2019年世界選手権

SP 95.95点 TES48.70(BV36.67/GOE12.03)、PCS47.25(9.25/9.50/9.50/9.50/9.50)

FS 206.56点 TES110.48点(BV88.41/GOE22.85)、PCS96.08点(9.64/9.50/9.62/9.64/9.64)

合計 302.51点

 

2019年オータムクラシック

SP 99.41点 TES53.66(BV44.43/GOE9.23)、PCS46.75(9.31/9.31/9.25/9.38/9.50)、D-1.0

FS 199.94点 TES108.44(BV91.88/GOE16.56)、PCS91.50(9.25/9.25/9.00/9.25/9.00)

合計 299.35点

 

2019年GPF

SP 98.77点 TES51.27(BV41.75/GOE9.52)、PCS47.50(9.50/9.53/9.36/9.61/9.50)

FS 199.11点 TES103.61(BV82.65/GOE20.96)、PCS95.50(9.50/9.50/9.50/9.50/9.75)

合計 297.88点

 

2020年四大陸選手権

SP 114.34点 TES64.84(BV45.80/GOE19.04)、PCS49.50(10.00/9.75/10.00/9.75/10.00)

FS 191.94点 TES99.44(BV88.31/GOE11.13)、PCS93.50(9.50/9.50/9.00/9.50/9.25)、D-1.0

合計 306.28点

 

2021年世界選手権

SP 109.41点 TES61.22(BV45.20/GOE16.02)、PCS48.19(9.66/9.45/9.75/9.58/9.75)

FS 183.69点 TES91.27(BV86.96/GOE4.31)、PCS92.42(9.39/9.25/9.04/9.32/9.21)

合計 293.10点

 

 

 

あの時にせめてこれくらいの評価がされていたならば。

彼が「そうか」「そんな競技なのか」と絶望することはなかったのだろうか?

「評価されたら嬉しいけれど評価されなければされないで仕方ない」と諦観することもなかったのだろうか?

「羽生結弦のフィギュアスケート」と「競技としてのフィギュアスケート」を分けて語らずに済んだのだろうか?

「蒼い炎Ⅲ」のインタビューを読んでそんな事を考えました。

3年前に四大陸選手権でバラード第1番の再演を知った時に頭を過った「この再演はある意味ジャッジを試す為のものではないか?」という考え。はからずも今回のインタビューでそれが当たっていた事が証明されてしまいました。そうではないかと予想しつつ、でもそうでなければいいなと思い続けた3年間でしたね……だってね、自分が全てをかけて磨いてきたものがもうそこでは価値のあるものとはなり得ない、それを分かってなお「自分の理想のフィギュアスケート」を貫き通すってどれだけの達観と覚悟が必要だったんだろうって考えるとね……

 

 

 

同じく3年前の四大陸選手権FSの記事にこんな事を書いていたんですよね。

 

『迷いを振り切った羽生くんは、ある意味強いかもしれません。「現行ジャッジ」(ガイドラインではない)に囚われるのではなく、今勝つ為の戦略に固執するのではなく、自分の理想とするフィギュアスケートの在り方をとことん追求していくと達観した今、きっと今まで以上に彼にしか出来ない演技を見せてくれるのではないかという期待が広がります。勿論結果が付いてくるのが1番ですが、例えそうでなくても彼が納得する演技が出来たらいいなぁと願っています』

 

この10ヶ月後に披露されたのが「天と地と」、いつもならば全て後半に入れていたコンビネーションジャンプを1本前半に入れ3年ぶりに3Loをプログラムに組み入れた、音楽表現を重視したプログラムでした。そして更に1年後、清塚さんとジェフとシェイリーンと共に創り上げた「序奏とロンドカプリチオーソ」が世に披露された。

このふたつのプログラムの凄いところは、羽生くんの理想とする「音楽と共存するプログラム」であると同時に勝負も捨ててはいないプログラムでもあるという事なんですよね。クワド4本(4Lz抜き又は4AがDG)で210点を超えられる「天と地と」、4Sと4Tの2種で後半がコンボではなく3Aでも110点を超える「序奏とロンドカプリチオーソ」。他の選手では決して真似の出来ない、現行ルール下でこれを超えるものは現れないと断言してもいい珠玉のプログラム。

競技人生の集大成としてこれを創り上げた彼は、本当に並ぶもののないまさにGOATなのだと思います。

 

 

これはあくまでも私の個人的な見解なんですが。

羽生くんの平昌後の苦悩と葛藤は、彼のプロスケーターとしての人生設計にも変化をもたらした気がするんですよね。

2015年の頃に描いていた彼のプロ活動の中には「スケーターへの支援」という言葉がありました。2017年に横浜でスケート教室に参加して都筑先生に国内での指導者としての道を問われた時には「あと3年待ってほしい」と話しています。

……羽生くんの語るスケート人生からコーチングの話が消えたのは一体いつからだったでしょう?

