わかりやすい言葉で | 川村優希オフィシャルブログ「川村優希の 優希100%なカルテ」Powered by Ameba

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内科、予防医学、アンチエイジングを専門とする医師です。

昨日のヨミドクターの記事(*^^*)

医学用語を分かりやすく・・・患者の誤解をなくす
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160608-OYTET50042/

ステロイド薬というとスポーツ選手のドーピングをイメージして危険な薬だと誤解されたり、「CTという輪切りの写真」と説明すると「体を輪切りにされる検査」と勘違いされることがある
というような例がいくつか載っていました。

用語をわかりやすく患者さんに説明するというのは実に難しいと日々感じています。
言葉自体が患者さんにとっては馴染みがない場合もあれば、たとえ言葉を知っていたとしても背景知識の違いや文化的な違いから言葉の解釈が異なって意図が伝わらない場合もあります。
そして医者にとっては医療現場にどっぷりつかっていると、どこからが医療従事者じゃない人でもわかりやすい言葉なのか、という境界も見えづらくなってくるので厄介です。。


最近私が「しまった」と思ったのは「耐性」という言葉を使ったとき。
「抗菌薬は誤った使い方を続けると菌の耐性ができてしまう」という話をするときに、私は菌がその薬に抵抗する性質を獲得するという意味で話したのですが、患者さんはご本人が細菌に対して耐えられる力というように解釈したようです。

すぐに違和感を感じて誤解は解けたのですが、聞いてみると一般用語で「ストレス耐性」という言葉があるから、耐性というと自分が耐え抜いていくというイメージだったとのことでした。
患者さんとの信頼関係を構築するためにも、わかりにくい表現を極力避けていかなければいけないなと改めて気付かせてもらった出来事でした。


他には「これまで大きなご病気をされたことがありますか?」というのも解釈の違いを経験したことがあります。
もう表現が定型文化してこのまま診察の教科書にも載っているくらいよく使われている言葉なのですが、「大きな」の解釈が人によって違くなってしまうんですね。
「風邪」「胃腸炎」を細かく挙げる人もいれば、「何もないです」と断言する人もいます。
そして「何にもない」という人に限って、診察でシャツをあげてもらうとおなかに大きな手術の跡があったり。。
「昔胃がんの手術をしたけど、10年以上前のことだから言う必要ないと思ったよ。」とおっしゃったりします。
既往歴は診察の上でとても重要な情報。
患者さんにとっては、それが重要な情報だという文化・認識がないから、わざわざ初めて会う医者に伝える価値を見出せなかったわけです。
いまでは私は「これも大切なことなので伺いますが、これまで人生で入院が必要なご病気や手術を経験されたことはありますか?」と聞くようにしていますが、これでも聞き出せないことはしばしばありますね。

(ちなみに段落冒頭の質問に対して「これまでなんにも悪いところはなくてね。頭が悪いくらいだねぇあははは笑」というジョークは何十回も聞いたことがあります笑  いまだに何て返すのが正解なのかよくわかりません^^;)


日常のコミュニケーションでさえ難しいのに、医療の場ではなおさら難しいです。専門家としての立場や知識・情報の違いもあり、「医学的に正しいことを誠心誠意やっていれば患者さんには伝わる」という簡単なものではないのです。
その中でも少しでもコミュニケーションがスムーズになるように、わかりやすい言葉を使うべきだと痛感します。


そういう私も人間ドックを人間ドッグとしょっちゅう混同してしまい頭の中で「犬じゃないんだからドックの方だよね」と確認しながら話していたりするので…(>_<)笑
私の医学部同期の女の子はまだ入学したての頃、肺とか肝臓とか臓器の話をしていたときに「内臓っていう名前の臓器はあるの?」と真顔で私に聞いてきていましたし…笑(かなり天然な子なんです。その後医学部はしっかり好成績で卒業してます。)



医者も全く偉そうなこと言えたものじゃないことは確かですね^^;笑


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何にも写真がないのも寂しいので白衣の写真を唐突に載せてみます!



みなさんも病院で勘違いしたりわかりにくくて困った経験があれば教えて下さいね(o^^o)