姫野カオルコ「彼女は頭が悪いから」★★★★★ | テレビ・本・映画・観劇・観戦等日記

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+:+1/2星|-:-1/2星

姫野カオルコ「彼女は頭が悪いから」★★★★★


大変面白かった。一気に読んだ。大傑作である。

登場人物は、被害女性とその出身大学の女性教授以外、全員どうしようもないクズである。女性教授が東大生の母親に示した「示談条件」が、事件の問題の本質を見事に表していて痛快であった。この著者は人間の心理状態の描写(どんなメール文を返すか等など)が秀逸である。

 

フィクションと断っているものの、真実であると思う読者もいるので、事件関係者から著者にはクレームが来るのではと思う。そのことも引き受けた上で、こう危険な「フィクション」を書いた著者の勇気に感心した。

 

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[2019年2月5日追記]

著者にはクレームが来るのではと予想した通り、東大教授のクズからクレームがついた。

 

東大生強制わいせつ事件で議論紛糾――小説『彼女は頭が悪いから』が果たした役割とは?

http://bunshun.jp/articles/-/10184

  これは要約であり全容がわからなくてもやもやしていると全文書き起こしがでた。

  東大新聞さんグッドジョブ!

「姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』ブックトーク」レポート ~「モヤモヤ」とともにを振り返る~

http://www.todaishimbun.org/himenokaoruko_booktalk20190205/

 

≪瀬地山さんによると、東大生たちは竹内つばさらの描写にリアリティーを感じなかった。「ラブレターを手紙で出すやつなんていないし、東大の女性は1割ではなく、2割。三鷹寮を『広い』と書いたことについては、ふざけるな、と。想像を絶する言葉です」。瀬地山さんは「事実と反する」ことを列挙し「東大生はぴかぴかつるつるで挫折感がないとか、屈折していないというふうに書かれていることに、僕も含めてみな違和感を覚えた」と力説した。東大生も挫折し、引け目を感じていると説明し、こう付け加えた。「この本は、東大生をひとまとめにして貶めるということ以外は成功していないと言う女子学生もいた」≫

 

瀬地山角教授とそのまわりの東大生は、この小説を読む前から感情的な反感を抱いていて、寮の広さが事実と違うとか、女子学生の割合が違うとか、どうでもいい些末な「事実誤認」をあげつらって、小説をくさしているだけである。誰も頼んでいないのに、誰もあなたが東大の代表だなんて思っていないのに、自分で勝手に東大を背負ってしまってバカみたいである。もうちょっと東大を客観視して読めないのか。東大が自慢で好きなんだね。

 

このイベントの控室から瀬地山角教授はずっと姫野カオルコさんに怒っていたという。どうして怒っていたか、どうしてゲストに怒りをぶつけるような行動をしてしまったか、瀬地山角教授は自分に問い直したほうがいい。ジェンダー論で着飾っていても、それがあなたの偽りのない本質的な感情なんだよ。はからずも、この小説は瀬地山角教授のクズな本質をあぶり出してしまった。この小説の力はすごい。

 

今後、瀬地山角教授があちこちでどんな醜態(それが彼の本質)を晒すか注目である。

 

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[2024年5月12日追記]
2018-12-27
現実は小説より奇なり〜東大ジェンダー論教授のマンスプレイニング公開処刑現場

 


これ、ある方のフェイスブック投稿なのですが、めっちゃ面白いレポートなんで、読んでみて!そして、是非感想コメントを。

#おちんちんよしよしあるある をリアル体現する現場!

「おちんちんえらい」を無自覚に垂れ流す、マンスプレイニング親父の公開処刑現場。現場に居合わせたかったなぁ~

こんな「現実は小説より奇なり」を地で行く現場、そうそうないよ!
 

東大生5人が起こした、強制わいせつ事件を題材にした、姫野カオルコさんの小説、『彼女は頭が悪いから』を、当の東大でブックトークした、その現場で起こった、東大教授によるマンスプレイニング現場!
 

その東大教授が、ジェンダー論の教授ってとこがまたまたブラックジョークなんだが…
 

ある方の投稿から、許可を得てコピペ!
 

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【姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』ブックトーク@東大駒場 瀬地山角フェスティバル!!!】
登壇者
姫野カオルコ(作家)
小島慶子(エッセイスト)
島田真(文藝春秋、姫野さん担当編集)
林香里(東京大学大学院情報学環・教授、MeDiメンバー)
瀬地山角(東大教授、ジェンダー論専門)
大澤祥子(ちゃぶ台返し女子アクション)

姫野カオルコさんが、2016年に起きた、5人の東大男子学生による1人の女子大学生への強制わいせつ事件を題材に著した小説『彼女は頭が悪いから』について、当の東大で企画されたブックトーク、わたしもこの本を読んで、この社会の女性蔑視、男性同士の馴れ合い文化、強者なら弱者を人間扱いしないでいいというメンタリティ、マッチョなマウンティング文化などについてすごく思うところあったし、若い女性や男性にはこういうことが世の中にはあるのだということを知ってほしいと思ったのですすめまくってるし、これは姫野さん本人からこの本について聞けるんなら行くしかない!とすごーく楽しみに行ってみた。

すると!事態は、予想のナナメ上をいくものすごい展開に!!!
 

