ドクター志賀のとっておき情報 No.154

 

テーマ① 家さえあれば生きられる

テーマ② 年を取れば取るほど不幸せになる社会

 

独居になって不幸が始まる

 Bさんは今年88歳になりますが、ご主人と死別してから生活が急に苦しくなりました。2人で自営業をしていて国民年金でしたが、何とか月7万円の借家住まいをしてきました。夫がいなくなってから、Bさんの年金は遺族年金も併せて月10万円です。これでは家賃を払うと殆どお金がなくなります。生活費の足りない部分は夫のわずかな生命保険、それに自分の保険を解約したお金を、月々の食費と公共料金に充ててしのいできました。

 

持病の悪化が生活苦に拍車をかけた

 不幸なことに、Bさんは持病の肝臓疾患が悪化して、入院生活が始まりました。手を尽くして保険の支払いを少しでも安くしようとしたのですが、年金が10万円あるということで、役所もなかなか自己負担の減額をしてくれません。

 Bさんの保険は、国保の1割負担です。何度も担当者にかけあって自己負担を「区分2」に減額してもらいました。

 それで、病院の窓口の支払いは、ようやく10万円になりました。この減額手続きが失敗すると、月々の自己負担は14~15万円になります。とても、Bさんの年金では家賃と入院の両方の経費を支払うことは出来ません。

 

家賃の滞納が始まって居場所がなくなる

 家賃の7万円、入院の自己負担の10万円を、年金10万円で支払えるわけがありません。しかし、借家を解約することはとても出来ません。

 亡くなった夫の遺骨と位牌をが墓にも入れられず、そのまま6畳一間の仏壇に安置したままなのです。止むを得ず、まず家賃を払いました。そして病院に一日も早く退院できるように治療してほしいと懇願しました。しかし、この願いも空しく、Bさんの病状は悪化するいっぽうです。

 肝硬変がかなり進行していて、血中アンモニアの数値が上昇し、肝性脳症を発症していますから、とても早期退院は出来ません。

 今度は病院の医療費の自己負担の滞納が始まりました。

 こうしてBさんは、現在も家賃と医療費の滞納に苦しみながらベッドの上で闘病生活を送っています。

 

家賃のかからない部屋さえあれば生きられる

 ヨーロッパでは介護サービス付き住宅が高齢者のために用意されております。健康保険が日本ほど普及していないアメリカでさえ、貧困者に住宅を無料で提供するハウジングファーストという制度の試みが行われている州もあります。また、1マイル(1.609km)の街づくりと称して、病院、介護施設、役所、消防、それにスーパーなどを街の中心に置き、それからちょうど1マイルの円を描き、住宅を造る計画を立てた州もあります。

 但し、住宅は老人と若者のルームシェアが条件で貸し出します。

 わずか1マイルの距離ですが、ゴルフ場のカートのような軽自動車で買い物や役所への手続きなどに出掛けられるように工夫されています。

 わが国でも、今年から75歳以上の老人が更に800万人増えるわけですから、老人が年を取るほど不幸にならないように早急に手を打たなければならない時代がやってきました。

 

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