゚Д゚) < Facebook (フェイスブック) | インド映画噺

インド映画噺

主に映画の、主にインド映画の、あとその他の小咄を一席。
↓こちらも参照くださいな。
インド映画夜話
http://yuurismo.iza-yoi.net/hobby/bolly/bolly.html

Facebook (フェイスブック) 2012年 149分
主演 スウォタントラ・プラタープ・シャー & ジャラナー・ターパ
監督/台詞 スーラジ・スッバ "ナルボ"
"今の内に、笑えるだけ笑えばいい…"

 

 

 シンガポールに住むNRN(在外ネパール人)のユーディンは、フェイスブックで知り合った恋人サンスクリティと約束して彼女の住むネパールへの帰国を望んでいたものの、ネパール製ハンドメイド・ビジネスを拡大させるために息子にアフリカへ行って欲しい母親ヤソーダラーとは衝突ばかり…。

 しかし、ついに折れた母が用意した航空券でネパール帰国が叶ったユーディンは、叔父ハリスの世話になりながらサンスクリティと直にデートできるようになって大喜び。
 その日から、叔父の会社手伝いを無視してサンスクリティとのデートばかりのユーディンだったが、ある日の映画デート中に突如ユーディンが失踪。驚くサンスクリティは、残されたユーディンのスマホと共にハリスと警察に駆け込むが…。
「貴方は、あのビシュマ・レグミ氏の一人娘ですね」
「はい…」
「ユーディンと知り合って、どれくらいになりますか?」
「8~9ヶ月くらいです」
「なるほど。どこで知り合ったのですか?」」
「…フェイスブックです」
「フェイスブック…ネット上での知り合いだったのですね…」



主な登場人物 ()内は役者名
ヤソーダラー 夫に先立たれながらも、30年間ネパール製ハンドメイド・ビジネスを拡大させてきたシンガポール在住のキャリアウーマン。ユーディンの母親。
ユーディン・プラタープ・ラーナー (スウォタントラ・プラタープ・シャー) 本作主人公。フェイスブックでつながる恋人サンスクリティとの約束で、ネパール帰国を目指すシンガポール在住のネパール人。ヤソーダラーの息子。
サンスクリティ (ジャラナー・ターパ) 本作ヒロイン。フェイスブック上でのユーディンの恋人。外国暮らしの彼となかなか会えずにいて、ようやくネパールに来たユーディンとの幸せな日々を過ごしていたものの…。
ハリス・ターパ ユーディンの伯父にあたる実業家セレブ。ネパールに帰国したユーディンの世話を引き受ける。ユーディンに甘い。
サンスクリティの母
ビシュマ・レグミ サンスクリティの父。車椅子生活の身。
ボージェー ハリスの部下。
ネパール警部 DSP(=Deputy Superintendent of Police=警察副監査官?)。ユーディン失踪事件担当。
DIG 警察官。ハリスと知り合い?
ディル・バーイ 誘拐実行犯のリーダー。"バーイ"は"兄貴"の意?
シッダールタ 誘拐犯の1人。
ビベーク 誘拐犯の1人。彼らのまとめ役?
キショール 誘拐犯の1人。事件途中に大怪我を負う。
ラージュ 誘拐犯の1人。
リトゥ・ネパール 誘拐犯からの電話を逆探知した時に登録されていた、電話の持ち主の名前。ネパール警部の妻。名前のみ登場。
ウメーシュ・カールキー 誘拐犯の使う電話の登録者名。
マヒ 誘拐犯の1人。

 

 

挿入歌 Yetai Katai

 


ニコニコ 日本公開作「道端の花 (Batomuniko Phool)」のスーラジ・スッバ "ナルボ"監督による、青春ラブロマンス…と見せかけて二転三転するサスペンス・ネパール映画。

