ディズニー映画語り ポカホンタス | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。


はぃどぅもぉ。


さて、今回はディズニーアニメーション映画史。時代はついに1990年代、ディズニーアニメーションスタジオの第二黄金期【ディズニー・ルネサンス】と言われている時代の真っ只中。


暗黒期と呼ばれた1980年代の低迷から、起死回生の一本「リトル・マーメイド」と共についにその財政と世間の評価・信頼大きく回復させる事に成功したディズニー。


さらに前作の「美女と野獣」では、そんなリトル・マーメイドを遥かに凌ぐ収益と共に【アニメーション映画史上初のアカデミー作品賞ノミネート】という偉業も成し遂げ、続く「アラジン」ではさらにその上を行く興行収入を記録。


メガヒットを連発したディズニースタジオは、次作の大本命として実在のネイティブアメリカン・ポウハタン族の女性を題材にした

社運をかけた大作の制作を開始。


それはディズニーアニメーションの歴史に残るほどの大きな挑戦であり、高いハードルとの厳しい戦いでもありました。


そして、同時制作していたライオン・キングが一足先に記録的な大成功を収めスタジオ全体が勢いを強める中、ついに満を持したその作品は発表される事になります。



(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)



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  ポカホンタス

(原題:Pocahontas)

1995年

監督

マイク・ガブリエル

エリック・ゴールドバーグ



データ


ウォルトディズニーアニメーションスタジオ33作目の長編アニメーション。



実在した歴史的人物、ネイティブアメリカン・ポウハタン族の女性ポカホンタスを題材とした民話や伝承を原作としています。


史実を母体としながらディズニー流のミュージカルラブロマンスファンタジーを織り交ぜた、これまでの他作品とは一線を画する雰囲気を持った作品。


美女と野獣で達成した偉業「アカデミー作品賞ノミネート」再来を目指したいディズニー上層部にとって、マイク・ガブリエルの提案した【ネイティブアメリカンの女性を主役とした企画】はまさにうってつけであり、異例の早さ企画の承認制作がスタートしました。


実在の人物を題材にした初のディズニー作品とよく言われますが、厳密にはそこは曖昧であり、過去に「メロディ・タイム」という作品でジョニー・アップルシードを扱っていますし「王様の剣」アーサー王実在した可能性があると言われています。



監督は「ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!」や短編の傑作「ロレンゾ」を監督した事で知られるマイク・ガブリエルと、以後数々の名作たちに多大な貢献をする事になるエリック・ゴールドバーグ

この2人は監督作品こそ少ないものの、現在に至るまで尚現役でディズニーの伝統を支え続ける貴重なベテラン勢となっています。



脚本はカール・バインダースザンナ・グラントフィリップ・ラゼブニク3人

いずれもディズニー作品初参加の若手ライターでした。


ストーリーアーティストとして「塔の上のラプンツェル」グレン・キーン70年以上のディズニーキャリアを誇り2023年に亡くなったレジェンドバーニー・マティンソン1940年代のディズニーを知る出戻りのベテランジョー・グラント「アナと雪の女王」の監督クリス・バック等の錚々たる顔ぶれがそれぞれ部分的に携わっています。



音楽と楽曲は「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」三作連続でのアカデミー賞受賞という快挙を成し遂げ、ディズニーを代表するミュージックメイカーとなったアラン・メンケン

後に「ノートルダムの鐘」「魔法にかけられて」等の人気作も手掛けることとなるスティーブン・シュワルツが作詞を担当しました。


主人公のポカホンタスを演じたのは数々の映画やドラマで多数のネイティブアメリカン役を務めているアイリーン・ベダード

歌は実力派ミュージカル女優のジュディ・クーン2名ともに今作以降長きに渡りポカホンタス役を演じ続け、2023年の短編「ワンス・アポン・ア・スタジオ」ではジュディがポカホンタスの歌声を新たに演じました。

日本語版は土居裕子さん。


ポカホンタスの恋仲になる入植者ジョン・スミス役は超著名のアカデミー俳優であるメル・ギブソンが務めます。彼にとって困難な仕事ではありましたが「子供達の為の仕事をしたい」という思いからオファーを受けたと、後に語っています。

日本語版は古澤徹さん。


ヴィランであるラトクリフ総督役を務めたのは「美女と野獣」のコグスワースをはじめ様々なディズニーキャラクターを演じ分けるデビッド・オグデン・ティアーズ。日本語版は有川博さん。



プーさんの専属声優ジム・カミングスや様々なアニマルボイスを筆頭に実に800以上の作品に出演する史上最も多作な声優フランク・ウェルカーなど、ディズニーお馴染みのキャスト陣も出演しています。