勿論今は自分のフィギュアスケートを極めるのが最優先なのは確かだと思います。平昌で引退しなかった時点で描いていたプランの変更はあったでしょう。

でも、自分の経験を広く人に伝えたい、本気で世界のトップを狙う選手には国を問わずに力になりたいと話していた彼が、コーチ業に対して「自分の積み重ねてきたことが全員に当てはまるとは思えない」と語る……果たしてこの変化はこの競技に対する葛藤や諦観と無関係なのでしょうか。

今フィギュアの育成の現場では最初から下回りを是として指導するコーチもいると聞きます。まぁそりゃそうだよね、拙劣な踏切は一向に減点される気配がないんだからじゃあ正しい技術なんて要らないじゃんって話になりますよね。相変わらず高難度ジャンプを構成に入れれば高いPCSがついているし、若い選手なら取られるエラーがトップ選手だと取られないという現実まである(選手本人が語っているので実感としてあるんだろうなと思います…)

今のところ彼の理想とするフィギュアスケートの在り方とは違った方向に進み続けているフィギュアスケート。その現場で実際に彼が選手の育成をやろうとすると……それはどちらの方向を向いたものになるんでしょう?

彼は今の競技フィギュア自体を否定してはいないと思うんですよ。ただ平昌までは「羽生結弦の目指すフィギュア≒競技フィギュア」だったのが今はそうではない、その事へのやるせなさと悲しみがあるだけで。否定していないからそこできっちり結果を残したネイサンに「今の競技フィギュアスケートの全てを持っているのはネイサン」だと賞賛の言葉も送っている。でもやはり今の競技フィギュアは彼の理想像とは違う訳で……じゃあ指導する時にどちらに合わせるのかという話ですよね。

今はフィギュアスケーターとしてあるべき姿と演技を見せ続ける事が後進の為にもなると考えて直接教える事は考えていないのかなと(学ぶ意欲のある人は彼が惜しげもなく公開している練習や演技を見て自ら学んでいますしね)。色々あってそういう場からは距離を置いているような気がします。勿論全部私の憶測に過ぎなくて彼の真意は分かりませんけどねあせる

先程「今は自分のフィギュアスケートを極めるのが最優先だと思う」と書きましたが、これもここに至る過程が影響しているのかなとも思うんです。

かつて彼は「余力を残してプロにいきたい」と話していました。競技でやる事をやり切って身体がまだ十分動くうちにプロになるつもりだったと思うんですよね。でも競技が徐々に変質していって、自分の理想をやり切る場としてそこは相応しい場所ではなくなってしまった……そしてその場をプロに求めた。

羽生くんのフィギュアスケートが正しく評価されるような競技が続いていたら、彼は競技の場で全てをやり切ってプロの場に今のような強い自己実現は求めなかったのかもしれない……まぁこれも想像に過ぎないんですがあせる

 

 

 

何はともあれ羽生くんは活動の場を競技外へと移し、YouTubeチャンネルでの配信、単独アイスショーのプロローグ、次々とその素晴らしい演技を私達に披露してくれています。

昨日YouTubeチャンネルにアップされた「The Final Time Traveler」も本当に素晴らしい演技でしたよねキラキラ

 

 

あれだけ音楽と一体化したクワドなんて誰も跳べないですよ。それもただ跳ぶんじゃなくてふわっと高くてエフォートレスな美しいジャンプでした(3Aは言わずもがな完璧です!)。

そして前回の「サザンカ」に引き続きスピンが本当に美しかったですね……スピンをレベル4の構成できっちり滑れるスケーターはいくらでもいますが、スピンで音楽を奏でたり物語を語れるスケーターはそうそういないと思います(最近は出の難しさでレベルを取るせいか音楽関係なく無理矢理ワンアクション入れてて美しくないスピンが増えた気がする…)

この7年ぶりの美しい再演も、彼が葛藤と諦観を経て尚磨いてきたものがあるからこそだなと思うと「艱難汝を玉にす」という言葉を体現しているような存在ですよね、羽生くんって。

これからは純粋に心の赴くままに自分のフィギュアスケートを求めていってほしいですね。勿論プロスケーターですから自己プロデュースの為にしなければならない事が山ほどあってスケートばかりをやっている訳にはいかないでしょうが、それでもこれからは演技を評価するのは自分自身であって不可解なジャッジではない。自分が価値があると思うスケートをとことん極めていってほしいなと思います。

羽生くんは私達の期待に応えたいのだと言うけれど、私達の願いは羽生くんが幸せであることなのだと、それは何度でも伝えていきたいですねキラキラ

 

 

長々と埒もない内容を書き連ねてしまった……申し訳ないあせる

 

 

まぁこちらも次々と情報の激流に押し流されてアップアップの状態で、きっと何かを取りこぼしているに違いない毎日ですので(笑)、羽生くんの事を心配している場合ではないのかも汗皆頑張って振り落とされずについていきましょうねあせる

 

 

 

 

 

 

※最初に掲載した一連の採点は、やまぽんの過去の記事での自己採点をベースにしています。今回の記事を書くにあたり再度演技を見直していくつか修正をしているので、過去記事の点数とは違っていますのでご了承ください。

SOをシリアスエラーとするかは随分悩みまして……ビアンケッティ氏はシリアスエラーだといっていますが、日本のテクニカルの方は流れに影響しなければそうじゃないと言ってたり、実際の採点でもどう見ても取ってない点数だったり……なのでケースバイケースとなっていますのであしからず汗