そもそも最初の登壇者紹介から姫野さんが「今日はダマされて連れてこられたんです~~、少人数でちょっとお話ししましょ、って感じかと思ったのに…」と冗談めかしながらもめちゃくちゃ及び腰。ちなみに200人?くらい入る教室が満席、立ち見も出ていた。

紹介が、東大でジェンダー論の講義を一手に引き受けておこなってらっしゃるという瀬地山角さんまできたとき、姫野さんが「なんか~、瀬地山さんが~、控え室でも、最初っから怒ってはって~、挨拶しても怒ってはって~、小島(慶子)さんが『この近くの保育所に子ども預けたりしてて駒場懐かしい』とか言ってはっても、そこに保育所があったことにすら怒ってはるかんじで~」と笑いながらおっしゃって、会場は誇張しての冗談だと思うからどっと湧いたわけだが。

主催者の林香里さんからは、この企画の趣旨説明「この機会に東大という記号について考え、東大の弱さというものがあるなら、そのことについて考えて発信していくべきなのでは、特に東大の女子学生にも伝えたい」があり、このかたはわたしと問題意識が同じだなと感じた。

ところがである!

瀬地山氏、発言の番になったら、この本の「ファクトチェック」を始め、「三鷹寮はあんな狭いのになぜ広いって書いたんですか」は笑いになったからまだいいとして、「女子学生が1割って書いてありますけど、実際は2割ですよ!」とか(圧倒的少数であることに変わりはないじゃんと思っちゃった)、「東大生は挫折を知らない、みたいな書き方ですけど、みんな苦労してますし、僕だって挫折してますよ!」って、まあ大変なことあったんだろうけど、あんたのことは知らんわ、これ小説だし。と思った。彼の指摘は「リアリティを感じられず、東大生はこんなんじゃない!と思った時点で東大生はこの小説に入り込めなくなってしまう、拒否感が出てしまうから彼らに届かない。挫折を味わって屈折してああいう犯行に及んだっていう話にしたほうが、東大生にもわかってもらえたはずだ」みたいなので、あたしゃ「別に東大生に共感させようと思って書かれた本じゃないでしょ」と思ったyo。

それをふつうのテンションで言えばまだわかるけど、なんか知らんが、終始めっちゃ怒りモードで不機嫌全開で、誰かツイッターで指摘してたけど、あれは「俺は不機嫌なんだから、みんなでおれの機嫌をとれ!」に見えるよ。

ジェンダー論の専門家が、「自分のホームである東大で、男性で教授」の自分が、「外部から招いた、アウェイ状態の、喋りが専門の仕事ではない、女性の作家」を相手にあの威圧的な態度、しかも「俺らは中にいるから東大はそんなんじゃないってわかってる、外からテキトーなこと言うなよな」と説教する調子で、何かの冗談かと思いました。

ドッキリで「はーい、みなさーん!こういう態度はマッチョなマンスプレイニングで、家庭内ならDVになりますし、社会においても適切とはとてもいえませんね~~!こういう態度を取らないように気をつけましょう!」ってなるのかな~~、ならないか~~、と思ったレベルでした。
 

んでさー、アータ、ジェンダー論の専門家なら、この小説の中で、というか、この事件の中で、女性が酷い目に遭った、ということについて、社会的、構造的な背景にはこういうことがありますね!とか(東大について触れるのが辛かったら、一般論でいいから)解説すればいいのに、そういうのひとこともなし。

まさに、林香里さんが「東大という記号」について、社会的な考察を、この事件、この本を契機にやってみましょう、って言ってんのに、
「東大という記号が出てきた途端に、東大という記号にメチャ反応してしまい、東大という記号にからめとられてしまい、“東大という記号について考える“という客観的な行為ができなくなった人」
の姿を、はからずも見せてくださった瀬地山角さん、そういうの、わたしの大好物な話です、ありがとうございます!!!

このブックトーク、映画にしたい!

すごーくシブいコメディができるぞーーー!!!

