雑密経典の上に在る言葉 | ■朽ち果てた館■

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ARIONの預言解読──音楽に載せて

少し専門的な話を書こう。日本書紀にはα群とβ群があり、
どちらかと言えば、正格漢文に近い文体なのがα群。逆に、
漢文として見た場合に破格な表現が多く見られるのがβ群。
そして…後者は、仏教漢文の影響を色濃く受けているという。(※古事記との連関が深い)

*   *   *

ところが、こうした問題は、実のところ文体の範疇に限らず、
語句や用語の面にまで及ぶ。最近なんとなく気づいたのは、
履中紀(巻12・β群)の「不堪血臭」だ!!…見過ごしてしまうが、
そもそも「血臭」を云々すること自体、漢籍では極めて珍しい。(※以下は古いもののみ挙げる)

>従楊通説曰、「汝何故血臭」。婢曰、「不也」。(三国志、巻64)

>韜懼而問澄。澄曰、「怪公血臭、故相視耳」。(晋書、巻95、列伝第65)

ザクッと検索すると、この2例しか見つからない。そのうえ、
ひとつは、「以広異聞」と評される晋書である。即ち総じて、
中国においては、「血臭」を云々することは、無いのである。
ところが、「血臭」は、漢訳仏典の中には、そこそこ出てくる。

#そう思って調べると…譬えば『法苑珠林』に、
#「韜懼而門澄。澄曰。怪公血臭。故相視耳」。
#何のことは無い。晋書の用例は、これである。(※「以広異聞」の好例。高僧伝の一部)

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「血臭」が見つかる漢訳仏典を列挙すると、『出曜経』、『大般若波羅蜜多経』、
『仏説菩薩修行経』、『道地経』、『宝雲経』、『仏説施餓鬼甘露味大陀羅尼経』、
『仏説灌頂七萬二千神王護比丘呪経』、『大威徳陀羅尼経』、という感じ。つまり、
半分弱は、雑密経典である。特に『仏説灌頂七萬二千神王護比丘呪経』の中に、
「至潰之日、濃血臭爛、不可得近」とあるのが、非常に注目されよう。何故ならば、
「血臭」のように臭い「da-da-ru」(ヤグルマ菊)が…「爛」(ただれ)に掛かるからだ。

#こういう掛詞が出てきてしまうこと自体、この漢訳仏典の中に、
#【十ΘRA】(澱、812)という言葉が、乗っかっている証拠だろう。
#漢訳仏典は、「漢語/梵語」の二元フレームでは捉えきれない。