「東海地震」が注目されたのは、東京に近いから? | Cの憂鬱

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先の無い高齢者のつぶやきです。Cは、お隣の怖い国、お金、職業などなどの頭文字?、かな。

「東海地震」が注目されたのは、東京に近いから? その中に極めて注目すべき発表がありました。 当時、東大のまだ若い先生が「静岡県沖で大きな地震が起こる」、つまり東海地震の可能性について学問的な発表をしたのです。この発表は、たくさんのマスコミに取り上げられることになりました。 発表はあくまでも「可能性」についてであり、学問の社会では未知のことが発表されることはいくらでもあります。それが専門家の間だけで意見交換をするのはかまわないのですが、そこに新聞やテレビが入るとたちまちのうちに無茶苦茶なことになってしまいます。 発表した先生自身もそうした世論の流れに翻弄されたところもあるのですが、「東海地震が起きる」ということが、まるで既定の事実であるかのように広まっていきました。 そして世論は「東海地震が迫っている」ということと、「関東大震災から50年ほど経っているので、大地震が東京で起きるのではないか」という、この2つをミックスして不安に陥ったのです。 この「東京か近県で大地震が起こるかもしれない」ということが、地震予知における最初のボイントとなりました。首都圏直下型地震といった大きな地震が東京にやってくる。もしくは、静岡県沖の東海地震が発生する‥‥。 ほとんどの大手マスコミも東京に本社を構えていますし、もちろん官庁も東京です。オピニオンリーダーと言われる地震学の権威や解説者たちも、そのほとんどは首都近 郊に住んでいます。そうしたこともあって首都圏直下型地震や東海地震というものがものす ごく強い関心を呼ぶことになったのです。 私はちょうどそのころ、高校から大学に進学したぐらいだったのですが 、よく報道され始めたころは「毎日、乾パンと防空頭巾を枕元に 置いて寝る」というようなところまで世論は暴走していったのです。 当時、大地震については、次のような解説がなされていました。 《 地球は流動性のあるドロドロしたマグマの上に、薄皮のように現在の我々が住んでいる土地の岩盤が乗っかっているという形になっていて、マグマが対流活動で移動するとその上に乗っている大陸や海洋も移動することになる。そうして移動をしたときにはどこかでぶつかって、またマグマのほうへ沈んでいくという循環がある。 その循環のちょうど辺縁にあるのが日本列島で、日本列島の東側の太平洋底には海岸線と並行するようにして、最も深いところは8000メートル以上にもなる日本海溝があり、日本列島はそこでマグマに向かって沈んでいくことになる。 このため、日本列島では沈んでいくプレートと、そこに潜り込んでいく大陸との間で極めて強い力が発生して、その潜り込みがある程度強くなると、大陸がバン! と跳ね返り、それが大きな 地震となる》

このときに地殻のゆがみの力は少しずつ溜まっていって、これは「地震のエネルギーが溜まる」とも言われますが、地殻が曲がった状態でじっと我慢するような形になります。 大陸が移動することでさらに曲がっていって、ついには地殻が曲がりきれなくなり、バンと弾けて大きな地震が起こるという解説がな されていて、日本国民のほとんど全員がこれを信用しました。 テレビに出ている地震の専門家がそう言うのだから「そういうものなんだな 」と思ってしまうのは仕方がありません。 こうした解説に従えば、地震の起こりそうな関東地方や東海地方に「ひずみ計」を設置して、エネルギーがどのくらい蓄積しているのかを測定すれば地震発生の可能性がわかるということになります。 ある程度エネルギーが蓄積するとそれが跳ね返って地震になるというのは非常に簡単な説明なので、テレビを見ている人たちはみんなこの解説を信用したのです。 『フェイクニュースを見破る 武器としての理系思考』武田邦彦 (ビジネス社刊) R060526 P063