同乗指導は1日で終わり、2日目から一人で乗務です。

 

ワタシはT駅とI駅の2つの駅でのみ待機可という条件付きでデビューしました。

まずはこの二つの駅のどちらかで待機して駅で乗せるか、無線配車で迎車に出るかです。

最初はドキドキしながら待つのかなぁ。キンチョーしちゃいそーだなぁ~なんて思ってたんですが、駅に行ったらまずは他の常連さん達に片っ端から頭を下げるのに大忙し!

「おはようございます!新人の××です!今日も一日よろしくお願いいたします!」とビシッと挨拶をして一台ずつ回ります。

よほど周りに誰も歩いていない時以外、先頭車両の人には話しかけてはいけないので、二台目の人からどんどん行きます!

途中で先頭が出発して列が動き出したら、ダッシュで自分の車に戻って前に進めないといけません!

そして、挨拶した方を全員覚えないといけません。

昼前とかから遅めに現れてくる他の常連さんが来ているのに気づいたら、そちらにもすぐ挨拶しないといけません。

挨拶漏れはご法度です。

 

ところが愚かなワタシは、この挨拶の段階からいきなりつまづきます。

 

列の真ん中編の同じ会社の先輩に挨拶しようとしたら、

「バカヤロー!てめー挨拶してる場合じゃねえだろ!もっと寄せて停めろよ!」

自分の車を振り返るとなるほど、他の方々はプールの中の両脇の縁石スレスレに寄せて停めていて、真ん中を極力広くあけています。

私は30センチぐらい開けてしまっていた為、少し狭くなってしまってました。

「すみません!」と慌てて車を寄せ直して、もう一度挨拶に戻ると

「てめー、▽▽(指導担当の先輩)に何教わって来たんだよ?ああ?」

と怒られてしまい、「申し訳ありません。今後、気を付けます。」とお詫びするも、なかなかお許しいただけず、それからの待機中、15分ぐらいずっと針のムシロ状態でした。

「教わってなかったけど、他の皆様の動かし方もよく観察して気を付けないといけなかった。本当にうっかりしちゃったなぁ。」と凹んだまま待機し続けます。


 

なので、電車を降りたお客様が乗ってきてくださった時、緊張どころか開放される喜びで胸いっぱいでした!
「ご乗車ありがとうございます!どちらまででございますか!?」と全力の笑顔で挨拶。

ワタシの初のお客様はやさしいおばあさんでした。

「まあ、お若い新人さんね。B郵便局の隣の整骨院まで行ってくださる?」

「B郵便局となりの整骨院ですと、青い看板のところでございますか?はいっ!かしこまりました!商店街の脇を抜けて向かうルートでよろしいですか?」

「ええ、おねがい。」

という事で、たまたま知っている目的地だったので、スムーズに一本。

まぐれでも、一本スムーズに行けると、不思議と急に緊張がほぐれてきます

 

ワタシはお客様の乗り込み時に「新人の~~と申します。」と挨拶し、知らない場所へ行くように言われたら、「申し訳ございません。まだこちらの地理に不案内なため、道順をお伺いしてもよろしいでしょうか?」と言うようにしていましたが、この初日は片っ端からお伺いしたにも関わらず、イヤな顔をされる方は一人もいらっしゃいませんでした。

というか、24出番ほどの乗務中、道を知らない為に嫌な顔をされたのは、最初から不機嫌で横柄な男性の一回だけでしたので、道を知らない事で怒られる心配はほとんどしなくていいと思います

 

そして無線配車で迎車にも出ましたが、無線配車は車に搭載のナビが迎車先まで案内してくれるので、全く不安ナシ!

ちなみに所属しているタクシー会社は都会の会社よりは小さいですけど、この地方で一番の大手という事だけあって、無線配車は他社さんより多く入ります。

とにかく思った以上にスムーズに営業をこなす事が出来て、どんどん自信もついてテンションも上がります。

思った以上にサクサクです!

 

ちなみに空車だろうが実車だろうが、走行中に同じ駅の常連さんや先輩とすれ違ったりしたら必ず挨拶をしないといけませんので、そこは緊張感持ってやってました。

 

そしてお昼に一回、夕方に一回、そして夜に一回の休憩して、いよいよ終電の時間帯。

駅も無線もちょっと落ち着いた時、駅で待機していると朝怒らせてしまった先輩が窓を覗き込んで「おう、降りろ!」と言ってきました。

恐る恐る降りると、「おめー、さっき交差点で並んだのにシカトしただろ。挨拶もできねーんなら、ここに付けんな!」とまた怒られてしまいました。

「え?隣に並んだ時?気づかなかったなぁ・・・」と思いつつ、一生懸命謝り、どうにか「ったく、礼儀ってもんがわかんねーのか?気を付けろ。」と怒られつつもお許しをいただいてその日は収まりました。

 

ちなみに最後のお客様は県境までの方で、6000円ぐらい!

デビュー初日の営収は5万ちょっとで、管理者の人から「T駅とI駅だけで5万ごえは立派だよ」とほめていただきました。

 

ほめられた際に、「実は◇◇さんという先輩の方に注意を受けてしまいまして」と言ったら、

「え?◇◇さん?いい人のはずだよ?え?挨拶しそこねちゃったの?あ、それは怒るだろうねぇ。気を付けなきゃだめだよー。」と、改めて注意されてしまいました。

 

そして納金を終え、無事初日が終わって、帰ったら信じられないぐらいクタクタ!
頭は若干興奮状態でしたが、布団に入って10分後にようやく寝付くと、その後は10時間近く眠ってしまいました。

 

 

ちなみに初日の朝から自分の不注意で針のムシロを味わったワタシですが、そもそもタクシードライバーは普通に営業していても針のムシロ状態が多い仕事です。

 

お客様に「そこで停めて!」と言われれば、周囲の迷惑になりそうな場所でも停めないといけなかったり・・・

迎車時も周囲の迷惑になるような場所で待機する羽目になったり・・・

お客様に突然の車線変更を強いられて後続車の迷惑になったり・・・

「ちょっとここで待ってて、ここから動かないでよ?」と言われて、狭い道の店舗前で道をふさぐように停車して、お客様の買い物待ちをさせられたり・・・

色んな人から「邪魔だなぁ」みたいな目で見られたり、追い抜きざまに思いっきりクラクションを鳴らされて、頭を下げたり・・・

まあ何かと針のムシロ状態に晒される事が多い仕事です。

 

そこに加えて、タクシードライバー同士のマナーをしっかり守らないと、先輩からきついお叱りが有るのですが、ベテランの50代以上の方々はどういう訳か、怒りっぽいうえに一度機嫌を損ねるとずーっと損ねたままの人が多いです。

また前の出番の時にうっかりした事を、次の出番の出勤時に叱られたりする事も多いのですが、これが続くと「また今度も朝から何か怒られちゃうんじゃないかなぁ」と明けやお休みの日も一日中、不安で憂鬱で楽しく過ごせなくなります。

 

と言うか、新鮮な気持ちで二日前にすれ違った時の挨拶の仕方があいまいだった事を怒っている姿、今振り返ると笑えてきてしまいますが、当時は真剣に「ああ、またやっちゃったか。」と落ち込んで胸を痛めていたものでした。

 

こうして「早くちゃんとした乗務員にならないと」と焦りと不安で一杯の、なおかつ体育会系アレルギーの軟弱なワタシは、この怒られる日々を通じて、徐々に壊れて行く事になります。