『茶の民族誌』p243の引用元:同治13年《韶州府志》物産、「羅坑茶等」について(1874) | 船橋市茶文化資料室

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『茶の民族誌』第4章嶺南の茶と民族第5節広東省の茶産地p243

「英徳紅茶」について以下のように引用している。(青字)

「(同治13年、1874)《韶州府志》の物産の項には、管轄下の英徳紅茶について、

茶。産羅坑大铺烏泥坑者,色紅味醇,経宿不变。南华制茶,味甜香濃,以少置為佳。毛茶,出西山。有白毫,苦涩大寒,消暑解热,去積滞。䔲一名皐盧、葉大如掌,以片葉入壶,色味具足。多反苦涩,治咽喉之症。」

ちなみにこの1874年の《韶州府志》の「䔲一名皐盧、叶大如掌、、、」という記述に関しては、出典は()呉震方撰の《嶺南雑記》より転載されたもの。地方志を作る時、きっと沢山の書物を参考したたろうか。

《茶の民族史》の中で広東省の茶について「英徳」、「清遠」、「韶関」の地方茶を述べるのにかなりの頁数を占めている。これらの山間部に住む瑶族が如何に茶と携わっているかについても著者独自の分析がある。

 

私は2019年韶関を訪ねたことがあり、その時、羅坑茶と英徳紅茶の生産者も見学する機会があった。旅報告↓

旅報告はこちらのリンクへ

羅坑茶について

羅坑茶野生茶樹について

乳源瑶族集落と博物館について

 

(追伸20240420:英徳紅茶の始まりは1950年代。当時英徳地方で雲南大葉種の栽培がうまく行き、その大葉種の原料を使って紅茶製造をしたら、予想通り大変よい味の紅茶ができあがった。それが「英德紅茶」の誕生だ。故に広東名茶といったら鳳凰単叢についで必ずでてくるのは「英徳紅茶」である。「英徳紅茶」がその後スター誕生のようにいち早く国際的に有名になった。その背景にさまざまな要素があるが、、、、、、《茶の民族史》の面白いところはそういったスター誕生物語はさておき、清王朝頃の韶州地方志を調べ、「英徳地方は、嶺南地区の入り口のような所で、古くは産地民族の「瑶族」が住み、たぶん原始的な製茶法で茶褐色になった日本の番茶にちかいような茶をつくっていたものと推測する。」(頁243)

 

つまり、この地方は嶺南山脈の南麓に位置し、昔(今も)瑶族の集落があり、古くから製茶をしていて、その歴史史料もあるという記述だ。

 

そして2019年現地調査としてこの地域を訪ね、《韶州府志》に記録されている「羅坑茶産地」の生産者と話すと、この地域に自生する古茶樹が所所にあり、あまりにも険しい山だから昔瑶族しか摘むことができなかったと語ってくれた。

 

観点をかえると、違う世界がみえてくる。

 

『茶の民族誌』は茶について貴重な観点を提供してくれた一冊である。

次回の月茶会は6月2日と3日。前半は『茶の民族誌』を読み、後半はお茶を飲みながら5月の茶旅報告会となる。