①感染後、10日後の危険な社会復帰

 

 現在わが国では、コロナに感染後、10日間の経過後は、感染する危険はなく、社会復帰ができる、ということが常識化しています。

 しかし、我々臨床医の立場から感染の状況を見ていると、この「コロナ感染10日後で治癒」という画一的な判断は極めて危険であることがわかっています。

 

②コロナ感染後、3週間後でもPCR検査、陽性の症例

 

 一例を挙げて説明します。

 同じ職場に勤めるB子さんとC子さんは、8月6日、同時にコロナのもらい感染をしました。

 もらう、という言葉を使うのは、同僚のA子さんが感染後、2週間後の出社で2人にうつしたことがほぼ確実視されるからです。

 A子さんは出社直前、PCR検査を実施したようです。

 しかし、その証明書は、会社側では見ていません。

 A子さんが出社してからは、同室のB子、C子の女性は狭い部屋に一緒にいたので、濃厚接触者ということになります。そして、3人が同室で勤務を始めた3日後に、B子、C子両氏が激烈な咽頭痛と、もう一人は、風邪の症状を訴え欠勤。

 すぐ独自に抗原検査を行うと2人とも陽性に出ました。

 それから2週間、B子、C子両氏は会社を休み、自宅待機。その間薬局などで、ようやくの思いで購入した抗原検査キットで検査したそうです。結果は陰性でしたが、2人にうつした、と思われるA子さんは、その後休職して「退職願」が出てきたこともあって、会社側は、これ以上のコロナ感染騒動を鎮めるために、あと1週間の休職を2人に要請したそうです。そして、感染から20日後、翌日から出社するために2人は、会社の要請でPCR検査を実施。その結果は陽性とわかり、再び欠勤を余儀なくされました。

 PCR検査を受ける3日ほど前に、抗原検査を独自に実施した時は陰性でした。しかし、精度の違いがある抗原検査だけでは、ウイルス感染の陰性は証明されなかったようです。

 

③10日以内の治癒宣言は極めて疑問

 

 ほんの一例に過ぎませんが、コロナウイルスBA.5などの変異株が、いかにしぶとく撃退するのは容易でないことは、これでわかっていただけると思います。

 我々がCOVID-19治癒後の患者さんを受け入れる場合に、その絶対的条件は、PCR陰性であることです。

 抗原検査、陰性だけでは、入院を受け入れることはできません。

 この手続きを、ちょっとでも緩めると、たちまち院内にはクラスターが発生し、医療崩壊に陥る危険性がでてきます。

 とにかく、マスコミ等の報道などで伝えられている以上に、コロナ感染の勢いは一向に収まらないのです。

 我々医療関係者は、いつ感染するかわからない恐怖の中で患者を診ているのが実状です。

 

④感染をこれ以上拡大させないためにもPCR検査の実施を大幅に自由化することが急務です

 

 どこの先進国よりも、わが国のPCR検査の普及は遅れていると言われています。なぜPCR検査を積極的に国民は受けられないのか、不思議でなりません。

 現在、1日20万人以上の感染が続いている感染率世界一の汚名を解消するためにも、その感染源を突き止める最小限度の武器であるPCR検査を、せめて日本全国の医療機関で、直ちに実施できるようにすることが、国民の命を守る第一歩だと信じて疑いません。

 国会議員の先生方、あなた方は選出してくれた地方の住民の代弁者じゃないですか。もう少し地域の選挙民のためにも、このコロナ戦争の最前線に立って戦ってくれませんか。

 それが患者や医療関係者の切望でもあるのです。

 命をかけてお互いにがんばりましょう。