FIFAワールドカップ2022 カタール大会はアルゼンチンの劇的な優勝で幕を閉じた。決勝戦、私は前半でアルゼンチンが2-0でリードした段階で、フランスの精彩のなさを思えばこのままアルゼンチンが勝つと思ってそのままベッドについた。

 ところがなんと、その後エムバペの2得点で同点とし、延長戦でも譲らずPK戦にもつれこみ、ようやくアルゼンチンが36年ぶりの優勝を決めたという。すごい試合だったのね。

 

 

  で、実はこの『エムバペの”エ”はどこにある』は、以前に『エムボマの“エ”はどこにある?』と題してどこかで書いた小文の二番煎じである。2002年FIFAワールドカップ日韓共同開催の時、カメルーンの代表選手だったパトリック・エムボマ選手の話である。

 

 エムバペ選手のユニフォームの背中の名前の表記は“MBAPE”である。これ、普通エムバペとは読まないだろう。もちろん、彼の母国フランスでのインタビュー映像を見ても、現地フランスでもエムバペと言っているのは確認できる。ただ、エムバペと発音するのならEMBAPEと綴るのが普通のラテンアルファベット(いわゆるローマ字)表記ではないか。思うに、これは元々ムバペ、もっと言えばンバペという名前であるところ、発音しづらいということで頭にエの音を補ったということと勝手に考えている。

 いや、それほど突飛な発想ではないらしく、エムボマ選手(Henri Patrick Mboma Dem)の場合であれば、彼の名前の表記がフランスでM’BOMAと誤記されたことからエムボマ言われるようになったと伝えられている。つまり正しくは、ンボマなのだということである。

 アフリカ系の言語には、「ん」音で始まる言葉は少なくない。最近は日本でもそのまま表記する例が増えている。代表的なのは1979年に世界遺産に指定されたタンザニアのンゴロンゴロ自然保護区である。このあたりから、原音に忠実に表記しようという機運が生まれたのだろうと推測している。

 ガーナ初代大統領のエンクルマという名前はもう今の世代にはなじみが薄いかもしれない。これはラテンアルファベット表記ではNkrumahである。正しくは「ンクルマ」と読むのが原音に忠実であろう。「エンクルマ」は語頭で「ン」を発音することができない英語から入ってきた読み方で、日本語ではすでにアフリカ専門家の書籍や事典などではンクルマと表記されることが多いんだそう。ただし、エムバペはフランス代表であるからフランスでの呼称に従ってエムバペと呼ぶのは正しいと言っていいのかもしれない。

 エムボマは2歳のときに両親とともにカメルーンからフランスに移住し、フランスで活躍した選手である。フランスとカメルーンの二重国籍であったところ、ワールドカップではカメルーン代表を選択した。キリアン・エムバペ(Kylian Mbappé Lottin)は父がカメルーーン出身、母はアルジェリア系フランス人で、彼自身はフランス生まれのフランス育ちである。

 サッカーファンであれば、彼の名前の読み方あるいは日本語表記について、エムバッペ、エンバペ、ムバッペ、エムバペ、エンバッペ、ンバッペのどれが適当か、論争があることは先刻ご承知であろう。私個人は大して根拠もないが、『ンバペ』に1票。

 

読書記録#19 ん | 小人閑居して不平を鳴らす (ameblo.jp)