音楽スタジオは儲かるの?...音楽家はどうなの? | ◆Promnade~「音楽と時事放談」

◆Promnade~「音楽と時事放談」

作・編曲家 彦坂恭人(ひこさか やすと)

Yasuto Hikosaka's Weblog

【音楽家の隠れ家/スタジオ】

私は労働にも組織にも社会にも(死ねということかも)向いていないのが15年掛けて分かった。それで、「寝てても金が入ってくる」様な大株主やらねずみ講(やりようによっては違法ではない)スタイルの「金が金を生む」ビジネスでもないかと考えたりもする。

しかし、まぁ人間が古いのかあたまが固いのか「悪銭身に付かず」やら「汗水垂らして働いた金以外は本物ではない」という教訓染みた考えがどこかにあり、これだけ音楽の研究にのめり込みながら、金儲けに関しては本当に無頓着になっている。

あと「簡単に手に入れたものは、簡単に捨てられる」というのも経験上、理解できるのである。そこで次に思い付くのが権利収入や家賃収入など。
これはアイディアをだしたり、苦労して手にいれたものがお金を生むのでまだ納得ができる。宝くじを当てたのとは異なる。

とある音楽練習スタジオのオーナーさんが経営のお話しをこぼしていて面白い。

不動産やら貸ビル業は悪徳、金貸し(金融)は詐欺師など世間一般では、堅気であっても白い目で見られかねない業態なのだが内実は意外にも厳しいものなのである。

【とあるスタジオの収支概算】
(収入)
13部屋×12時間営業×@1000賃料=156,000円(総売上/日)

(費用)
人件費
時給(恐らく900~1000円が相場)×稼働時間×人工(にんく)=35,000円前後か。

この時点で収支は12万。
30日で360万円。
水光熱費はどれくらいだろう想像がつかないがうちの金額から推定するにまぁ月に5万以上は行くのでは。更に保険料だの税金だのを引くと200万円台だろうか。

これを年間にしてもまぁ3000万円、日本国首相の給料、最大手企業の役員や開業医、士業でそこそこ上手くいっている人のクラスであろうか。
が、ここに初期投資費用やメンテナンス費用(こちらは定期的にかかる)というのがかかってくる。
借りていれば家賃もかかる。
単純な給与・報酬とは異なるのである。

ピアノは意外に高いし、防音設計の部屋というのは想像以上にお金がかかるものらしい。

下手をすると慈善事業になりかねない。
決して「お金を儲けること」を第一に考える人が手を出す仕事ではない。

最近はピアノスタジオ専門というのがポツポツ出て来ているが、こういうところはロックバンドのニイチャンやネェチャン、オッサンは来ないのである。
ハイブリッド仕様にする手もあるが、お互いに嫌がるから中々難しいところであろう。
私の母校尚美学園大学もさすがにピアノ練習室でエレキギターやエレベの練習をしている人は少なかったように思う。
さらにドラムともなると場所は一つか二つに限られる。

私の様な典型的な貧乏音楽家はまず、家にピアノなんぞない。
置けても密かに電子ピアノを置くくらい。レッスンも自宅でやればスタジオ代はかからないかが、部屋に異性の生徒を入れるのはお互いに気が引けたり、同性であっても合わない(こちらも互いに)人間は居る。
そうすると、必然的に貸しスタジオを利用するしかないのである。

よく、「音楽レッスン代は高いですね~」なんて言われるがとんでもない。こちらは十年単位で命懸けで学んできたものを提供しているのである。時給で10000円とは言わないまでも5000円以上は欲しい。
しかし、それでは生徒が来ないのである。

安かろう、良かろう、美人やイケメン先生なら尚更良かろう...この中で努力で何とかなるのは値段と質だけである。
時給で均すと意外にもコンビニで真面目に働いた方が良いのでは?と思うような金額しか入っていない。少なくとも私は。
本の印税というのはこれまた、驚くほど蟻の涙の様な額であり、そして毎月入っては来ないのである(刷ったときだけ)。

芸術家はやはり貧乏が宿命なのか。
一部の普通に暮らせている人は立派である。
その点、アカデミズム(学校教員)やら商用音楽家を呪ってはいながら、実はとても尊敬しているのである。
家族まで養っていれば尚更。

エリック・サティのあだ名は「貧乏さん」だった。本当に今の私には笑えない話である。
ピアノ線で首を吊ろうにも家には電子ピアノしかないという...。
電子ピアノは倍音が出ない。これは長時間弾いていると肉体的にも精神的にもやられてくるのである。
やはり、電子機器は程々に発展してほしい。  

何かとりとめもない話になった。