文藝春秋の島田さんは、さすがプロの本読みなだけにコメントがまともで、しかも大人で、面白かった。
「いや、あれを読んだ人は、東大生がみんなこんなだ、とは別に思わないと思いますけどね…^_^」
(会場、同意の笑い)
(瀬地山氏、苦笑しながら「いやいやいやいや…)」
 

そんなひどい合間に、「ちゃぶ台返し女子アクション」の大澤祥子さんから、学生向けの「性的同意を確認するのはとっても大事だよ!」というパンフレットやワークショップの紹介があり、これはほんと素晴らしく、わたしも配りまくりたいと思ったが、本来このブックトークはそういう趣旨で企画されたんだよね?と我にかえると同時に、「性的同意の大切さは、もちろん瀬地山先生のジェンダー論の授業でも強調されていますね」瀬地山「もちろんです!」とかなって、フランスのコメディ映画みたーい、って思った。
 

そして、終わった後友だちと話しているうちに気づいたのは
 

瀬地山さんは、「僕たちの東大をわるく言うな!“貶めるな“!僕たち東大生はそんなんじゃない!」という趣旨にとれることを怒りまくりながら言っていたし、そういう趣旨の男性らしき東大生のツイートも散見する。

で、これは既視感があるぞ?、と思ったら、
「大日本帝国はそんな野蛮なことしてない!僕たちの日本をわるく言うな!“貶めるな“!僕たち日本人はそんなんしゃない!」という、慰安婦問題を扱うと不機嫌になる人たち、と同じだと思った。
 

共通点
・女性が性被害に遭っているわけだが、被害者の立場に立つ視点が抜け落ちている
・資料やファクトの正しさばかりを問題にしたがる
・自分たちの帰属している集団がけなされていると即断する、つーか、誤解する
すごく残念なかんじ。

しかも会場でもツイートでも、そう言ってるのは男性のみ。
「東大生だろうがそうじゃなかろうが、人間のことを人間として扱おうね!!!」
というシンプルなメッセージが、「東大という(あるいはその他、人に権威を感じさせる)記号」がからむと全然伝わんなくなる、ということがよくわかりました。
「東大の名誉を守りたい!」一心で、怒りもあらわにがんばった人が、一番、「東大の名誉」にとってマイナスな振る舞いをし続けてしまった、という面白い話でした。
本人たちだけが気づいてないところも、痛い…。

ちなみに、このブックトークのテーマは「東大の名誉」ではなかったです、特には。

あ、「東大の名誉」のために付け加えておくと(笑)、質疑応答のときに、東大の教員のかたが「この小説についてはリアリティ追求は大事なことではない。ただ、5人の東大生が性暴力事件を起こしたということは事実であって、それをみんなで考えるのは意義深いことだ。あまり文学を読んだことがない人は、何か文学論を読んでみては。」という趣旨のことを言って、会場から拍手が起きた(笑)
わたしも救われた。
わたしが、客観視のできる瀬地山氏だったら、この瞬間、恥ずかしくて死亡したと思う。
 

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彼女は頭が悪いから (文春e-book) Kindle版
姫野 カオルコ (著)

内容紹介
私は東大生の将来をダメにした勘違い女なの? 
深夜のマンションで起こった東大生5人による強制わいせつ事件。非難されたのはなぜか被害者の女子大生だった。
現実に起こった事件に着想を得た衝撃の書き下ろし「非さわやか100%青春小説」! 

横浜市郊外のごくふつうの家庭で育った神立美咲は女子大に進学する。
渋谷区広尾の申し分のない環境で育った竹内つばさは、東京大学理科1類に進学した。
横浜のオクフェスの夜、ふたりが出会い、ひと目で恋に落ちたはずだった。しかし、人々の妬み、劣等感、格差意識が交錯し、東大生5人によるおぞましい事件につながってゆく。

被害者の美咲がなぜ、「前途ある東大生より、バカ大学のおまえが逮捕されたほうが日本に有益」「この女、被害者がじゃなくて、自称被害者です。尻軽の勘違い女です」とまで、ネットで叩かれなければならなかったのか。

「わいせつ事件」の背景に隠された、学歴格差、スクールカースト、男女のコンプレックス、理系VS文系……。内なる日本人の差別意識をえぐり、とことん切なくて胸が苦しくなる「事実を越えた真実」。すべての東大関係者と、東大生や東大OBOGによって嫌な思いをした人々に。娘や息子を悲惨な事件から守りたいすべての保護者に。スクールカーストに苦しんだことがある人に。恋人ができなくて悩む女性と男性に。
この作品は彼女と彼らの物語であると同時に、私たちの物語です。
内容(「BOOK」データベースより)
横浜市郊外のごくふつうの家庭で育ち女子大に進学した神立美咲。渋谷区広尾の申し分のない環境で育ち、東京大学理科1類に進学した竹内つばさ。ふたりが出会い、ひと目で恋に落ちたはずだった。渦巻く人々の妬み、劣等感、格差意識。そして事件は起こった…。これは彼女と彼らの、そして私たちの物語である。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
姫野/カオルコ
1958年、滋賀県生れ。姫野嘉兵衛の別表記もあり。90年スラプスティック・コメディ『ひと呼んでミツコ』で単行本デビュー。『昭和の犬』で第一五〇回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)