内容も知らずに、辻村深月さんだからと手に取った小説。

すごくドロドロした内容でした。

 

これが、私の、復讐。私を見下したすべての男と、そして女への――。一人の美しい大学生の女と、その恋人の指揮者の男。そして彼女の親友の女。彼らは親密になるほどに、肥大した自意識に縛られ、嫉妬に狂わされていく。そう、女の美醜は女が決めるから――。恋に堕ちる愚かさと、恋から拒絶される屈辱感を、息苦しいまでに突きつける。醜さゆえ、美しさゆえの劣等感をあぶり出した、鬼気迫る書下し長編。

(Amazonより引用

 

あらすじを引用して、そういう内容だったんだと思ってしまった。

物語は2章に分かれていて、1章目はあらすじでいうところの美しい大学生の女視点で、2章目は彼女の親友の女視点で描かれています。

 

1章目の主人公は、元宝塚ジェンヌの母を持つ、美しい女子大学生。

でも本人にその自覚はなく、恋を知るべきだという母の助言の元、告白してきた同級生となんとなく付き合っていた。

振り返ってみれば、出会ったその時から気になっていた指揮者の男と関係を持ち、本当の恋を知り溺れていく。

幸せの日々は続かず、彼のことを知れば知るほど嫉妬に狂い苦しい状況に陥るも、その恋を手放せずにもがき苦しむ。

そんな主人公を支えてくれたのは、恋に潔癖な女友達だった。

読んでるときは深く考えなかったんだけど、この指揮者の男がすごく最低で、友人と同様にこんな男のどこが良いのってののしりたくなります。

主人公に対して酷いことをするんだけど、その入れ知恵した相手の存在にさらに嫌悪感が深まる。

こんな男のために人生を駄目にしてしまうなんて信じられないって思う。

けれども、彼女にとってその男こそが人生のすべてで、簡単に手放せてしまえないからこそ苦しいというのもなんとなく分かる。

そこまで好きになれる相手がいるというのは羨ましいとは思えないけど。

 

2章目の主人公は、そんな悲劇のヒロインである彼女を支える女友達。

1勝目の主人公とは正反対で、幼いころから肌トラブルを抱え、クラスの格好良い男子にいじめられ、その男子の周りで他の女の子たちにくすくす笑われる屈辱的な扱いを受けていた。

彼女を救ってくれるはずの家族でさえ、優秀な姉と比べられ冷たい仕打ちを受けていた。

そんな男子たちと離れ、学力の良いところに進学すると、普通の子としての扱いを受け、二度とあんな環境に戻らないと誓うも、抜けない棘として残っていた。

そして大学生になり、美しく会話も弾む1章目の主人公と出会い、自分の人生が花開いていく予感を受ける。

しかし、人生はそう簡単に上手くいくわけもなく、男性と、1章目の主人公の他の友人たちに対し嫌悪感を深めていく。

1章目の主人公が恋に溺れ堕ちていったとき、傍で支え、彼女のことを理解できる唯一の親友として自信を深めていく。

しかし、彼女の転落振りは想像の範囲を超えていたのだった。

 

何を失ってでも大切にしたいもの。

それを手に入れてしまった二人。

犠牲にしたものが大きすぎて、二人ともすべてを失ってしまう。

これは不幸なのか、ある意味幸せなのか。

執着の果ては崩壊でしかないんだなとしみじみ感じてしまいました。

物語としてはとても面白く、読んだ後しばらく忘れられない作品となりました。

描写が凄く上手いから、まるで身近で見てきたように感じてしまいました。

後味はけっして良くないので、人に勧めるのはちょっと躊躇します。