・前置き
2年前にmixiで書いていた小説を改訂して投稿しています。
リゲルはトゥルスが好きという設定がありますが、今回はその設定は無しにして、トゥルスとはただの仲間という設定にしてあります。結構色んな設定を無視しています。ご了承ください。
2月14日の昼。
昼ご飯も食べたし部屋でゆっくりしようと思ったが、ある少女が自分の目の前に現れ、急に腕を掴んできた。
「ほら、もっと早く歩いてってば!」
気がついたらリゲルに連行されていた。
小さい体に似合わず、すごい力で引っ張られていて、正直腕が痛い。
道中色んな人に見られて恥ずかしくなった。
特にトゥルス、スピカ、レグルスの3人組に見られたことが一番恥ずかしかった。
彼らはリゲルに引っ張られる自分の姿を見るなりひそひそと話していた。
「リゲルの奴、強引だな…」
「ははっ!あいつもモテモテで羨ましいぜ!」
「しーっ!2人に聞こえちゃうでしょ!私達は2人を見守るのが仕事よ!」
悪いが全部聞こえてるぞ。後で覚えておけ。
しかし今のリゲルにはそんなものはお構いなしのようだ。
「着いた!さっさと入って!」
辿り着いたのは、リゲルの部屋。
彼女に背中を押されながら中に入る。
部屋から甘い香りがしてきた。
この香りは、チョコレートだ。
横の台所からチョコの香りが漂ってきているようだ。
よく見たら台所の所々にチョコが飛び散っている。
「あっ、ちょっと!あんまり見ないでよ!」
顔を真っ赤にしたリゲルが目の前に立って台所を隠そうと両手を広げる。
背が小さいので台所は丸見えだが、これ以上見たら怒られそうなので目を逸らすことにした。
あとで掃除を手伝ってやろう。
ベッドに腰掛けると、部屋の奥からリゲルが何かを取り出し、それを自分に差し出してきた。
「はい、これ!今日バレンタインでしょ?あたし、頑張ってチョコ作ったのよ!」
ハート型の箱に赤いリボンが付いている。
可愛いものをあまり好まないリゲルが、こんな可愛い包装をするとは。
可愛らしいハート型の箱を思わずじっと見てしまう。
「…何?いいから早く開けなさいよ!」
彼女に急かされてしまったので、開けてみた。
色んな形のチョコがたくさん入っている。
ハート型、丸型、四角、花型…だと思うんだが。
正直、形がいびつで、デコボコしている。
そして普通のチョコより色が黒っぽいのが気になる。
ふとリゲルの顔を見ると、顔を赤くして怒っているように見えた。
「ぶ、不器用で悪かったわね!だから変な形しか無いのよ!べ、別にあんたの為に作ったわけじゃないし!無理して食べなくていいんだから!」
怒りながら泣きそうな顔をしている。
この状況はまずい。とりあえず一つ食べてみることにした。
これは恐らくハートの形なんだろうか。多分そうだろう。
恐る恐る口に入れてみた。
驚いた。
見た目に反して味は美味しい。
時々香ばしい味がするのが気になるが、それ以外は美味しいチョコレートだった。
美味しいぞ、と言うと、リゲルの顔が普段通りに戻っていく。
「そ、そう?なら、良かった…。」
安心したのか、自分の横にぽすっと座ってきた。
気が付けばチョコを次々に食べている。
意外と癖になる味かもしれない。
たまに形が綺麗なチョコがあるが、これはカノープスが作ったのだろう。
はぁ…とため息を吐きながら、リゲルが呟く。
「それ、カノと一緒に作ったの。あたし、元盗賊のくせに不器用だから。最初は頑張って一人で作ってみたんだけど全然上手くいかなくて。結局器用なカノに頼っちゃった。」
そういえば最近カノープスが落ち込んでるリゲルを励ましているところを何度か見ていた。
あれはそういうことだったのか。
「あたしって一人じゃなーんも出来ないんだな…。」
膝を抱えて落ち込むリゲル。
自分もカノープスみたいに励ましてやりたい。
そう思っていたら、いつの間にか自分の手が彼女の頭を撫でていた。
「っ!?な、何してんのよ!?」
驚いた顔でこっちを向くリゲル。
自分も多分驚いた顔をしてリゲルを見ている。
一体何をしているんだ自分は。
しかし撫でている手が止まらない。
そのままよしよし、と言いながらリゲルを撫でていた。
「ちょっと!子供扱いしないでよ!…でも、ありがと。嬉しい…。」
顔真っ赤にして俯くリゲルが、とても可愛らしく見えた。
その後、
「って、いつまで撫でてんのよ!?背が縮んじゃうじゃない!」
と、リゲルに怒られたのは言うまでもなかった。
終