滋賀にお住まいの山下弓さんが、こんな感想を寄せて下さいました。うれしいです。

― 「自分の言葉」をもつ人になる ― 吉元由美

「言葉を生業としている人にとって、言葉は自分そのものである」
誰もが一度は彼女の書いた歌を耳にしているのではと思うくらい
数々のヒット曲をこの世に送り出した作詞家、吉元由美
その吉元さんが書いたエッセイの冒頭に綴られていました
それは、私が司会業を仕事として先生に師事した時
何度も繰り返し言われた言葉と同じでした
新しい門出を迎える新郎新婦をおもてなす私たちがあるべき姿は
笑顔と幸せに満ちた姿、しぐさで接するように
綺麗な言葉、肯定的な言葉を使うように
耳触りのいい言葉を選ぶようにと、徹底的にしごかれたのです
この本には「書く」を主軸に、私は「話す」を中心に少しニュアンスの違いはあるけれど
30年前に先生に教えていただいたメソッドが
ここかしこ散りばめて書かれてありました
司会業を目指す自分でありましたが、長崎弁丸出しで
「なまる・こもる・どもる」の三重苦学生と言われ
レッスン生のなかでも一番年下で劣等生のあの頃
声に対してどうしてもコンプレックスを抱く分
言葉そのものにより執着していたのかもしれません
一人前になるまでに他の人の倍、時間がかかり
最後は先生に「頼むから早くデビューしてくれ」と頼まれるほどでしたので
一人マイクを持たせてもらう頃は
自分のセリフ、言葉はかなり培って司会台に立てたのだろうと思います
それだけ 長い時間かけて学び ありがたかったのは
自分の言葉として生み出す重要性の傍らで
その言葉に溺れることなくそぎ落とす勇気を持つ大切さに気づけたこと
言葉以外の間、リズム、私自身のあるべき姿で
その場全体の雰囲気を作り出すプロとしての言葉の追求です
削りに削った言葉は洗練されていき
そしてまた、その言葉によって自分自身が磨かれていく
まさに、言葉は自分そのものだと体感した出来事でした
方言、はやり言葉 その場に合わせて使うこともあります
でも、それは必要な時綺麗に使える言葉を発せられてこそ輝きます
間ひとつ、声のトーンひとつで
その場のイニシアチブを取ることも
先方に大切にもてなしていただくこともできます
その言葉の大切さ、その感性の磨き方
そして実際のトレーニング法を惜しげもなく書かれてあるこの本
一頁、一頁愛おしむように文字を追い
何度も戻っては反芻しながらゆっくり読みました
司会業はもう現役を引退しましたが
カウンセリングという仕事も言葉の重要性は同じ
発するひとことは力になることもあれば凶器にもなります
相手から発せられる何気ないつぶやきから
そのカウンセリングの臍となるキーワードを
しっかり拾わないといけません
この本を読むことで、頭の中に散らばって記憶されていた
先生から教わったメソッドが整理され、加筆され
より具体的に人に伝えることができるようになった気がします
ずっと、手元において何度も読みたい本です
そして何より嬉しかったのは
きれいな言葉に包まれていると
こんなに幸せな気持ちになるのかと
改めて体感できる美しい言葉がちりばめられた一冊でした