スケーター史上初の東京ドーム公演である「Yuzuru Hanyu ICE STORY  "GIFT"  at Tokyo Dome」が開催されて1年目の今日、遂にテレビ初放送されました。

1年後の同じ日同じ時間に放送というテレ朝さん粋な計らい。熱狂に包まれたあの長い1日の記憶を辿った方も多かったと思います。

 

「羽生結弦の半生とこれからを氷上で表現する物語」

それ以外は何も知らされないまま迎えた当日。ドームを埋めた3万5千人の観客とライブビューイング及び配信で見守る世界中の視聴者の前に示されたのは、前年の単独公演「プロローグ」がプロスケーター羽生結弦にとって本当にプロローグでしかなかったという恐るべき現実でした。

2時間の公演で全12曲(クワド4本3A6本含む)をひとりで滑り切るフィギュアスケーターとして類稀な能力、深く自分の内面を掘り下げて自分の言葉で物語としてシナリオを描き切るクリエイターとしての才能、それらを公演へと繋げていく「創造する」ことへの情熱。

それら全てが詰まったこの東京ドーム公演での「GIFT」という物語の体験は、観客の心に深く響き寄り添ってくれる奇跡のような素晴らしい時間でした。

 

実は去年ディズニープラスを解約してしまっていた私、今回久しぶりに「GIFT」を最初から通して見ることが出来ました。

度肝を抜かれた「火の鳥」の登場。よく見直すとあの翼を模した飾りは腕に巻き付いてとても滑りにくそうなんだけど、最後のアップライトスピンではとても映えるなと改めて感じました。

「Hope&Legacy」はね、何年経っても(跳ばないって分かってても)4S-3Tの部分にくると緊張するんです(笑)。それと最後の3Lz(これはもう平昌前からの羽生ファンあるあるだなw)。この時の3Lzは力強くて美しい、これぞ3Lzというジャンプでした。

「あの夏へ」はこのGIFTでの演技が原型となる訳ですが、RE_PRAYで演じられたものと比べると印象がかなり違うというか……物語のテーマに合わせて演じ方を変えているのが大きいんでしょうね。RE_PRAYの記事に「GIFTは災厄を清め鎮める鎮魂の祈りだが、RE_PRAYは命と魂の再生」と書いたのですが、今日見てみてやはりその想いが強くなりました(余談ですが、あの跪いて後ろに大きく反るところはGIFTとそれ以外の公演と、どちらがウィルソンの振付通りなんでしょうね?)。

差し込んだ光が集まって始まる「バラード第1番」は羽生くんにとって夢が叶った象徴だと以前書きましたが、改めて見てもやはり素晴らしいですねぇ……今更ですがよく考えたら4曲目に4T-3Tと3A入ったプロって鬼畜だよね(その後にロンカプ控えているんだから余計に)。

何度見ても涙ぐんでしまうOtonalの流れる映像の後に来たのがまさかの6分間練習。首元にチョーカーが見えた瞬間凍り付いたというか戦慄したというか、あの時の衝撃を思い出しました。まさか北京のリベンジをここでするとは誰も思わなかったですよね。いつもより短めのイーグルが羽生くんの緊張を如実に表しているようで祈るような気持ちで見守りました……あの4Sは本当に美しかった。ぎゅっと握りしめた右手と、去り際に優しく撫でた4Sの綺麗なトレースに心打たれた記憶が蘇りました。

録画なのですぐに始まる第2部。豪華なバンド生演奏から華々しく始まった時は、まさかこの先にあんな魂をむき出しにしたかのような物語が待っているとは思いもしませんでしたねぇ……この先のシナリオはRE_PRAYに繋がる羽生くんのクリエイターとしての真骨頂が見られた部分なのかもしれない(自分の内面を普遍的な物語に昇華する能力、語彙力や文才も含めて)

で、改めて見た「GIFTの阿修羅ちゃん」の身のこなしが「RE_PRAYの阿修羅ちゃん」とまるで別物なのにびっくり。今日GIFT見てて一番の驚きかもしれない。身体のしなりがまるで違うんだよね(特に「えすけいぷ」「すにーく」の部分)。これはもうあれから1年の間に磨いたダンスの技術によるものですよね。あの当時でも十分びっくりだったけど、比べたらこの1年の進化の方がびっくりでした……その進化の延長線上にとりへび様もいるんだよねぇ……

ここまで来ても手を取り合えない黒と白の僕の心の闇に絶望感を漂わせつつ始まった「オペラ座の怪人」は、当時も思ったけどどう考えても8曲目に滑る構成ではないですねあせるここで演じた事でSOIの再演に繋がって「後半に4Tコンボを跳ぶ」という当時の構成を全う出来た事を考えると、激動の2014‐15シーズンを見守ったファンとして何だか感慨深いです。

プロローグとは違った悲嘆と慟哭を色濃く纏った演技に驚いた「いつか終わる夢」、RE_PRAYでは更に違う色を纏うふたつの演技へと変わったことで、羽生くんのICE STORYという形の公演の目指すものを体現したプログラムになったなぁと、今見ると改めて感じますね。

武部さんの「GIFT」を聞きながら「羽生くんとストリングスの相性絶対いいと思うなぁ」と思いを馳せ、SEIMEIの生演奏にびっくりしつつ羽生くんの(恐らく)過去最高の早着替えにもびっくりしたアンコール。

フィナーレの周回、大好きな「水平線」の歌詞になぞらえて何か話そうとしたのに、でも感情が昂って抑えきれなくて想いを全てスケートに託した……羽生くんらしいなと思ったよ。「第一言語スケート」というリプをいただいたんだけど、本当に羽生くんのスケートは言葉以上に饒舌なんでしょうね。

本当に本当に素晴らしい公演をありがとうございましたキラキラ

 

 

 

あれから1年。

私達は今、その「GIFT」ですら羽生結弦の「始まりの物語」に過ぎなかった事を知っています。

「notte stellata」を終えた後、彼が次に思い描くフィギュアスケートは一体どんなものなるのか?

新たな物語なのか、それとも更に違う形のエンターテインメントなのか?

楽しみにしながらまずは「notte stellata」のお知らせを待ちたいと思います(その前にRE_PRAY横浜の感想まとめなさい…)