はいどんも。
今日は久々にディズニーの短編映画シリーズの一作について少し語ってみます。
ディズニーは元々短編カートゥーンが主戦場の小さな映画制作会社でした。
「白雪姫」の大成功後そのメインは長編アニメーション制作へと移行していく事になりますが、ミッキーマウス等のキャラクターシリーズやシリー・シンフォニーシリーズ等をはじめ、数は減っていきながらも原点である短編アニメーションの制作は今日まで継続して行われ続けています。
最近ではディズニーの長編作品と併映という形でコンスタントにリリースされていますよね。
何かのシリーズや続編も多いのですが、そのどれにも属さない単発の短編作品の中にも、あまり知られてはいませんが素晴らしい物が沢山あります。
特に2000年代〜の短編作品は、メインである長編アニメーション浮き沈みとは裏腹に非常にクオリティと評価の高い物がとっても多いんです。
アカデミー賞受賞作品もいくかあったりするんですよ。
今回はそんな作品群の中からディズニーでは圧倒的な評価と人気を誇るこちらの作品について語りたいと思います。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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紙ひこうき
(原題:Paperman)
2012年
監督
ジョン・カース
データ
2012年にアヌシー国際アニメーション映画祭で初上映され、その後「シュガー・ラッシュ」と同時上映にて一般公開されたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ制作の短編アニメーション映画。
「トイ・ストーリー2」や「塔の上のラプンツェル」等の様々な作品でアニメーターを務めたジョン・カースによる初監督作品。
脚本はクリオ・チャンとケンデル・ホイヤー。
音楽は「アナと雪の女王」シリーズで有名なクリストフ・ベック。
1940年代のニューヨークを生きるごく普通の男女に起こった小さな奇跡を描いた7分のモノクロ短編アニメーションです。
当時本当に画期的だった
【手描きと3DCGを融合させる】(今で言うセルルックやトゥーンレンダリングと似ていますが全く異なる物です)
「final line advection」
という手法を初めて導入した作品。
主人公のジョージ役を監督のジョン・カースが自ら演じています。
相手のメグ役には各種ディズニー作品をはじめ、日本アニメ「フリクリ」海外版のハルハラ・ハル子役でも有名なカリ・ウォールグレン。
ジョージの職場の上司役はジェフ・ターリー。
ほとんどセリフのない作品ではありますが、笑い声やため息、咳払い等を中心に上記の三人が演じています。
公開直後から非常に高い評価を獲得し続けている作品で、アカデミー賞やアニー賞も受賞しています。
特に全体プロットと、その画期的なアニメーションに称賛の声が多く上がりました。
現在でも2000年代以降のディズニー短編アニメーションを代表する作品として非常に人気のある作品です。
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あらすじ
とある高架鉄道のホーム。
書類を抱えた男が立っていた。
慌てた様子で隣に立った女性。
大きな風が吹き、彼の持っていた書類の一枚が彼女の顔に張り付いた。
慌てて顔から剥がしたその紙には、彼女の口紅の跡が。
思わず笑い合う二人だが、直後、彼女は列車に乗り去っていった。
一瞬の出来事だが、何か惹かれ合う物を感じた気がした二人。
職場に着いた男性は上の空で仕事を行う。
ふと窓から向かいのビルに目をやると、その一室の中に今朝出会った「彼女」がいるのが見えた。
彼女に気付いて貰おうと、紙飛行機を作って隣のビルに飛ばす彼だったが……。
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感想
画期的・圧倒的アニメーション
近年、2000年代以降のディズニー短編アニメーション映画の中でも圧倒的な人気を誇る作品です。
やはり最も特筆すべきはその独特なアニメーションの逸品さ。
ジョン・カースが「塔の上のラプンツェル」でアニメーションを手掛けていた時、同作の制作総指揮をしていたベテランアニメーター グレン・キーンがディズニー伝統の手描きアニメーションの特色をCGアニメに反映させようと拘る姿を目の当たりにした事から、この作品の構想が始まりました。
10年経った今観ても間違いなく圧倒的なクオリティのアニメーションです。
現在日本アニメ等で主流になりつつあるセルルックやトゥーンレンダリング(3DCGを2Dのように見せる技術)とは違い、この作品が画期的だったのは【実際にアニメーター達が3DCGの上に2Dアニメーションを描いている】という点です。
