次の日、出勤した俺は事務所を覗く前に所長室に向かった。前日の宝生さんとの出来事を智くんに報告するためだ。

俺の報告を聞いた智くんは、すごく驚いて。赤くなった俺の腕を見て、何度も腕を撫でてくれた。

今後、どのように宝生さんの対応をしていくかを話し合っていると、所長室のドアがノックされて。


「失礼します。あの…相葉さんがいらっしゃってます」


「えっ、相葉さんが?」


「はい。櫻井さんにお話があると言われて。今、ロビーで待っていただいています」


「わかった。すぐ行くよ」


ロビーへ行くと、相葉さんがカウンターの前で立っている。


「相葉さん、おはようございます」


「櫻井くん、昨日は申し訳ない。僕と宝生さんの件で迷惑をかけてしまったみたいで…」


「えっ、あの…」


「そうだ、腕、腕を見せて」


俺の腕を掴んで、カッターシャツの袖をまくって


「うわ、赤くなってる。でも、腫れてはないみたいだね。大丈夫?痛くない?」


「はい…大丈夫です」


「あぁ、良かったぁ。昨日の夜、風間から話を聞いてさ、それから心配で心配で。本当に何ともないんだね」


「あ、はい。ありがとうございます。あの…それで…」


「櫻井くん、今朝、僕から宝生さんにお断りの連絡をしたから」


「え…相葉さんが…ですか?」

 

「うん。かなりキツめに話しておいたから、もう櫻井くんに迷惑はかからないはずだよ」


「…宝生さんは納得されたんですか?」


「さぁ…どうだろう。でも、納得してもらえなくても、僕は宝生さんと結婚する気はないんだから」


何故だろう…いつもの相葉さんとは違う気がして。俺は胸がざわつくのを感じていた。