俺の胸ぐらをニノが力強く引っ張って唇を重ねてきた。
ノリでするようないつものふざけたキスとは違い、ニノは本気で仕掛けてくる。
その瞬間、背中にゾゾッと走る嫌悪感。
やめてくれって押し返そうかと思ったとき。
頭のなかに映画のフィルムのように走り抜ける映像。ショートフィルムのように滑らかに流れていく。
俺の知らないニノ。
頬を赤らめて照れる顔。
怒ったような顔に、瞳を潤ませじっと俺を見つめる顔。
聞いたことないくらい甘い声で俺を呼んでる。
そして、、、白い肌が火照り俺を煽るように喘ぐ声、俺に愛を囁き高みへと登ってくニノの姿は、、、
俺の忘れた記憶?
「っ、、ん!、、ニノッ!」
映像が流れ込んできて、よくわからないままニノがくれるそのキスに体が反応しそうになって思わず強く突き飛ばしてしまった。
「ぁ、、、ごめ、」
「来るなっ!」
痛そうな顔をしてるニノに近づこうとしたらニノに叫ばれ足を止めた。
ニノへの気持ちまでは思い出してない。
だけど、、頭に残る映像がニノへの想いを変化させる。
「もう、、、俺、、、、ごめん。」
「ニ、、かず、、」
映像の中の俺もニノをそう呼んでた。
見たことない妖艶に恥じらう姿のニノを俺はかずって呼んでたんだ。
確かに、俺の声で愛してるって言ってた。
「もう呼ばなくていいから。、、、リーダー、、今までありがとう。」
そう言って俺の横をすり抜けていくニノにかける言葉を見つけられず、そのままニノはトイレを出ていった。
どうする?俺。
このまま行かせていいのか?
俺の知る限りニノは、辛くても悲しくても持ち前の演技で平気なふりをする。
もし俺とニノが付き合っていたのなら、今のこの状況は多分ニノにとっては俺にフラれた事になるんだろう。
ニノは仕事で会う俺にきっといつもと変わらない笑顔を俺に向けるに違いない。
1人になったら、、1人で泣くのかな。
ぎゅぅっと痛む胸。
この間もこんな痛みがあった。
それは俺の心の奥の方で微かに覚えてるニノへの想いなのかもしれない。
それなら、、俺は今、ニノを突き放したままにしちゃいけないんだ。
やっとトイレをあとにして俺は駆け足で楽屋に戻った。