家に着き、キッチンに行って、シチューのフタを開ける。
ちゃんと食べたようで、安心した。
「どうしたの?」
「ちゃんと食べたんやね。」
「食べたよ。美味しかった。」
「ヨカッタ。」
「お風呂沸かそうか?」
「ウン。」
ワタシは荷物を片付けて、ソファーに座り、窓の外を見る。隣に座った昂大に、
「3時まで、待つの大変やったやろ。何してたん?」
「ご飯食べて、少しウトウトして、家の探検をして、DVD見たら、2時半にアラームがなって、迎えに行った。」
「家は制覇したん?」
「把握した!千尋ちゃん家は、家具が少ないから、片付けてあるところが決まってて、それも用途別に整理してあるから、わかりやすい。」
「物を増やさないよう、気を付けてる。」
「女性にありがちなインテリア的な物も、少ないね。」
「興味がないわけじゃないねんけど、っちゅうか、ホンマは好きやねんけど、掃除してキチンと手入れできないやろうと思って、買わないようにしてるねん。」
「置物とか?」
「ウン。あそこに立ちスタンドあるやん。あれは、どうしようもなく一目惚れして、何日も悩んで、諦めつかへんから、買ったねんよ。」
「そんなに?」
「ワタシは、どうやらスタンドとかランプとかに惹かれる傾向があるみたいで、寝室のランプもだいぶ悩んだ。」
「買うかどうか?」
「ウン。」
「どうして?」
「寝室で、本を読まないって決めてるから、ランプとかホンマはいらんねん。で、本は読まへんけど、小さい電球つけてないと寝れへんから、小さい電球つけずに、ランプつけて寝ようって自分に言い訳して、買ったねん。」
「千尋ちゃん、遠回りしすぎじゃない?」
「わかってるねん。すんなり買ったらええのに。なかなか、できひん。」
お風呂が沸いたお知らせ音がなったので、ワタシが立ち上がると、昂大も立ち上がり、
「入ってないの?」
「一緒に入るって言った。」
ワタシは、昼間のことが思い出されて、顔がまた赤くなりそうなのをごまかそうと、着替えを取りに寝室に向かいながら、
「そだったね。」
と言うと、
「また、立ちくらみとかになったら大変だからね。」
と言いながら、昂大がついてくる。
ワタシの顔を見ずに、
「千尋ちゃんにムリさせたりしたら、僕、マスターに怒られるから。明日イベ日でしょ。今週は休みなしになるんだよね。早く寝かせてあげないと、倒れてしまう。」
ナルホド…。ワタシの想像する方向がアカン感じになってる…。
「明日、千尋ちゃんのダンスが見られるんだよね。」
「そやで。」
服を脱ぎ、シャワーを出すと、昂大がワタシの髪を洗い始める。
「ありがと。」
「目をつぶって、僕が洗ってる間、気持ち良さそうにしてる千尋ちゃんが好きだ。」
「……。」
ハズイ…。
「なぁなぁ、昂大。ワタシも昂大の髪洗いたい。」
「ダメ。」
「な…。なんで?」
「洗ってる間に、体が冷えてしまうから。」
「そのあと、温まったらええやん。」
「僕の身長182。千尋ちゃんは小さい。洗う時間が違うでしょ。」
「…。んーーー。小さいって……。」
「僕の腕の中にピッタリおさまる。」
「……。昂大って…。」
「何?」
「ん、なんでもない。そしたら、髪だけでも洗わせて。」
「じゃ、髪だけ洗ってもらおうかな。」
ワタシはなんとなく嬉しくて、
「ありがと。」
と言うと、
「ねぇねぇ、このシャンプーとリンス、いい匂いだよね、石鹸も。」
「これは、ワタシがいつも髪を切ってもらってる、オカマバーのママに紹介してもらったやつやねん。石鹸も。石鹸ね、1つ1000円するねん。」
「エッ!」
「お風呂上がっても、乾燥しない。逆にしっとりしてる。乾燥は、女子の大敵。」
「知らなかった。ガンガン使ってた。」
「ワタシもガンガン使うよ。」
「シャンプーとかも…。」
「値段言わんとこか。」
笑ってワタシが言うと、
「ウン。聞かない方がいいと思う。」
「わかった。」
「このリンスの匂い、千尋ちゃんの香水と、よくあってる。」
「そかな?」
「あまり目立たないけど、いい匂い。」
「香水。15年一緒のブランドで、廃盤にならへんから、他にもつけてはる人多いんちゃうかな?」
「リンスの匂いと混じって、千尋ちゃんの匂いになってる。はい、おしまい。」
「今度は、ワタシが。」
「髪だけね。千尋ちゃん…。髪の毛、オカマバーのママに切ってもらってるの?」
「最初に働いていたクラブのお嬢様達とママの店に遊びに行った時に、切らせてホシイって頼まれて以来、ずっと。元美容師だったんだって。髪型は、ママのその時のマイブームのホストさんの髪型になるねん。笑えるやろ。」
「ずっとショート?」
「ずっとショート。」
「伸ばしたりしないの?綺麗な髪なのに。」
「ウン。ロングが好き?」
「ウウン。千尋ちゃんが好き。」
「昂大は、ホンマに…。」
「何?」
「好きって言い過ぎる。」
「イヤ?」
「イヤじゃないけど、恥ずかしい。」
「暗示をかけてるんだよ。いい続けてたら、僕のこと、早く好きになってくれるかもしれない。千尋ちゃんも恥ずかしがらず言えるかもしれない。」
目をつぶっていてくれてヨカッタ。
好きになりかけている。もしかしたら、もう好きなっている。そんな顔を見られたら、バレてしまう。
まだ知られたくなかった。
ワタシは、意地悪だ。
「そかな。どうやろ。」
「千尋ちゃんは、好きでもない人と寝たりしないってわかってるよ。」
バレてるのか…?
「でも、キチンとハッキリ好きって言ってもらえるように、頑張る。」
髪を洗い終わり、目を開けた昂大は、
「ありがと。」
と言って、キスをした。