 また「道端の花」みたいな、説話的な悲恋劇かな…と思っていたら、始まりこそ青春恋愛ものみたいなお話しながら、主人公ユーディンの誘拐事件からどんどん話がきな臭くなり、いちいち斜め45度で人を睨みつけてカッコつけるネパール警部の捜査の中で、登場人物たちの善悪の立ち位置がコロコロ変わって行く予測不可能なサスペンス劇に昇華させていく語り口は見事。
 その事件の背景に横たわるネパール社会の暗部の描き方も効果的で、2010年公開の「道端の花」から「テーマ」と「物語」と「登場キャラクターの活躍」のブレンド具合がかなり進化している感じもする。まあ、高層ビル建築現場の骨組みに座ってデートする主役2人とか、ネパールのサンスクリティに会いにいけない悲しみを海の波を全身に浴びて表現するユーディンとか、感情表現やカッコつけのハッタリスタイルが妙に垢抜けないとかあるけれど、それはいつも通りという事にしておこう…。

 ある意味では主人公ユーディン演じる新人スウォタントラ・プラタープ・シャーの映画デビュー(?)を飾るお披露目映画という側面もあり、もう1方の主人公であるサンスクリティ演じるベテラン女優ジャラナー・ターパの人気と実力を魅せつけるプロモ映画として見ることも可能か。
 そのジャラナー・ターパ(旧姓バジャチャルヤー)は、1980年第五州(現ルンビニ州)ピュータン郡ピュータン(・カランガ)生まれ。
 1996年の「Daijo」で映画&主演(?)デビューして、以降主演女優として活躍。1998年の「Dharam Sankat」で大きな評判を勝ち取り、「Takdir」で2008年度フェム・ボタニカ・KTV映画賞の主演女優賞を、「Ma Timi Bina Mari Halchhu」では2009年度KTV映画賞の主演女優賞をそれぞれ獲得している。芸歴20年を越えた2017年には出演作「A Mero Hajur 2」で監督デビューも果たし、続いて2019年に続編「A Mero Hajur 3」で2本目の監督を引き受けるとともに原案も担当。娘のスハーナー・ターパを「A Mero Hajur 」「A Mero Hajur 2」でプロデューサーに就任させてから、「A Mero Hajur 3」にて主演&プロデューサーに抜擢させている(さらに、続く2022年の「A Mero Hajur 4」でも娘を主演&プロデューサーに就かせている)。

 前半のユーディン誘拐捜査の段階では、いちいち大仰な効果音とか重々しい芝居とかもあって一昔前の思わせぶりサスペンス映画の様相ながら、真犯人が明らかになる衝撃展開からはそれまでに描かれた人間関係がより多重に絡み合い、それぞれの思いの相互ディスコミュニケーションが浮かび上がる事で、どうしようもない現代社会における人と人の関わり合いの悲しさ・虚しさが前面に現れていく。映画後半も前半と同じように思わせぶりな演出が出てはくるものの、そこに現れるそう言った感情の渦が何倍にもなって画面に現れてくるので、話が進めば進むほど目が離せなくなってくる。観客の思いを裏切る展開も心得たもので、素直な王道展開とサスペンス的な裏切り展開が並行して進行する様はサスペンス劇が特に進化する(?)ネパール映画の真骨頂でもありましょうか。
 10代ですでに結婚・子育てしつつスター街道爆進していたジャラナー・ターパの喜怒哀楽のスターオーラを存分に浴びせられるジャラナーというスターを見るための映画でもある本作。そこに描かれる感情的起伏の大きな落差は、何は無くとも必見!

 


挿入歌 Timi Lai Desakeko Mutu

 


受賞歴
2013 National Film Awards 主演女優賞(ジャラナー・ターパ)

 

 

(。・ω・)ノ゙ Facebook を一言で斬る!
「ネパール人はわりと映画館で静かに映画を見るのね…と思った所に、姿を消したユーディンを心配するサンスクリティが堂々と携帯から電話をかける姿に『あ、それは気にしないのかい!』というギャップ!?」


↓こちらも参照くださいな。
インド映画夜話