雪月 剛のブログ55 ノンフイクションシリ―ズ㊵
こんにちは雪月 剛(ゆづき ごう)です。
よろしくお願いいたします。
いつもと同様、要所と思う箇所は紺色か黒色で大文字ないしは斜体文字にしておきます。
では-------------
本来は違う雪月 剛ブログ記事を用意していたのですが、新型肺炎コロナウイルスで現在(いま)日本中を席巻、否、世界中が非常事態に陥っている情況ですので、
前回、「新型コロナウイルスとミッドウェ―海戦」 と同様、生命に関するお話を続けたいと思います。
私は、嘗て長年にわたり、うなぎの養殖に始まって、中部地方パイオニアと称されたヒラメの養殖、
更には、その上に海水魚、主にヒラメ稚魚の人工孵化事業に取り組んでいたことは既にお話してきたことであります。
魚の養殖とは、〖 経済動物 〗、つまりは、〖 生命を宿す商品 〗を人間の都合に拠って、
自然の中に棲息している生物を、即ち〖 人為的に生産、育成 〗 をする作業ということであり、
〖 食物連鎖 〗という人間社会に拠ってつくられた〖 きれいごと、偽善!?〗な言葉ではなく、
《 弱肉強食!! 》 の一環に確と容れられるものであると私は捉えているものです。
さて、水産養殖という職業で、最も筆頭にくる絶対的に欠かせない原則で基本となる仕事は、
飼育している経済動物の魚が順調に育成されているかどうかを 「 24時間態勢で正確に情況が観察把握ができているかどうか 」 に、全ての生命線が懸かっています。
水産養殖、中でも、取り分け うなぎ養殖、や、海水魚ヒラメら海水魚陸上水槽養殖は同じ人為的とは雖も、
自然の中の海生簀とは一線を画するものではありますが〈 詳述はまたの機会に 〉------------
何れ、どちらにしましても、水産養殖は〖 病気との闘い 〗といっても過言ではありません。
また、扱う相手が経済動物である限り〖 己自身が持つ、経済欲との闘い 〗の連続でもあるのです。
この度の新型コロナウイルス事件での政府首脳陣と官僚側が、もしも水産養殖に携わっていたとしたら、破産に向かってまっしぐらの対処にしかみえないものです。
「 24時間態勢で正確に情況が観察把握ができているかどうか 」 に全ての生命線が懸かっている、と私は断言をしましたが、
設備への事故に対する監視も同時にはあるのですが、何と言っても〖 魚の病気 〗に対する常時の観察に尽きるのです。
何故か!!
それは、何が何でも、早期発見に尽きる問題だからの所以です!!
何度でも繰り返しますが、魚とは雖も、一家の生計を立てている経済動物なのであります。
全滅でもさせてしまえば、養殖業一家生命の存続にかかわるのです。
皆さん、 魚を飼育している限り、真さに真剣勝負、 一切の手は抜けないのです。
手を抜いて事故、 及び、 〖 病気 〗を見逃してしまったら、 即、 自分たちに危機が降り懸かってくるからの所以です。
災いが、 事故からではなく、 病気の方からやってきたとすれば、
その〖 病気 〗を、 仮に、もしも見逃してしまったとしたら、
他の水槽に伝播(でんぱ)しているかも知れないと畏れるのが水産養殖の定石であり、
鉄則となるものです。
水産養殖の基本中の基本、この事象は家畜業界にあっても共通の鉄則事項となるものですが、
ここでは魚のみに限定をさせていただくこととします。
極、常識的なお話ではありますが、少しでも良質の飼料を与え(食わせ)、ちっちゃな稚魚を「 人間が食する成魚 」へと人為的に育成をさせる。
その大きく成長させた分の差額で収入を得る仕事。
ざっくりと申さば、元々自然の中で棲息してる魚を、人間が人為的無理矢理に成長をさせてしまうのです。
飼育主の欲の間違いに拠って、一歩手許が狂うと、 たちまちにして消化不良らを起こし、真っ先に、魚の消化器官などの循環器系統の病気を発生させます。
それに則った体力消耗により、様々な病気を誘発してしまう情況ができてしまいます。
魚の病気に対する対策方法ついて、ここでは詳細の割愛をさせていただきますが、魚も、何度もいうところの動物や、人間と基本的には全く一緒です。
何をかいわんや、それどころか、 太古の時代、 水中の魚類より地上に産まれ出てきたのが現在(いま)の動物、そして人類の順番であった筈------
ま、それはともかく、水槽、他の池に拠って程度の差こそは生じますが、発生させた病気が他の水槽、各池に伝播する場合が多くなるのです。
無傷で済むという幸運には、中々巡り合えない道程を迎えてしまいます。
日本国の水産養殖業は、概ね、地区に拠って地場産業として固まっている所が殆どです。
その特徴を以って、病気の波及は、一個人の養殖事業所だけでは済まず、新型コロナウイルスと全く同じ動向、次第に蔓延してゆく場合が多いのです。
一度発生すると固まった地区だけではなく、何故か? 全く無関係の、遠く離れた隔離状態にまでなっている事業体にまで及ぶという、
不思議な現象までが発生してくるのです。
現在のうなぎ養殖は、すべてビニ―ルハウス加温式施設内で行われていますが、その起源をご存知の方、
または昔の露地池式養殖鰻時代を識っている方が果たしてどれほどおられるでしょうか?