美女と野獣ライオン・キングに続くメガヒット評価を狙って鳴り物入りで制作された超大作でしたが、興行収入面ではこれまでのルネサンス作品と比べ数字を大きく落としてしまいます。


それでも収益的には成功に届いており、楽曲「カラー・オブ・ザ・ウィンド」はと作曲のアラン・メンケンがまたしてもアカデミー賞を受賞


評価面では大きく賛否の分かれる結果となり、そのアニメーション音楽芸術性ストーリーのロマンス面高い評価を受ける一方で、エンターテイメントとしての単調さや、史実的時代考証人種差別センシティブな側面批判が多方面から多く上がりました。


現在においても尚、その方面での批判や論議収まらない作品ではありますが一方それ以上一本のアニメーション作品としての評価時代と共に上がり続けており、ディズニー映画としての知名度は同時期の作品に比べて低いながらも、大人のディズニーファン映画ファンからは圧倒的人気を誇る隠れた名作として、長きに渡り愛され続けています。





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あらすじ



17世紀初頭のアメリカ。


インディアンのポウハタン族の領土にイギリス人が植民地化の為にやってきた。


そんな時、ポウハタン族の娘であり好奇心旺盛で行動的な女性・ポカホンタスの前にジョン・スミスという男が現れる。


二人はお互いの文化や育ちの違いに戸惑いながらも次第に惹かれ合う。


惹かれ合う二人とは裏腹に激化の一途を辿っていくインディアンと開拓者達の争い。


ポカホンタスとスミスは両者間の仲を取り持とうと動き出すが……


そこで事件は起きてしまう…。



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感想






さて。このポカホンタスという作品は個人的にすっごーーく評価が難しい一本です。


ディズニーアニメーションの中で一番語るのが難しいかもしれません…。



とりあえず、、



まずは語りやすい好感点から。。



音楽とアニメーションの素晴らしさ






もうこれはホントに文句なし

素晴らしい作り込みです。


柔らかな曲線直線的な造形使い分けの素晴らしさ、滑らかに動くキャラクターと木々や木の葉や川。彩りの使い方や適度芸術性神秘性


ディズニー全作品の中でも五本の指に入るほど美しいアニメーションでだと思っています。


そして音楽

特に今回はそのスコアがとても良いです。


民族的な要素を織り交ぜつつ情緒のあるメロディが逸品


特にこのメロディ情緒という部分に関してはこれまでの作品にあまり無かったもので、非常に聴きごたえがあります。



特にアカデミー賞を受賞した「カラー・オブ・ザ・ウィンド」はもう本当に名曲中の名曲


その歌詞の秀逸さも相まって、個人的には本家ディズニーアニメーション作品の中でおそらく一番好きな曲といっても過言ではないですね。




これぞディズニーなサブキャラクター




後述しますが、非常に難しい題材を扱ったストーリーの中で、あらいぐまのミーコ、ハチドリのフリット、そしてパグ犬のパーシー達動アニマルサブキャラクター達が今作での数少ないコメディパートディズニーイズム死守してくれています。


どれも性格付け劇中での役割等もしっかりしていて、そのギャグシーン等も非常に良くできているので観ていて楽しいです。


重苦しい展開の中で彼らの存在はかなり大きかったですね。


色々な意味で今作のMVP彼らだと思います。


難しすぎる題材





そしてやはり一番の問題はここですよね。


この作品の題材である「ポカホンタスの伝説」は元々先住民と植民地開拓者という他人種間に関わる非常にセンシティブな物であり、文献等もあまり残っておらず伝えられている伝承どこまでが事実なのか、今でも議論が収まらない代物です。


歴史家専門家ポウハタン族の末裔、そしてイギリス側意見の相違も多々あり、ともすると政治も関わる外交問題とも言える分野にもなってくる本当に難しい題材です。


率直に言うと…。


ここによく手を出したな…と。


この今で言うポリコレの塊のような題材に。


しかも人種問題ではよく槍玉にあがるディズニーがですよ。


批判は火を見るよりも明らかだったと思うんですよね。おそらくどんな内容にしても。


配慮してもしなくても批判される、特にディズニーはそうですよね。


一応ネイティブアメリカンの方々から意見を聞きながら作られた作品なのですが…


事実と違う、描き方が…

全体的にどっちよりの描写が多い…

歴史を捻じ曲げている…等、、


案の定そっち方面の批判は今でも跡を絶ちません



そんな【ポカホンタス】あろうことかラブロマンスとして描くというそりゃもう大胆すぎるプロットなわけで…



なのでストーリー本筋に関しては、ちょっとどうとも言いようがないのが正直なところです。


連続大ヒット、特に美女と野獣の呪縛に囚われていたのはわかりますが…凄いところ手を出してしまったな…と、今でも思いますね。


実際にこの作品のラブロマンス路線を強く推し進めたのは「美女と野獣のアカデミー作品賞ノミネート再来」を狙った当時のリーダー、ジェフリー・カッツェンバーグだったと言います。



