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ザ・フェイス (Yevadu) 2014年 165分
主演 ラーム・チャラン & エイミー・ジャクソン & シュルティ・ハーサン
監督/脚本 ヴァミシ・パイディパリー
"この顔…お前は一体…、誰なんだ!?"

 

 

 ヴィシャーカパトナム(通称ヴァイザーク。アーンドラ・プラデーシュ州最大の経済都市)に住むディープティは、地元公権力をも支配するヴィル・バーイに言い寄られた事から、恋人サティヤとの逃避行を選ぶ。
 しかし、怒るヴィル配下のギャングたちが彼女を追跡してディープティと彼女をかばう両親をそれぞれに殺害! その現場で、彼女を守ろうとして殺されたはずの恋人サティヤは、緊急搬送された病院にて奇跡的に一命を取り留めたものの、昏睡状態が続く彼は、整形手術の権威シャイラジャー医師の手によって全身の火傷治療手術を受ける事に。

 10ヶ月後、手術は成功し意識を回復させたサティヤだったが、彼の顔はまったくの別人になっていた…その翌日、彼の姿は病院から消え、密かにヴィシャーカパトナムの街中に……。

 

 

挿入歌 Pimple Dimple (ピンプル・ディンプル)


ニコニコ テルグスターのラーム・チャラン主演による、テルグ語(南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語)アクション大作。

 テルグ語映画界の2014年度最高売上を記録した傑作で、タミル語(南インド タミル・ナードゥ州の公用語)映画で活躍している英国人女優エイミー・ジャクソンの、テルグ語映画デビュー作ともなった(その役づくり、テルグ語の修得には相当な準備期間が設けられたそうな)。
 一部批評家からは、本作の内容が1997年のハリウッド映画「フェイス/オフ(Face/Off)」や、2005年のテルグ語映画「Chhatrapati」、2006年の「Vikramarkudu(テルグのヴィクラマルカ王)」と似ていると指摘されたものの、監督はこれらの映画からの影響を否定している。
 後にタミル語吹替版「Magadheera」、マラヤーラム語(南インド ケーララ州の公用語)吹替版「Bhaiyya My Brother」、同名のヒンディー語(インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語)吹替版も公開。
 日本では、2017年のSIFFJ(南インド映画祭)にて「誰だ!」のタイトルで上映。2020年と2023年には、indoeigajapan主催による自主上映で英語字幕版も上映されている。そして、2024年に「ザ・フェイス」の邦題で一般公開。同年のIndoEiga Japan主催のラーム・チャランお誕生日記念上映作としても上映。

 物語は大きく3つに別れており、冒頭のサティヤとディープティの逃走劇(その分量、約15分。主役ラーム・チャラン初登場までだと17分半くらいある)、"ラーム"と名を変えたサティヤのリベンジムービーの前半、そしてラームの顔にまつわるチャランの抗争劇が展開する後半の3部構成。
 3つのお話が、それぞれに微妙に関わりを持って舞台となるヴィシャーカパトナムで展開される、映画構成の妙がパズル的にも楽しめる1本で、3部作映画を一挙に見せつけられるようなボリューミーな映画でもある。

 本作が初共演となると言うサティヤ役のアッル・アルジュンと、ラーム&チャラン役のラーム・チャラン(明らかに意図的な役名が、ややこしいぞ!w)の顔(とか骨格とか)が、そこまで似てるかどうかはさておき、顔を変えた復讐者のリベンジアクションがわりとトントン拍子にさくさく進む爽快さで「いつものテルグリベンジ映画か」と油断していると、インターバル直前に急に話の方向が大きく変わり、映画そのものも同じアクションながら社会派要素を入れたギャング抗争ものへと変化する、その映画としての変身っぷりがスンバラしい。
 カメオ出演と言う冒頭のアッル・アルジュンとカージャル・アグルワール(ディープティ役)も、カメオと言うわりには出番が多く、その活躍をしっかり堪能出来る親切設計。カージャルなんか、ちゃんとラーム・チャランとのミュージカルシーンまで用意されて、完全にメインヒロインの1人じゃナイデスカ!!(カメオ出演とされた事での、出演料がどうなったのか気になるゾ!!w)