うなぎは、温帯性の生物でありますので、冬季には池の、
それも、良質な泥中で春季を迎えるまで冬眠をする魚類であることを識っておられるでしょうか?
もう半世紀も経っているでしょうか。
日本国中のうなぎ好きなら誰もが識る、当時は、浜松がうなぎの大産地でありました。
次いで愛知県の東西三河地方、そして、三重県が日本国の主な産地を形成しておりました。
その大産地浜松発で後に判明、鰓腎炎(えらじんえん) と名付けられた病気が発生しました。
そして現在(いま)世界中を脅かしている新型コロナウイルス同様、見る見る間に全国へと波及、蔓延をしてゆきました。
感染経路だろうが何だろうが、当時はどうした経路で伝播してくるのか皆目解りませんでした。
未だに解明はされないままに終焉しています。
それ以来、、うなぎの病気は浜松方面よりやってくるのを常としていました。
私が養魚界に就いた当初の主力飼料は〖 生餌〈イワシ、サンマ、ホッケらゝ〉 〗という鮮魚だけでした。
ですが、時代が代わり、数年が経った頃よりメ―カ―の工場に拠ってつくられる、配合飼料に取って代わられる時代を迎えました。
その理由から、ひょっとしたら、人工的につくられる配合飼料に原因があるのではなかろうか?
と疑った人たちもいて、元々の〖 生餌 〗の形態に戻してやり続けた養魚家もありましたが、
結果はやはり、 〖 鰓腎炎 〗の治まる気配は全く望めませんでした。
昨年の暮れ、立ち寄った最寄りの図書館のリサイクル棚に偶然の縁で出遇った一冊の本を、ここに、少しでも皆様の参照となるように載せておきます。
既に、20年前の本とはなりますが、人類に警鐘を鳴らしていたお人がこの日本国にまた一人おられたことを識った本です---------
『 地球環境報告Ⅱ 』、石 弘之(1940年~)著、岩波書店。
1998年12月、〈環境悪化の影響がいよいよ、水資源枯渇、漁業資源の減少、土壌劣化、------身近に迫ってきた〉。
〖 鰓腎炎 〗の主原因は、環境を容れた複合的な要因が齎(もた)しているのではないかと、常々、私も捉えていた所以から、
石 弘之氏が、真摯な学者としての確とした分析をされていたことを識って胸を撫で下ろしているものです-------------
経験則を重ね、〖 塩分が鰓腎炎に効果的 〗だと次第に解るようになり、
〈 私と、私の地区の養鰻果の連中で気付く成り行きとなり、全国に伝わって行ったのです 〉
大被害は免れるようになってはゆきましたが、殆ど毎年の発生をみるようになり、安定的な養殖が非常に困難な時代へと突入してしまったのです。
根本的に、現在(いま)とは違って、当時の養鰻家の殆どは自給自足の稚魚シラスでしたので、営業は何とか凌いでいましたが、
被害は甚大に上るもので、計画的な営業など全く臨めない不安定な情況が続く惨状を迎えていました。
うなぎが棲息する生態系の適温は元々が28℃~30℃が最適温度。
そこで、ビニ―ルハウス加温式施設の研究が始まり、最初は稚魚シラスの育成より着手、
そして、次第に、ビニ―ルハウス加温式内の周年一環養殖となり現在(いま)に至っているという現状〈歴史?〉があるのです。
適温ではあるのですが、ビニ―ルハウス加温式養殖は、増々自然に反する人間の行為なのでしょう。
育成は非常に高い成育効率とはなったのですが、コストが懸かる分、増々高密度飼育の要求をされる時代となり、
今度は病気に対するアバウトな対応が寸分も許されなくなりました。
先日、所ジョ―ジ氏の番組、いま人気絶頂の 『 ポツンと一軒家 』 を視聴をしていたところ、
稚牛出荷専門という家畜農家の老夫婦を映し出していました。
その中で 『 あゝ、嘗ての自分と全く同じだなァ 』 と記憶の底を呼び戻されたシ―ンをつくづくと眺めてしまいました。
