「小説8050」
(林真理子著 新潮社)
「8050問題」、聞いたことがおありでしょうか?
これは
80代の親が50代の引きこもりなどの息子の面倒を見る
といったことを指す言葉です。
最近は引きこもりの方などが多く、社会問題となっています。
それがタイトルにあった作品ということもあり、読んでみました。
本書の中心人物は、歯科医をしている大澤正樹。
20歳になる息子の翔太が中2の頃から引きこもっています。
そんなある日、近所の高齢女性が亡くなるのですが、その人の家の周りには警察官などが集まっています。
「母親が亡くなり、所有権がなくなった家にいる息子を強制退去させる」
ということが目的で、結果的にその50代らしき息子は退去させられます。
その人がどこに連れて行かれたかは書かれいていません。
ただそれを見た正樹は
「これは30年後の自分たちかも…」
という不安感を覚え、息子を立ち直らせようと行動を起こす決意をします。
そこからの話は壮大で、様々なシーンで心身ともに揺れ動きます。
リアルな問題の作品ということで、後半は非常に興味深かったです。
8050問題、僕も非常に気になっています。
特に中高年ひきこもりが増えている、という話はテレビでたまに放送されています。
本書の内容は結果的に大問題に発展するのですが、そこまで行かなくても
「なんとかならないのかな?」
という気持ちにはなりました。
ですが物事を強制的に動かそうとすると、けが人はおろか、死者も出かねないだけに、デリケートな問題という気持ちもあります。
難しい問題ではありますが、作品としてはうまくまとまっていました。
「本当に大丈夫か?」
というようなところでも絶妙につなぎ、そして結末を迎える。
殺人事件ものではありませんが、ハラハラしました。
本作はフィクションではありますが、現実に問題になっているテーマの作品です。
この問題に関心のある方は、ぜひ読んでみてください。
視線が違う感想
本作はハードカバーで重く、運びづらかったです。
小説を読むならやはり文庫がいいですね。