聞が、政局報道を巡って誤報を繰り返す」という格好の事例となりまし
た。
そもそも内閣改造の時期が8月なのか、9月なのか、誰が関心あるというのでしょうか。新聞を食い入るように見ているのは自民党で、入閣適齢期でいながらいまだ入閣したことのない約50人の国会議員や、ボスが入れ替わる中央省庁の役人たちだけではないでしょうか。一般の読者にとってはもっと大事な情報がたくさんあるはずです。
確信の持てない記事を掲載することを、業界用語で「飛び降りる」といいます。確信は持てないけど、たぶん合っているだろう、そして今日書かなければ他紙に出し抜かれる――。そんな時に、記者はキャップやデスクから飛び降りるよう指示されます。「競合他社に勝ちたい」というちっぽけなプライドのために。
「その通りだと思う。誰のための仕事やら」。記事を見た知人のメディア関係者から、こんな言葉をもらいました。個々の記者はまともな感覚を持っているのですが…。