しばらく背中をさすってもらって、ようやく気持ちが落ち着いて。

「…ふぅ。相葉さん、ありがとうございます。もう、大丈夫です」


顔を上げると、心配そうに俺を見つめる相葉さんと目があって。せっかく楽しく過ごしていたのに、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「あの…ごめんなさい。俺、高いところが苦手なんです。でも、相葉さんと一緒に過ごすのが楽しくて、すっかりそのことを忘れてました。さっき、うっかり下を見ちゃって…高い場所にいることに気づいたら、腰が抜けちゃいました」


相葉さんに少しでも安心して欲しくて。なんとかいつものように笑って欲しくて。


「はは。高いところが苦手なんて、俺、マジで格好悪いっすよね。相葉さん、そろそろ下に降りましょうか」


ベンチから立ち上がった途端に手を引かれて。バランスを崩した俺はそのまま相葉さんの胸の中に。


「…良かった。また…僕の目の前で、意識を無くしてしまうんじゃないかって…」


長い腕が背中にまわってギュッと抱きしめられて。相葉さんの胸の音がドキドキと聞こえてくる。俺は相葉さんの胸の中で、じっとその音を聞いていた。


「そっか…櫻井くんは、高いところが苦手なんだ」


「はい…情けないですけど、苦手です」


「情けなくないし、格好悪くもないよ」


「ありがとう…ございます」

 

「くふふ。またひとつ、櫻井くんのことを知れたな」


相葉さんは俺をさらにギュッと抱きしめてから、ゆっくりと腕の力を抜いて


「そろそろ戻ろうか」


「はい。そうだ相葉さん、また手を繋いでもらってもいいですか?」


「うん、喜んで」


そう言って、俺の大好きな笑顔を見せてくれたんだ。