「年195回出張」県議の、笑えない号泣会見 | 山本洋一ブログ とことん正論

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元日経新聞記者が政治、経済問題の裏側を解説!

 記者の追及に泣き叫び、意味不明な言動を繰り返す県会議員の記者会見が話題となっています。追及されたのは政務活動費の不正受給疑惑。映像を見て思わず笑ってしまった方も多いと思いますが、カネの出どころが税金だと考えれば、住民にとっては笑えない話です。


 注目されているのは兵庫県の野々村竜太郎県議(47)。先月30日に県議会が議員の活動経費である「政務活動費」の2013年度分の収支報告書を公開したところ、東京など4か所への195回分の出張費として約300万円を計上していたことが発覚。記者会見で詳細を追及したところ、子どものように泣きわめいて使途についてはっきり説明せず、記者に逆切れしたというものです。


 2011年に初当選した同県議は2011年度と2012年度にも計480万円にのぼる多額の出張交通費を計上していました。活動費の支出には本来、領収書が必要ですが、自動券売機で購入した場合の例外規定を適用。詳しい使途を明らかにしていないということです。


 兵庫県議会の政務活動費は月額50万円、年間で600万円。活動費は議会での質問に向けた調査研究費や事務所費、人件費などに充てることができますが、野々村氏は国会議員などへの「要請陳情等活動費」として計上していました。


 しかし、野々村氏は無所属。同じ党に所属する国会議員もいないのに、年の半分以上を要請陳情に費やしているというのはあまりにも不自然です。カラ出張で、カネはポケットに入れていたと疑われても仕方ありません。本当に活動実績があるならば、早急に説明しなければなりません。


 議会側も杜撰です。神戸新聞によると、議会事務局は「支出したと主張される限り、報告書をそのまま受け付けるしかない」と説明しているそうですが、そんなことでいいのでしょうか。年間600万円というカネは住民の納めた税金です。透明性を確保し、住民の理解を得られるようにするのは議会の責務です。


 自動券売機で購入すれば領収書を提出しなくていいというのもおかしな話です。今や隣駅への130円の切符だって、ボタンを押せば領収書が出てきます。交通系ICカードへのチャージだって領収書を発行できますし、使用明細を出すこともできます。交通費も原則はすべて領収書の提出を求めるべきです。


 政務活動費を巡っては、私の地元・愛知でも新たな疑惑が浮上しています。減税日本所属の半田晃士県議が昨年、フランスに渡航予定だった知人の女性に滞在期間を延長してドイツでの動物の殺処分の状況やオランダの農業などを視察するよう依頼。委託費用を曖昧に算出して、政務活動費から73万円を支払っていたというものです。


 半田氏は2日の記者会見で委託視察の報告書を公開しましたが、中身のほとんどがインターネット上にある省庁の刊行物や個人のホームページの記述と酷似。「コピペ疑惑」が持ち上がっています。報告書の内容はともかく、政務活動費で個人に視察を委託するという行為自体も問題です。


 「だったら減らせばいい」という声もありますが、私は否定的です。適切な使い方をして、住民に利益をもたらしている議員もたくさんいるからです。適切な使途と、今回のような不適切な使途をはっきり分別するためにも制度を厳格化し、チェックもしっかりする体制を築くべきです。


 それは地方議会だけではありません。このブログでは何度も触れていますが、国会議員には地方における政務活動費に相当する「文書通信交通滞在費」という経費が認められています。月額100万円で、経費にもかかわらず使途について一切の報告義務がありません。


 当然ながら国民のために有効に活用している議員もいれば、ポケットに入れて遊行費に使っている議員まで様々です。正直者が馬鹿をみるこんな制度は一刻も早く見直し、すべての使途について報告義務を課すべきです。


 下劣な野次を叫びながら黙っていた議員、会見で泣き叫ぶ議員…。国民の政治家に対する信頼は低下する一方です。自浄作用を発揮できなければ負の連鎖は止まりません。