奥さんでもある、おばあちゃんが-----------
『 出産に慣れない母牛がね、時機(とき)には産まれ落ちたばっかりの自分の稚牛をね、誤って踏んで殺してしまう場合があるんだよ。
だからね、それを守るためにね、ちゃんと立ち上がり大丈夫だと判断できるまで、こうしてね、赤んぼ牛に添い寝してね、ずっと過ごすんだよ 』
といって産まれたばかりの赤ちゃん牛を抱いて寝ているシ―ンを視せていたのです。
私も、養魚、及び、ヒラメ稚魚の人工孵化に当たっては、孵化水槽の直ぐ傍に発泡スチロ―ルをベッド代わりに敷いて、よく寝ていたことを想い出していたのです。
どんな微かな異常すらをも見逃さないためにです。
その基本は、どんな種類の成魚だって全く変わりはありません。
成魚は大きくなって、体力が付いきて、少しは余裕を持たせてくれている違いだけなのです。
経済動物の飼育には、〖 病気 〗を出さないことが最良の方法なのですが、
ですけれど、 そんなこと現実的には殆ど不可能なことです。
経済動物に携わる〈関わる〉人間のやれることは、《 一にも二にも三にも、全部! 》、早期発見〈 人間の難病、ガンと全く同じです--- 〉に尽きます。
そしてその上で、対処処置に対峙してゆくのです!!
魚類で、即、絶対的実行をしなければならぬ原則は、何を先に置いても、直ちの餌給仕中止-----------
魚類の場合には、魚体に食物〈餌〉が入っていたら、物凄く体力に負荷が懸かり体力を消耗、
病気に対抗する抵抗力が著しく低下してしまう理由からです。
〈 養殖の知識がないお人には、とても不思議な現象に映るやも知れませんが、魚類に体力がある裡は、
餌を腹一杯食べてしまうものなのです。 それこそ、 死ぬまで食べ続けてしまうといっていいほどです----- 〉
早期発見が遅れると、遅れれば遅れるほど〖 病気 〗の被害は甚大なものとなってゆき、場合に拠っては、手遅れ、全滅をさせてしまうことさえ起きます。
この原理現象は、 大きい小さいに関わりなく、
前回ブログ 《 ミッドウェー海戦 》 のお話と寸分違わなく繋がるものと思います-------------
うなぎは、魚類の中でも魚体が最高に強い部類で、処置にまだ手が打ち易い魚だとは思いますが、
これが、もしも、ヒラメや、鯛、ハマチらで処置が遅れてしまったとしたならば、イチコロになりかねなくなります。
である所以を以って、作業以外は、毎日、毎時間が魚の観察に明け暮れるという分けなのです。
その事情は、前述の牛農家の老ご夫婦も全く同じ意味のお話をされていました。
テレ朝、羽鳥慎一氏モ―ニングショウで前回のブログで取り挙げた玉川徹氏が、
『 新型コロナウイルスに立ち向かわなければならない任務を持つ、 政治家も官僚も危機感がまるでないよ!!
だから後手後手と廻ってしまうんだ、
全く莫迦としか言いようがない!!------ 』
と、嘆き叫んでおられましたが、
昨日、夕方6時より始まった、NHKでの新型コロナウイルスに対する安倍総理大臣の決意表明と記者会見をしっかりと視聴をさせていただきましたが--------------
もしも彼ら政治家、それもトップリ―ダ―である筈の政府首脳陣や官僚が、老ご夫婦が携わっておられる牛農家、及び水産養殖業らに携わっていたとしたら、
全員が破綻を迎えること間違いなしです!
事実、 官僚上りのお人 〈 水産試験場職員、大学教授やら学者の方ら 〉 で水産養殖業において成功をしたという
ためしを、こんにちまで、 限りなく私は聞いておりません。
-------シリ―ズ㊵は以上です。
ノンフィクションシリ―ズ㊶に続きます--------
2020年3月1日
雪月 剛(ゆづきごう)