「…もしもし?」
『あ、翔くん。やっと出た。今どこ?』
「えっと…アパートの…部屋?」
『ふふ、翔くん、嘘ついてるよね』
「えっと…その…」
『翔くんさ、今、事務所で相葉さんのファイル見てたでしょ』
「えっ、どうしてわかったの?」
どこかに隠しカメラが置いてあるのかと、周りを見渡してみる。
『ふふ。周りを見てもカメラなんて置いてないからね』
「だからどうしてわかったの?」
『わかるよ。何年、翔くんと一緒に働いてると思ってんの。ダメだよ翔くん。相葉さんとの面談が進んでないからって、休み返上で仕事しちゃ。今日は完全休業日だろ?』
「そうだけど…」
『そんなファイル眺めてたってさ、いい考えが生まれるとは思えないよ』
「でも…」
『でも、じゃない。休みの日まで仕事のことを考えていたらさ、身体も心も休まらないだろ?休むときはしっかり休まないと、いいパフォーマンスができないと思うけどな』
「智くんの言うことはわかるけど…」
『わかったなら今日はもう帰りな。いいね、これは所長命令だよ』