読書感想193 小説8050(現代社会・小説) | フリスビーの読書感想

フリスビーの読書感想

実際に読んだ本の感想を中心に、ゲームネタ、将棋ネタ、競馬予想などを載せています。

「小説8050」

(林真理子著 新潮社)

 

「8050問題」、聞いたことがおありでしょうか?

これは

 

80代の親が50代の引きこもりなどの息子の面倒を見る

 

といったことを指す言葉です。

最近は引きこもりの方などが多く、社会問題となっています。

それがタイトルにあった作品ということもあり、読んでみました。

 

本書の中心人物は、歯科医をしている大澤正樹。

20歳になる息子の翔太が中2の頃から引きこもっています。

そんなある日、近所の高齢女性が亡くなるのですが、その人の家の周りには警察官などが集まっています。

「母親が亡くなり、所有権がなくなった家にいる息子を強制退去させる」

ということが目的で、結果的にその50代らしき息子は退去させられます。

その人がどこに連れて行かれたかは書かれいていません。

ただそれを見た正樹は

「これは30年後の自分たちかも…」

という不安感を覚え、息子を立ち直らせようと行動を起こす決意をします。

そこからの話は壮大で、様々なシーンで心身ともに揺れ動きます。

リアルな問題の作品ということで、後半は非常に興味深かったです。

 

 

8050問題、僕も非常に気になっています。

特に中高年ひきこもりが増えている、という話はテレビでたまに放送されています。

本書の内容は結果的に大問題に発展するのですが、そこまで行かなくても

「なんとかならないのかな?」

という気持ちにはなりました。

ですが物事を強制的に動かそうとすると、けが人はおろか、死者も出かねないだけに、デリケートな問題という気持ちもあります。

 

難しい問題ではありますが、作品としてはうまくまとまっていました。

「本当に大丈夫か?」

というようなところでも絶妙につなぎ、そして結末を迎える。

殺人事件ものではありませんが、ハラハラしました。

本作はフィクションではありますが、現実に問題になっているテーマの作品です。

この問題に関心のある方は、ぜひ読んでみてください。

 

 

視線が違う感想

本作はハードカバーで重く、運びづらかったです。

小説を読むならやはり文庫がいいですね。