はぁいどうも。
さて、今回も恒例のディズニーアニメーション映画史。時代は【ディズニー第3の暗黒期】と言われている2000年代を越え、大きな飛躍を遂げる事となる2010年代に突入中です。
2004年に手描き2D映画から撤退しフルCG映画制作への完全移行を実施してから、徐々にその評価と成績を上げ、「塔の上のラプンツェル」で待望の特大ヒットを達成、さらにクラシックリスペクトのウォルト生誕110周年作品「くまのプーさん」も好評を得て、前作の「シュガー・ラッシュ」では新たな世界観を提示しラプンツェルに匹敵するほどの収益と評価を獲ました。
CG化のゴタゴタの中で一度は窮地に立たされながらも、最早その存在感を完全に取り戻したディズニー。
黄金期再来は目前に迫っていました。
というかもうラプンツェルの時点で始まっているという声もあるにはあるのですが…
やはり、ディズニー第三の黄金期と言えば文句なしでこの作品がその象徴でしょう。
待ちに待った大爆発がここで起こります。
そう。
言わずと知れたこの作品。。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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アナと雪の女王
(原題:Frozen)
2013年
監督
クリス・バック
ジェニファー・リー
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ53作目の長編アニメーション。
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あらすじ
この作品はもう…今更あらすじも野暮だと思うので今回は割愛します。
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感想
実は、正直な所公開当時に一回サラッと観ただけでほとんど想い入れのない作品でした。
恥ずかしながら。
だから今回改めて見返すまでは思いっきり裏張りしてやろうと思ってたんですよね。。
いやぁ…。
今から死ぬほど月並みな事を言いますが。。
名作です。
これぞ紛れもなくディズニーにしかできないファミリーエンターテイメント。
ディズニー映画というジャンルの間違いなく最上級です。
1994年のあの衝撃以来、初めて「美女と野獣」の領域まで辿り着いた「映画としての面白さ」と「ディズニー映画としての魅力」の完璧な融合。
アラン・メンケンを初めて越えたと思わされた、最高の楽曲とミュージカルシーン。
「ラプンツェル」や「プリンセスと魔法のキス」同様、ディズニーがずっと向き合ってきたテーマに向き合い直し、新たなその先の答えを出した見事すぎるストーリープロット。
サブキャラクターの魅力やコメディシーンの絶妙さ、アニメーションの素晴らしさが根底を支えるエンタメレベルの高さ。
そして原語版はもちろん、日本語版の声優さん達の圧巻の演技。
否の打ちどころがありません。
「美女と野獣」の時に、これはディズニーアニメーションの一つの完成形だと言いました。
この「アナと雪の女王」もまた間違いなく現代フルCG時代におけるディズニーアニメーションの一つの到達点だと思います。
いやぁ。
驚いた。
まぁ、、詳しくは以外で↓
といってもちょっと語りすぎるのもこの作品は野暮だと思うので出来るだけサラッと…。
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「真実の愛」のその先
2000年代に入ってから、ディズニーはずっと「夢と魔法のディズニー」という呪縛と戦い続けてきました。
それはただこれまでのイメージを覆すという小手先の事ではなく、根底の概念をしっかり守ったままその先へ向かうための戦いでした。
特に2000年代後半からは、これまでやってきた事や大切にしてきた事を否定し破壊するだけでは決して無く、そこに現代の価値観・現代の思考を交えて改めて向き合い直すための試行錯誤と奮闘の時期と言えると思います。
プリンセスと魔法のキスでは夢に向かって努力する事のその先を見事に描きました。
塔の上のラプンツェルでは夢を叶えたその先を。
そして今作では「夢」同様、それこそ1937年の白雪姫からずっとディズニーが向き合い描き続けてきた「真実の愛」のその先を、最高の舞台で見事に描ききっています。
個人的にはこの3作はディズニー往年のプリンセスストーリー「白雪姫」「シンデレラ」「眠れる森の美女」の、ある意味リブートだと思っています。
「愛」と「夢」。
この2つのテーマとこんなに長きに渡って向き合い続けた映画会社は他にあるでしょうか。
その根底のテーマや根っこにある精神は変えることなく、現代的思考や価値観を持つ現代のディズニーで改めてこの三作品がやってきた事を表現した。
そんな風に勝手に思っています。
そして今作ではそれを観ている側に伝えるための工夫もとても巧妙に作り込まれています。
トロール達による「欠点があっても愛があれば大丈夫」というミュージカルが最初の伏線となり、オラフの「愛とは自分以外の人を大切に思う事だ」という補足も絶妙なタイミングで入ります。
つまり「自分以外の人を大切に想う」ことができればそれはもう「愛」なんです。
愛の形は一つじゃない。
この世には沢山の真実の愛がある。
お姫様を救うのが姉妹の愛であったって何も可笑しくはないんです。
これをディズニーのイメージ戦略だという声があります。
だけど自分は全くそうは思いません。
