(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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悪魔バスター★スター・バタフライ
(原題:Star vs. the Forces of Evil)
2015〜2019
全4シーズン 77話
総監督
ダロン・ネフシー
データ
日本では2016〜2020年にかけてディズニーチャンネルで放送されました。
現在はディズニープラスで全シーズン配信中です。
総監督を務めたのはダロン・ネフシー。
2009年に芸術大学を卒業したばかりの若き女性アニメーター。
初の監督作品。大抜擢でした。
彼女が学生時代に練り上げた素案がこの作品の元になっています。
つまり原作なしのダロンによる完全オリジナル作品。
ネフシーは日本のアニメ、特にセーラームーンやドラゴンボール等の大ファンであることを公言していて今作の中にもそれらの作品へのオマージュや影響が直接的に盛り込まれています。
よってスターは非常に珍しい「関西弁を話すディズニープリンセス」として話題になりました。
当初は単発のコメディカートゥーンとしてそれ程大きな話題にならなかった今作ですが、ストーリーが進むごとにその独特の世界観と先の読めないストーリー、各キャラクターの魅力が注目を集め、次第にカルト的人気を獲得。
アニー賞等数々の賞も受賞し、現在ではディズニーの現代カートゥーンの名作の一つとして高い支持を獲得し続けています。
日本でもディズニーの隠れた傑作として知る人ぞ知る人気作となり、現在でも続編等の次の展開を希望する声が後を絶ちません。
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あらすじ
魔法の国ミューニ。
プリンセスであるスター・バタフライは、14歳の誕生日に母親のムーンから王家に伝わる魔法のステッキを受け継ぐ。
しかしお転婆な彼女は使い方を知らない魔法で様々なトラブルを起こし、手を焼いた両親によって【修行】と称して地球に送られることになってしまった。
アメリカの中学校に交換留学生として編入したスターは、マルコ・ディアスという少年の家にホームステイする事になる。
文化の違う暮らしに戸惑いながらも、魔法のステッキを狙うモンスター達と戦いながらスターはマルコと共に地球でのファンタジーでクレイジーな暮らしを謳歌していく。
しかし、魔法の国ミューニとバタフライ家にはまだスターの知らない大きな秘密が隠されていた…
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感想
ファンタジーあり、不条理コメディあり、シュールギャグあり、シリアスあり、人間ドラマあり、ロマンスあり、ミステリーあり、バトルあり、涙あり…
全77話とちょっと長いかもしれませんが、アニメーションの魅力が全部入りのまさに傑作です。
あらすじや第一話だけ観てよくあるボーイ・ミーツ・ガールのファンタジーコメディだと思ったら大間違い!
最初よくわからなくてもとりあえず1シーズンは観てみてほしいですね。
夢と現実と笑いとバトルと冒険と…
監督のやりたい事の全てがおもちゃ箱のように詰まっていて、アニメーションの面白さや素晴らしさを改めて教えてくれるような、そんな作品だと思っています。
ただ最終的に描こうとしている事は、ディズニー映画で言うと最も「ズートピア」に近いかもしれませんね。
そんなおもちゃ箱のようなアニメーションの中に、シリーズを通してゆっくりと深いメッセージ性とテーマが内包された物語となっています。
ディズニーファンだけじゃなく、日本のアニメーションファンも大いに楽しめる作品です。
コミカルなギャグに隠された重厚なストーリー
この作品は本当に独特なストーリー進行の仕方をします。パッとみ一話完結のコメディストーリーなんですがその端々にメインストーリーの伏線が紛れ込んでいるんです。
伏線と気付かないような伏線も多く、ぶっ飛んだキャラクターや独特なギャグで楽しんでるうちに徐々に世界感に引き込まれ、気づいたときには伏線に次ぐ伏線の絡まったストーリーにすっかりハマっているんですよ。
またその伏線の回収も非常に突然だったり意外な回収の仕方だったりして、いちいち意表をついてきます。何十話もあいて忘れた頃の回収とかもザラにあるので一話完結の捨て回だと思ってもいちいち気を抜けませんし、そこにスターとマルコの心理的揺れ動きと成長、そして両者の関係性の変化がゆーっくりと繊細に絡んで描かれているので観てる方は気付いた時には夢中になっちゃってるんですよねー。
ガワは子供向けなんですけどメインのストーリーは色々な要素が絡み合った複雑で重厚な作りになっているので、本当に子供も大人も楽しめるんです。
ただ本当に独特なストーリー構成で、一見何の関係も無いようなエピソードが突然入ってきたりするので、そういうのが合わない人にはちょっもキツイかもしれません。
シュールと正統派織り交ぜたギャグの応酬
上記のように本当に色々な要素が詰め込まれている作品なんですが、本作のメインはあくまでコメディ。そしてその屋台骨であるコメディ要素が本当にしっかり作られています。誰でも笑える王道の正統派ギャグから独特な間を巧みに使ったシュールなものまで物凄いバラエティに富んでいるんですよね。
それを作品全体の独特の雰囲気が包んで作品独自のコメディがちゃーんと出来上がってる感じ。
全話観ている人にしかわからないような小ネタや繰り返しネタも盛りだくさんで、この多彩だけど唯一無二なコメディバリエーションも、観ている人を惹き込む大きな大きなポイントになっています。
ディズニーにはあまりないタイプの緻密な笑いなんですよね。
ぶっ飛びつつ愛らしいキャラクターの個性
そして何よりもこの作品は本当にキャラクターの作り込みが素晴らしいです。
捨てキャラが居ないと言うか、どのキャラにもしっかりバックボーンや多面性があって非常に奥深く、命がしっかり吹き込まれているんですよね。
これは長期テレビシリーズの最大の特権というか有利な所なんですが、尺が短い映画とは違って一人一人のキャラを丁寧に描けるのでその分厚さが違います。
まとめ【映画では観れないディズニーの新境地】
これが同じディズニーか、と感じるほどの独自のキャラと世界感によるギャグの応酬と打って変わったシリアスで複雑に絡み合ったストーリーが混ざりあった、映画とは全く違った新たなディズニーの世界が広がっています。
そのカラフルで可愛くて、その中に生々しさやダーク要素も内包された奇抜なアートデザインも大きな特長ですね。
監督のダロン・ネフシーの【好き】をこれでもかと詰め込んだおもちゃ箱のような作品ながら、その【カートゥーン×ディズニー×日本の魔法少女アニメ×不条理ギャグ】という本当に異色な世界感で一本の長期シリーズとして非常に絶妙な具合にまとまっていて、散りばめまくった伏線をほぼ全て回収してキレイに完結しているのでそれも感服しますね。
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