これにより最も大きかったのは、従来の伝統のディズニーアニメーションのように、アニメーターやクリエイターたちが最後まで責任を持って作画への意思決定や調整ができるようになったことです。
3DCGアニメだと例えば各キャラクターのパーツごとに部門分けして作業を行っていきます。
髪の毛・顔パーツ・衣装…といった具合です。
今回の手法ではそれをせずに、アニメーター達が2Dアニメーションの時と同じようにキャラクターを頭から足先まで拘り抜いて描き、それを作品にそのまま反映できるようになった。
これは本当に画期的であり、個人の見解ではこれは事実上の【ディズニー手描きアニメーションの復活】と言って良いんじゃないかと思っています。
細かな情報はまだわかりませんので推測にはなってしまいますが、おそらくその映像を見る限り、ディズニー最新作「ウィッシュ」のアニメーションは、この紙ひこうきでの技術が進化した物なんじゃないかとほぼ確信しています。
3Dのダイナミックな演出を可能としながらも手描きの繊細さや雰囲気も損なわない、とても味わいの深いアニメーションになっていますね。
シンプルながら共感性の高いぷちファンタジー
ストーリーはいたってシンプルです。
見ず知らずの二人がちょっとした偶然と小さな魔法で出会いを果たす、それだけの物語。
監督曰く、時折人と人との間で起こる偶然の繋がりを描いた【都会のおとぎ話】。
だそうです。
あくまでファンタジーなので、実際には起こり得ないような事がもちろんクライマックスには起きるのですが、世界観やこの男女二人の空気感が持つ雰囲気が、なんかこう、とても人間臭くてリアルなんですよね。
セリフがほとんど無いのとかもとても良い方向に作用していて、とっても生々しいんです。
そして何処かノスタルジーを感じる。
ディズニー映画を観てるとよく起きることなんですが、この【経験したことがない事柄にノスタルジーを感じる】というのは、実はとてもすごいことなんじゃないかと思います。
今作はまさにその代表格と言えますね。
全編モノクロなのも作品の雰囲気にとても合っています。
ファンタジーなんですけど、だけどなんとなく、
【世界の数多ある日常のどこかで、こんなような事がもしかしたら無数に起こっているのかも知れないな…】
…と思わされるような、そんなストーリーです。
紙ひこうきというアイテムだけでここまで魅力的なドラマを作り上げるというのは、本当に見事だと思います。
ただまぁ一点だけ、、
ジョージは男性としては魅力的ですが社会人としてはぶっちぎりの0点である事は間違いないですねw
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まとめ
圧倒的なアニメーションと独自の世界観、そしてそのシンプルながら沢山の人の心を掴むストーリーも相まって、まさに
【ディズニーの伝統と技術はまだ死んでいない】
と世間に改めて知らしめるような、そういう作品であると個人的には感じています。
実際にこの作品の直後の「アナと雪の女王」でディズニーはそれを証明する事になる訳ですが、この「紙ひこうき」を観た多数の評論家達は
「近いうちにまたディズニーが天下を取る時代が必ず来る」
と口を揃えたと言います。
そのくらい、ある種ディズニーの大きなターニングポイントとなった作品であると言えるでしょう。
技術的にも評価的にも。
もちろん短編作品なのでそこまでの知名度はありませんが、中には長編作品も含む全てのディズニー作品のなかで「紙ひこうき」が一番好き…
と公言する方も実は結構いたりします。
なんだろう。
今観てもとにかく本当に素晴らしい作画とアニメーションなんですよね。
この作品で使われた「final line advection」という手法はこの後いくつかの作品で使用され、その後どうなったのかはわかりませんが、あれから10年経ってもまだこの「紙ひこうき」を越える作画アニメーションの作品は出てきていないと思います。
またクリストフ・ベックの音楽も凄く良いんですよね〜。
7分という尺でありながら、そのストーリーと演出、そして映像美で観ている人の心をグッと引き込む力を持った素晴らしい作品です。
ディズニープラスで配信中ですので、機会があれば是非一度ご覧になってみて頂きたいです。
たった7分だから、お時間も取りませんしね!
はい。
というわけで今回はこの辺で!
今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪
また次回。
しーゆーねくすとたぁいむー。
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