ただこれだけは言えますが、このストーリーに関しても非常に試行錯誤しながら途方もない情熱をかけて真剣に作り出された物であるのは間違いないです。


観た人ならこのただならぬ力の入れよう、きっとわかると思います。


「想い合う二人が結ばれない展開」という現在に至ってもディズニー作品の中ではやはりかなり珍しいラスト


そしてこの難しい題材の中で「自然と共に生きること」というテーマを立てて一本の映画としてしっかりまとめ上げているのも素晴らしいと思いますね。


このテーマラブロマンスの2点が上手くまとまりきれず全体が少しブレてしまったのが少し勿体なかったなとは思いました。




歴史的な黄金期の呪縛





美女と野獣、アラジン、ライオン・キング等では積極的にこれまでに無かった大人向けの演出やデザイン、展開を意識的に組み込むことで名実ともに「大人も子供も楽しめるエンターテイメント」が完成され、その方針は大成功となりました。


しかし、その結果ライオン・キングからは大人を意識した作りへの比重が強くなり、このポカホンタスに関してはもはやただの「大人向けアニメ」となってしまっている側面があります。


前述のようにミーコ達動物キャラのフォローも入っていますがあくまでフォロー程度。


とても子供も楽しめる映画には仕上がっていません



あくまで個人的な意見ですが、、

これはどうしても違うと思うんですよね。

ウォルトの発言に「アニメーションはあくまでも子供のためのものだ。我々はそれを忘れてはいけない。」というものがあります。


これって結構大事だと思ってて。


これは、最近の日本でのアニメ映画ブームでも思うんですけど、映画でアニメーションから「子供向け」「笑い」を完全にとってしまったら…絶対に実写には敵わないんですよ。


子供が楽しめるというのがアニメーションの最大の個性だし武器であって、ディズニーはそれをずっと実践してると思うんですよね。


美女と野獣リトル・マーメイドも、その根本の基盤大人も楽しめる要素バランス良く組み込めた結果最高のエンターテイメントになったわけで。


唯一、この時期だけですよね。


バランスが崩れてしまったのが。


気持ちは凄くわかるんですけどね。


これはやはり大ヒットの連発を記録し、美女と野獣アニメーションをいち映画として世間に認めさせたこの時期のいわば呪縛のような物ですね。


ここからまだ少しディズニーの大人向け比重は続くことになります。



ミュージカルシーンの希薄さ




最後に、この時期の作品群の中ではミュージカルシーンちょっと物足りない出来かなと思います。音楽は素晴らしいんですが。


ポカホンタスと父親の考えの違い「川」というキーワードで対比した「川の向こうで」とても良かったですが、それ以外が少し力不足というか…


まぁ他の黄金期作品群ミュージカル凄すぎるというのもありますが。



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【まとめ】歴史に残る挑戦作





というわけで。


この難しい題材果敢に挑戦ししっかりとテーマ性のある見応え抜群な一本の映画としてまとめ上げたその心意気と執念を感じる、間違いなくディズニーアニメーションの中でも異色の作品です。


そして依然、賛否がこれだけわかれ続けるというのもまた異色


批判を覚悟でどうしてこの題材チョイスしたのか、その真意は制作者にしかわからない事ですが、この作品の監督は未だに「ポカホンタス」はディズニー史上最高傑作だという意思と主張を曲げていないそうです。


それだけ拘りぬいて情熱をかけて作った作品だという事でしょう。


素晴らしいことだと思います。


歴史的な事に関しては当事者や関係者にしかわからないので本当に何も言えませんが、一本のディズニーのエンターテイメント映画として観るなら、個人的には大人の方に是非オススメしたい、素晴らしい傑作だと思いますね。



イメージ知名度の低さから嫌遠しているディズニーファン映画ファンの方には、是非とも一度はチェックして頂きたい。


そんな、ディズニーの渾身の本気が詰まった一本です。



「ポカホンタス」は現在ディズニープラスで配信中です♪




はい。


というわけで今回はこの辺で!


いつも長文駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!



では、また次回!


しーゆーねくすとたぁいむー。






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