ディズニーがずっと描いてきた「真実の愛」というテーマととことん向き合い、そして最初はエルサをヴィランとして制作が始まったこの物語ととことん向き合った結果だと思います。
これまで描かれ続けてきた「真実の愛」というテーマを、見事にリブートしたんです。
圧巻のミュージカル
今更語るのも憚られますが、ミュージカルシーンが何しろ素晴らしいです。
個人的にはトータルで見たらディズニー映画の中でもナンバーワンかもしれません。
リトル・マーメイドと良い勝負ですね。
楽曲がまず本当に素晴らしいです。
ストレートなポップミュージックが多いんですが、エンタメ力が半端ないです。
ストーリー的に言うと蛇足的な、横道にそれるような曲も数曲あるんですがその一曲一曲がエンターテイメントとして非常にレベルが高いんですよね。一級品です。
そしてやはりちょっと圧倒される程素晴らしいのが、物語の核となる「生まれてはじめて」「雪だるまつくろう」「レット・イット・ゴー」の三曲。
誰にでも口ずさめるポップソングなのに、とてつもなくエモーショナルなメロディ、キャラクターの心情変化や葛藤を的確に表現した歌詞。
何よりアレンジ。
「生まれてはじめて」のアナとエルサ2つの全く違う視点と感情による2度の掛け合いとか、ちょっともう天才すぎますw
演出の良さも相まって、個人的にこの作品で一番の名シーンに上げたいです。
「雪だるまつくろう」はなんとなくアラン・メンケンとハワード・アッシュマンのコンビを彷彿とさせるような魅せ方が素晴らしいです。
【雪だるまつくろう】というワンフレーズを主軸に、歌い手の状況が変わっていくという…見事。
「レット・イット・ゴー」はもう言わずもがな。
世界中が惚れ込んだアカデミー受賞曲です。
レット・イット・ゴーとは、直訳すると「どうにでもなれ」「手放す」というような意味。
悲しみの中で次第に投げやりになり、仮初めの女王として変貌していくエルサの心情変化が痛いくらいに描かれています。
余談ですが、当初エルサは悪役として描かれる予定で制作がすすんでいました。
しかし、この楽曲をきっかけにその設定が変えられていったという裏話があります。
それくらい圧倒的な楽曲。
そして圧倒的なシーンです。
そしてもう一つ余談ですがどうしても言っておきたい事が。この楽曲の日本語訳「ありのままで」ですが、原語版本来の意味合いが正しく反映されていません。
曲だけ聴くと「ありのままで良いんだ」というポジティブソングのような歌詞になっていますが、実際はもっと投げやりでもっとヒリヒリしていてもっと悲しい曲です。
とあるインタビューでジブリの宮崎さんが「ありのままなんてつまらない。」とお門違いなコメントをしていますが、エルサはありのままでいたくているのではありません。
深い悲しみの中で、自暴自棄になってしまったエルサが「偽りのありのまま」を歌うのがこのシーンです。
エルサの投げやりな表情や原語版の歌詞がそれを的確に表現しています。
これはぜひもっと沢山の人に知ってほしい事ですね。
松たかこさんの歌唱はもう本当に本当に素晴らしいですが、この曲は是非原語版も観ていただきたいです。
そして、この流れでやはり触れておきたいのが日本語版声優さんの熱演です。
特に松たかこさんと故・神田沙也加さんの歌唱は本当に圧巻の素晴らしさです。
前述の「生まれてはじめて」の特に氷の城での掛け合いのシーンはもう本当に、日本語版で何度も観たくなりますね。
アナとエルサがこの二人で本当に良かったと、今でも思います。
映画としての趣向を凝らした演出とディズニー映画独自の魅力
あとはやはり演出ですね。
サプライズや捻った展開を用意しながらも観ている人を置いていかない配慮が素晴らしいです。
オラフやスヴェン、トロール達等のサブキャラクターも本当に良い仕事しています。
映画としての面白さを目指しながらも、ディズニー映画として誰が観ても楽しめるようファミリーエンタメとしての配慮を決して怠っていないのが凄いところ。
実は様々な要素を盛り込んでいて登場人物も比較的多くしかもその多くに(ハンスやクリストフ等にも)それぞれの物語が内包されているどちらかというと複雑なディズニー映画なんですが、それを全く感じさせない間口の広さは流石です。
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まとめ
様々な真実の愛を形にした映画
この前テレビでこの作品が紹介されていて、紹介者の方が「色々な愛の形が詰まった映画。こんなに様々な種類の愛を描いた映画はあまり無い。」とコメントしていました。
まさにおっしゃる通りだと思います。
多様性がどんどん進むこの現代価値観の中で、ディズニーがずっと向き合ってきた「真実の愛」というテーマに改めて向き合って生まれた、ディズニーらしさと映画としての面白さが融合した現代ディズニーの間違いない最高傑作です。
テーマ、ストーリー、アニメーション、キャラクター描写、演出、音楽、全てが最高レベルです。
映画も音楽もなんでもそうですが、その人気が上がれば上がる程アンチ意見というのは必ず比例して出てきます。
この作品もまたメガヒット作の例に漏れず、色んな所で色んな事を言われている作品です。
だけど一つだけ間違いなく言えるのは、、
良いものは良い
ということ。
そして「白雪姫」や「美女と野獣」と同様にこの「アナと雪の女王」というディズニー映画は、間違いなくこの先長い年月に渡り愛され語り継がれていく作品であるということ。
頭でっかちにハスに構えて観るよりも、是非心をフラットにしてこの最高のエンターテイメント作品をぜひ改めて観てみて欲しいです。
この夏休みに。
家族ととも、友達とともに、愛する人と共に。
ぜひぜひ。