首相は「地方創生」より分権、道州制を | 山本洋一ブログ とことん正論

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元日経新聞記者が政治、経済問題の裏側を解説!

 安倍晋三首相が報道各社のインタビューで、秋以降は「地方創生」を重点テーマに掲げると表明しました。来春の統一地方選をにらんで地域経済を底上げする狙いですが、国にできることには限界があります。政府がやるべきなのは地域の創意工夫を引き出す規制緩和と地方分権です。


 http://mainichi.jp/select/news/20140714k0000m010145000c.html


 首相は毎日新聞のインタビューで、地方活性化や人口減少対策のため設置する「地方創生本部」(仮称)が「この秋以降の安倍政権の最大のテーマ」だと強調。臨時国会前の内閣改造で「地方創生担当相」を設置し、内閣官房に地方創生本部事務局の準備室を設置する考えを示しました。


 アベノミクスで大企業の業績が上向く中、地方を中心に「景気回復の恩恵が広がっていない」と考える国民が多いのは事実です。しかし、それはアベノミクスの現状が金融緩和による「円安」と、それに伴う株高にとどまっているから。恩恵を受けるのが大手製造業や資産家に限られているのは当然です。


 選挙目的で無理やり地方経済を活性化させようとすれば、バラまきしか手はありません。全国一律の、効果的で持続的な景気活性化策などないからです。政府は来年度予算編成で地方創生に1兆円の予算枠を付けるようですが、結局は既視感のあるメニューが並ぶ予感がします。


 政府が地方重視を打ち出すと聞くと、7年前を思い出します。私は20079月に東京政治部に配属となりましたが、直後に安倍首相が退陣を表明。後任の福田康夫首相、さらにその後任となった麻生太郎首相はともに自民党政権の支持率回復を狙い、地方重視を打ち出しました。


 その一つが記憶にまだあるであろう「定額給付金」。基本的に12000円、65歳以上と18歳以下の高齢者と若年層には2万円を配った、あのバラマキ政策です。


 当時は支持率がどんどん低下していましたが、その原因を小泉改革によって地方や高齢者、貧困層が割を食ったことだと分析。弱者対策として予算をばらまいたのですが、その判断は間違っていました。ますます有権者は自民党離れを起こし、政権交代につながったのです。


 第二次安倍政権も支持率が下がりつつあります。これまで好調を続けてきましたが、集団的自衛権の行使に向けた閣議決定やヤジ騒動によって潮目が変化。昨日行われた滋賀県知事選では、当初有利といわれていた自公推薦候補が元民主党衆院議員の三日月大造氏に敗れました。


 来年春の統一地方選で勝つには地方経済を活性化するしかないとの考えのようですが、以前と同じことをすれば再び同じ間違いを繰り返しかねません。地域活性化の即効薬はないと割り切り、正々堂々と規制緩和と地方分権に取り組むべきです。


 地域の抱える課題はそれぞれ違いますし、地域の持つ資源もそれぞれ異なります。産業構造も違えば、住民の意識も違います。国が全国一律でそれを活性化することなど不可能です。規制緩和で民間の活躍できるフィールドを広げるとともに、道州制への意向を視野に国から、地域の事情をよく知る自治体に財源と権限を委譲していかなければなりません。


 そもそも安倍首相は自民党きっての道州制論者のはず。自民党内の空気に惑わされず、自ら信じる道を進んでほしいと思います。