 監督&脚本を務めたヴァミシ・パイディパリーは、1979年アーンドラ・プラデーシュ州ニルマル県(現在はテランガーナー州所属)のヴェラマ家系(アーンドラ・プラデーシュ各地にいる地主家系。最古の家系は12世紀まで遡り、ゴールコンダ王国指定のザミンダールとして17~18世紀頃に勢力を拡大。その一部は王族に匹敵する勢力を誇った)生まれ。
 父親所有の映画館で映画に興味を持ち始め、長じて商学の学位を取得し、さらにコンピューターアプリケーションを修了。一時期はソフトウェア業に従事していたものの、02年のテルグ語映画「Eeswar」の助監督に転向して映画界入り。数本の映画で助監督を務めた後の07年に「Munna(ムンナ)」で監督&脚本デビュー。興行的には奮わなかったものの、続く10年の監督作「Brindavanam(ブリンダーヴァナム屋敷にて)」が大ヒットし、フィルムフェアのテルグ語映画監督賞ノミネート。本作は、これらに続く3本目の監督作となる。

 シュルティ演じるエイミー・ジャクソンや、マンジュー演じるシュルティ・ハーサン、さらに冒頭部のヒロイン ディープティ演じるカージャル・アグルワールと並んで、第4のヒロインとも言える、シャイラジャー医師を演じたのは、1958年マドラス州マドラス(現タミル・ナードゥ州チェンナイ)のテルグ系家庭に生まれたジャヤシュダー(・バラチャンドゥ・カプール。"カプール"は結婚後の姓。生誕名スジャータ)。
 叔母にテルグ語映画界で活躍する女優兼監督ヴィジャヤー・ニルマーラーがいる。母親も、子供の頃に子役で映画出演していた事があるとか。妹スバシーニーも映画女優として活躍している。
 叔母の活躍を見て映画女優を志し、父親の反対に遭うも当の叔母の協力で72年のテルグ語映画「Pandanti Kapuram」にて12才で映画デビュー。その後、同じ名前で活躍する女優との競合を避けるために"ジャヤシュダー"に改名。すぐに映画界で頭角を現して73年には「Sollathaan Ninaikkiren」でタミル語映画デビュー。75年のテルグ語映画「Lakshmana Rekha」で主演デビューし、"サハージャ・ナティ(自然体の女優またはリアリティあふれる女優の意)"と呼ばれるようになる。
 本作で、エイミー・ジャクソンは初めてのテルグ語演技に相当苦労したそうだけど、ジャヤシュダー自身もタミル語環境で育っていたために、若い頃はテルグ語の読み書きが出来ず、主演女優時代には台詞を発音してもらってそれを全部暗唱して演技してたと言う逸話もあってトンデモね!!
 76年の「Jyothi」でフィルムフェア・サウスのテルグ語映画主演女優賞、ナンディ・アワード主演女優賞を獲得するのを皮切りに、数々の映画賞・功労賞を受賞する。以降、75年の「Rasaleela」でマラヤーラム語映画に、77年「Aaina(鏡)」でヒンディー語映画に、85年「Nee Thanda Kanike」でカンナダ語映画にそれぞれデビューしつつ、テルグ語映画界を中心に大活躍し、シュリーデヴィーと並び称される人気を獲得して行く。しかし、その過密スケジュールと父親の干渉、映画界の女優の扱い方へに反発し、70年代からフェミニズム運動に積極的にも参加する映画女優としても名声を博していた。
 その人気から、09年のアーンドラ・プラデーシュ州議会選挙にてセカンダラバード選挙区の議会議員に選出されてもいた(が、多大な労力を費やされたにもかかわらず...だからこそ?...結局すぐに女優業に戻っているよう)。

 顔を変えた主人公の活躍を縦軸にして、舞台ごとに変わるヒロインの水増し感もスゴいけれど、ぶつ切り感もありつつ、その分それぞれの展開の濃度がどんどこ増して行って、ヒーロー ラーム・チャランの爆発的なアクションの数々や鮮やかな色彩世界、ヒロイン以上に水増しされる悪役の顔ぶれ、ミュージカルの派手派手さにも多彩な魅力が付加され続けて行く。3つの物語それぞれにお客の見たいものをあます事なく見せて行く姿勢、見習いたいモンですネ。


挿入歌 Oye Oye (ああ [貴方を見てるとどうにかなっちゃいそう])

*シュルティ演じる、英国人モデル エイミー・ジャクソンのセクシー&クールなビキニショット!!

 

 

 

(。・ω・)ノ゙ 誰だ! を一言で斬る!
「サティヤとディープティの逃避行中のバスの乗客、伏線のわりにはシーンごとに客の配置が変わっ…drftgyふじこ」


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