今日は相葉さんと宝生さんの初顔合わせ。
俺は菊池と一緒にロビーの奥で相葉さんと宝生さんを待っている。

結局、あの後、宝生さんからお話を聞くことはできていなくて。そのせいか、俺はなんとなくソワソワしていた。


「ねぇ、櫻井さん。宝生さんはどうして相葉さんを指名したんですかね?」


「さぁ何でだろうな…」


「会員登録をしてすぐにでしょ?相葉さんとお知り合いなんですかね?あ…ひょっとして元カノとか?」


「…知らないよ、そんなの」


「え、櫻井さん怒ってます?」


「…怒ってねぇし。ほら、もうそろそろ時間だぞ。お前はちゃんと宝生さんをお迎えしろよ」


ここの事務所で初顔合わせなどのお見合いをする時は、玄関やロビーでお二人が鉢合わせしないように、事務所に来てもらう時間を少しずらしてある。


時間を確認した菊池が、玄関横のカウンターまで行ったすぐ後に、女の人が1人、入って来た。


「宝生さん、こんにちは。お待ちしていました。担当の菊池です。今日はよろしくお願いします」


「菊池さん、こんにちは。宝生です。よろしくお願いします」


「宝生さん、今日のお部屋をご案内しますね」


宝生さんは毛先をクルッとカールさせて、淡い色のワンピースを着ていて。


「なんか…綺麗な人…だなぁ」


菊池が宝生さんを案内するのを眺めていると、不意に宝生さんと目があって。慌てて会釈をすると、宝生さんは笑顔を見せてくれたけど、その目は少しも笑っていないように見えたんだ。