感染後、4週間経ってもウイルスが消えない例が続出

 私の同業者が判断に迷った話をご紹介します。

 彼が古くから親しくしている、ある会社の社長から相談の電話があったのは、8月の初めの頃だった。

 会社の女子社員がコロナに感染しました。10日間休職させたが、症状は改善せず、喉の痛みが強くなるいっぽうなので、女子社員の家の近くの診療所受診。発熱外来の受診をすすめられたが、予約が取れず、仕方なく薬局でようやく入手した抗原キットで唾液を調べてみると、コロナ感染陽性と出た。その旨伝えると、かかりつけ医は、カロナールを処方し、しばらく自宅待機で様子を見るように言った。診療所も治療薬がなく、コロナに対しては、お手上げのようであった。

 それから1週間、自宅待機、そして17日目にもう一度自分で抗原検査をしてみると、陰性と出た。

 その旨を勤め先に伝えてきたので、会社の社長はPCR検査を実施して、コロナ感染が陰性であるという証明書を持って来るように伝えた。

 

感染後、3週間後にようやくPCR検査を実施

 かかりつけ医の配慮で、取引先の検査センターに頼み込み、なかなか手に入らないキットを入手、診療所でPCR検査を行ったが結果は陽性と出た。「抗原検査が陰性なのに、なぜPCR検査は陽性に出るのだろうか。しかも、感染後10日経てばたいていの人は社会復帰出来ると言われているのに、なぜ、私の場合はダメなのだろうか」

 彼女の頭の中は、PCR検査への不信感でいっぱいになった。

 そこで彼女は、インターネットで厚労省の情報を必死に検索した。

 

社会復帰は雇用主の判断に従うこと

 厚労省の考えでは

 1. 感染後4週間経ってもPCR検査は陽性に出ることもある

 2. しかし、他の人に感染させる恐れはないので、仕事に復帰しても差し支えはない

 3. ただ、社会復帰に関しては雇用主の判断に従うこと

 これだけの情報を得たが、どう判断すべきなのか、彼女の頭は真っ白になった。

 そこで診療所を訪ね、医学的な見解を再確認することにした。

 担当した院長は、直ぐ検査センターに詳しいデータの提出を求めた。

 その結果、検査センターからは、「PCR検査は、マイナスにならないと陰性という判断はつけられない。被検者の場合は、未だウイルスが体に残っていてそれで陽性に出ていると考えられるので、その場合には、更に1週間後に再検査することが必要」

 その回答にどう判断すべきなのか、また会社出勤を認めても良いものかどうか、主治医からは明確な回答は得られなかった。

 

会社側の回答は、更に自宅待機を求めた

 社長の判断は、PCRの検査が陽性である限り、出勤は無理だという判断を下した。だが、女子社員にしてみれば、厚労省の考え方を信じたい気持ちも強い。なぜならこれ以上休むと賞与をはじめ、勤務上のリスクが大きくなり経済的にも苦しくなる。その結果、社員と雇用者の間がぎくしゃくし始めた。

 そこで、自分の判断が間違っていないかどうか訪ねてきたようだった。

 1) 知人の開業医は直ちに社長の判断を支持したという。その理由は、ウイルスが体に残っている以上感染を起こさない、という保証はない。

 2) これが診療所や病院の場合には、重症患者や免疫力の弱い高齢者が受診していることもあり、出来るだけ感染の危険因子は避けなければならない。

 3) 現在、コロナ感染で、その感染を指定できるのはPCR検査しかない。

 4) その頼りにしている検査がマイナスになるまで、出社は我慢させるべきでしょう。

 

私の考えも同業者と同じです。

 やはり唯一、頼りになるPCR検査の結果を尊重すべきだと思います。

 陽性の間、休職することは本人にとっても、また、この人手の少ない時代、会社にとっても大きなダメージになると思いますが、コロナが完全に治まるまで我慢をしなければならない、今がその踏ん張りどころだと思います。