2015年 厚生省がコレステロールの制限値を外した
そしてそれから6年間もすったもんだして、ようやく2015年になって厚労省が実はコレステロールというのはそんなに低くなくてもいいのでとりあえずコレステロール値の基準は変えないけれども、コレステロールの多い食品、典型的なのは卵や豚肉の脂ですが、そういうものに対する制限はやめるという通達を出しました。
その翌年から翌々年ぐらいからは国立医療センターだとか赤十字病院など大病院の真面目な医師はコレステロールの制限ということを言わなくなりました。
ただ、今も開業医レベルではそこまで勉強をしていない ので私に食ってかかる人もいます。「武田さん、コレステロールは制限されているのになんだ 」と言う人には、「それは2015年の厚労省の通達を見てください 」と反論しますが。
医師としてはコレステロールの規制がなくなって一般の人々がこれを制限しなくなると報酬が下がってしまう。やはり人間は自分が損をするという方向へはどうしても行きたくないものなのです。
しかし食品で入ってくることを制限すると、むしろ健康に悪い影響が出てきます。
たとえば、人が必要とするコレステロールを100とすると、そのうち80は自分の身体でつくって、20は卵などを食べて補うわけです。
ところが医師は「ちょっとあなたはコレステロールの値が高いから、卵とか豚肉の脂がなどは食べないほうがいいですよ」とアドバイスします。それでその人が、卵を食べなくなったり豚肉の脂身を食べなくなったとします。
そうして食品からコレステロールが入ってこなくなると、簡単にいうと身体は100%を自分の身体でつくるようになります。そうするとコレステロールをつくるのは結構大変なことなので、まず身体が疲れる。さらには肝臓が傷むという状態が起こります。
それでもやはりコレステロールが少し不足しますから、病気に罹りやすくなりますだったらコレステロールを食べればいいのかというと、人間の身体というものはそ んなにすぐには変わりませんから、急にコレステロールを食べるようになれば今度はコレステロール過剰になってしまうのです。
医師のアドバイスというのは正確でなければいけないのですが、医師というのは身体が壊れたときに治すことが仕事なので、健康のためにコレステロールをどうしたらいいかということについてはあまり知識がありません。医師は忙しいし、覚えることが山ほどあるので、だから私たちからするとこういったコレステロールの制限などを彼らに任せてしまうことは実は適切ではないのです。
『フェイクニュースを見破る 武器としての理系思考』武田邦彦 (ビジネス社刊) R060623 P142