はいどうも。
さて、今回はディズニーアニメーション映画史、時代は第2の黄金期・ディズニールネサンスと言われた1990年代。いよいよその終焉期です。
絶頂期だった90年代前半は過ぎ、95年頃からの低調期も乗り越え、90年代最後に公開されたのは、激動の黄金期のラストに相応しい渾身の一本でした。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
ターザン
1999年
監督
ケヴィン・リマ
クリス・バック
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ37作目の長編アニメーション。
監督は「魔法にかけられて」や「グーフィー・ムービー ホリデーは最高!!」で有名なケヴィン・リマと、「アナと雪の女王」をはじめ数々の名作を世に送り出し今やディズニーアニメーションスタジオを代表する1人と言えるクリス・バック。
今思うとかなり豪華なコンビです。
音楽は東京ディズニーシー「ストームライダー」のアトラクション楽曲を担当した事でも知られるマーク・マンシーナ。さらに挿入歌・及び主題歌をフィル・コリンズが書き下ろし提供しています。日本語版は全ての曲をV6の坂本昌行さんが歌唱しています。
原作はエドガー・ライス・バローズによる小説【ターザン】シリーズ。
ターザンを原作とした映像作品はこれまで数えきれない程制作されていますが、その中でもこのディズニーのアニメーションは1.2を争うほど有名な一本となりました。
これまで調子を落としていたディズニールネサンスですが、その最終作品となるこのターザンはまるで最後の花火を上げるが如く久々の大ヒット。
主題歌「You'll Be in My Heart」がポカホンタス以来4作ぶりとなるアカデミー賞歌曲賞を受賞し、興行収入もライオン・キング以降では最大の数字を記録しました。
現在はターザン関係全般に権利の関係で(ディズニー以外の部分で)ごたごたがあり、新たな作品や商品展開、パークへの出演等は行なわれませんが、紛れもないディズニーを代表するヒット作の1つとして現在でも高い評価を得続けています。
あらすじ
物語はアフリカのジャングルにとある人間の夫婦が漂着した事から始まる。夫婦は幼い赤ん坊を守るため大木に家を建て暮らしはじめるが、豹に襲われ二人は命を落とす。
時を同じくしてゴリラのカーラもまた我が子を同様に豹に襲われて亡くし、失意に暮れていた。
そんなカーラは、大木の家に2つの人間の死体と残された赤ん坊を見つける。その子をターザンと名づけて大切に育てるカーラだったが、ターザンは種族や能力の違いが原因で群れから孤立仲間のゴリラから孤立し、ボスゴリラのカーチャックもターザンを認めようとはしなかった。
そんな環境の中でも母のカーラや友達となったゴリラのタークや象のタントーに見守られながらターザンは優しくも強い青年に成長する。
ようやく群れにもカーチャックにも認められはじめた時、突然ジャングルに銃声が鳴り響き、ターザンは自分によく似た特徴を持つ生き物・ジェーンと出会う。
そしてこの出会いがターザンの運命を大きく変える事となるのであった…
感想
ディズニールネサンスの最終作にふさわしい、とても完成度の高い一作だと思います。
既に世界的に有名だった【ターザン】なので観る前は少々不安でしたが、原作の良さを活かしつつもディズニー流にしっかりと昇華しています。
実なディズニー作品の中ではかなり原作に忠実な内容になっているのですが、わりとしっかりめに人の死亡を描いていたり重たい描写も多々ある中で、ミュージカルをほぼ撤廃し、目に見えるようなファンタジー要素もほとんど使わずにそれでも全体的に暗くならずしっかりとエンターテイメント性の高い作品に仕上がっているのは見事でした。
この時点でのディズニー映画最高額の制作費を使用しているだけあって特に当時では最新のディープ・キャンバスと呼ばれるCG技術を駆使したその映像の美しさは現在でもディズニー史上圧倒的なNo.1だと思います。
見た目や印象の地味さからは想像しにくいかもしれないですが、実は今の若い人でも充分に楽しめるハイスピードネイチャーアクションムービーでもあります。
躍動感溢れる秀逸なアニメーション
やっぱりこの映画はまずこれでしょうね。
いやこれは本当凄いです。
セルアニメとしては本当に史上最高の仕上がりじゃないでしょうか。
個人的にはムーランの玄人好みのアニメーションの方が好みですが、こちらは誰もが楽しめるさながら映像型アトラクションの先駆けのような仕上がり。これ、今の3Dとか4D技術で観たかったなぁ。権利の関係もあるからリバイバルも難しそうですもんね…。残念。
CGだけではなくセルアニメとしての完成度も非常に高く、キャラクターの表情から髪の毛や服の動き、そしてディズニーでは定評のある動物達のモーション、何よりアクションの滑らかさは目を見張るものがあります。
ディズニーの本気を感じましたね。
早足気味ながら魅力的なキャラクター達が支えるストーリー
この作品で唯一個人的に難をあげるのならストーリーの駆け足感。元々長いシリーズ小説のターザンをなるべく原作に忠実な一本の映画にしているので、やはり少しテーマに対して展開が早いかなぁという印象は否めないです。
まぁ充分まとまっているとは思うんですが、やはり時間飛ばしやダイジェストシーンが多いですし、それぞれもう少し深く観たかったなという感じですね。本当の両親の下りとか、ターザンやジェーンが恋に落ちる過程とジェーンの父親も含めたそれぞれの身の振り方を決断する過程とか、もっと詳しく見たかったですね。
ちょっとトントンと話が進んじゃって後半ご都合主義感が強めでしたかね。ラストとか「そうなる?」ってやっぱ一瞬思いました。
実際原作のターザンとジェーンは一度別れの道を選び、結ばれるまでかなりの時間を要していたりします。
まぁ赤ん坊期から成人期まで、要所の大事な部分をちゃんと抑えながらよく一本にまとめたとは思いますけどね。
しかし、今作はそれを補うように主要キャラクター達がとても表現豊かに描かれています。
特にヒロインのジェーンは非常に魅力的に描かれていて、これまでのディズニーヒロインはあまり居なかったタイプの女性ですよね。
奔放で行動的、サバサバしてるんだけどオタク気質もあるという。
ヴィランのクレイトンは普通の人間で小悪党感はあるんですが、漂わすオーラに不思議な魅力のあるキャラクターでした。
彼の最期はなかなかショッキングに描かれていて今でも話題に上がることの多いシーンですが、個人的に【ジャングルのゴリラを捕獲して売り捌く】という行為がどれくらい極悪な事なのかが知識不足の為あまりピンとこなかったので、彼の悪さレベルと最期がそれに見合うモノなのかがちょっとわからなかったですね。これまでの【あからさまな悪人】とはちょっと違う感じで。まぁもちろんジェーン達を監禁したりカーチャック殺しちゃってるので悪人なのは間違いないですが。
脇役に徹した効果的な音楽
久々にミュージカルをほぼ完全撤廃した今作ですが、それでもなお音楽が非常に良い仕事をしている作品なのは間違いないです。
まずマーク・マンシーナによるBGMが見事です。
脇役に徹しながらも作品全体を影から支える名アシストぶり。さすが劇伴のプロですね。
唯一のミュージカルっぽい要素としてタークと仲間達のシーンがありますがこれも素晴らしかったですね。ストーリーを邪魔しない絶妙な塩梅のエンターテイメントです。