そして、そういった理念を実現するためには、介護者が利用者をどのように捉えるかにかかっている気がします。
ここで本人本位という、介護者の視点ではなく、利用者の視点に立つことを言われるわけです。
それは当然、座学でも学べますが、認知症の人で何度も同じことを繰り返し訊いてくる人や、暴言や暴力をふるってくる人といった場合の介護では、ややもすると本人本位ではなく、介護者本位になりがちです。
特に「突然叩いてきたんです!」と言ってくる職員がいますが、利用者(人)の言動には基本的に「突然」はありません。
「本人の言動には必ず本人なりの理由がある」・・・介護の鉄則ですよね。
「突然」という言葉は、「意味が分からない」という相手を理解しようとする姿勢を放棄した思考停止状態であり、また原因は本人にあるという、責任を放棄した意味合いがあります。
突然・・・と言っている職員にそのつもりはなくても、無意識的には上記のような放棄した状態なのです。
介護放棄、つまり虐待ですね・・・
無意識なところがやっかいです。
結局、理念を介護に反映させるためには、介護者自身が介護者本位にならないようにすることが大事だと思います。
介護者は利用者の自立支援を図りますが、介護者は自分自身の自律支援も同時に図る必要があるのです。
自らを律する、すなわち「自律」。
セルフコントロールを行い、モラルや倫理を維持・向上させることが極めて重要です。
それが利用者に対して尊厳ある介護につながります。
私は、福祉(介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士)の仕事をひとことで表せば「権利擁護」なのだと思います。
相手には「尊厳」。
自分には「倫理」。
ベクトルが違うだけで、両者は本質的には同じ意味なのではないかなぁと思います。
ですので、私は介護で一番大切なのは、この「尊厳」と「倫理」だと考えています。
介護現場では、これを「理念」として表し、介護に反映させていくわけですね。