「ここだよ」

相葉さんに連れられてきたのは、古ぼけた外観の3階建てのビルの前。

パッと見た感じ飲食店が入っているとは思えない。


「ちょっと待ってて」


相葉さんがコートのポケットからスマホを出して話し始めて。


「お待たせ。じゃあ、行こうか」


相葉さんが、マーロウを引き連れてビルの中へ入っていったから、俺も慌ててビルの中へ。

ビルの中は一般的なオフィスビルの様で。でも、1階には人の気配はない。

相葉さんがエレベーターを使わず、階段を登っていくから、俺も階段を登っていった。


2階に着くと、黒いスーツの男の人が立っていて。


「相葉さま、いらっしゃいませ。お待ちしておりました」


「うん。今日はよろしく頼むね」


「かしこまりました。お連れの方も一緒にお入りくださいませ」


スーツの男の人がドアを開けると


「うわぁ…凄ぇ…」


昼間だというのに店内は薄暗く、間接照明がバランスよく置かれていて、オレンジ色の温かい光で照らしている。

たぶんだけど、そこかしこに置かれている調度品もいいお値段がすると思われる。

広い店内にはカウンターといくつかのテーブル席。テーブルとテーブルの間は適度な広さがあって、隣を気にせずに会話が楽しめる様になっているのだろう。


「ここって…会員制のBARなのかなぁ…」


珍しさに入り口で突っ立ったまま、キョロキョロと店内を眺めていると


「櫻井くん、こっちだよ」


いつの間にか、店の奥の方へ行っていた相葉さんが俺を呼んだ。