マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」をめぐり、またトラブルだ。別人の医療情報が誤ってひも付けられたケースが昨年12月から先月22日までに、新たに60件あったことが12日、厚労省の調査で判明。うち4件が閲覧されたという。 
 
 問題だらけでも、岸田首相はどこ吹く風だ。12日の衆院決算行政監視委員会で、マイナ保険証について「一体化にはメリットがある」と繰り返し強調。現行の保険証を「来年秋に原則廃止する方針に変更はない!」と明言した。 
 
 保険証廃止のツケを負わされる国民はたまったもんじゃない。マイナ保険証には、いくつも“面倒”がつきまとうからだ。 
 
 マイナカードに書き込まれた電子証明書は有効期限5年。期限を過ぎると健康保険証として使えなくなるため、5年ごとに電子証明書の更新手続きをわざわざ役所窓口で行わなければならない。
有効期限の2~3カ月前をメドに「有効期限通知書」が送られてくるが、黙っていても、期限までに被保険者の手元に新たな保険証が届く現行の仕組みに比べ、面倒なのは言うまでもない。 
 
加えて、更新手続きが、かなり煩雑だ。カードの登録者本人が更新する際、役所窓口には原則として
①マイナカード
②通知書(忘れても可)
③カード交付時に設定した暗証番号──が必要となる。
特に厄介なのが③。署名用の暗証番号(6~16ケタの英数字)、利用者証明用と住民基本台帳用の暗証番号(それぞれ4ケタの数字)を窓口に用意する必要がある。 
 
更新時期に「無保険者」が続出する恐れ
「わざわざ暗証番号をメモして持参しろとでも言うのでしょうか!?
高齢者は暗証番号を忘れてしまう可能性があるし、例えば、介護施設などの入所者は自身で更新できない場合もある。
施設側が数十人のカードや暗証番号をどうやって管理できるのでしょうか。
高齢者はとりわけ健康保険証が必要なのに、まったく優しくない制度です。
高齢者は手続きの煩雑さゆえに脱落してしまいかねず、若い人は『どうせ、あまり病院行かないから』と、無保険状態のままでいるかもしれない。
マイナ保険証の更新時期に『無保険者』が続出する恐れがあります」 
 
一方、マイナカードを持っていない人や、保険証とひも付けていない人は来年秋以降、被保険者を証明する「資格確認書」を毎年申請しなければならない。これも非常に手間だ。 
 
「本来、カード取得は任意だったはずが、保険証の廃止で取得を強制され、取得しないと手間を負わされる。国民皆保険制度の破壊と言わざるを得ません」 
 
岸田政権は国民が行政サービスを受ける選択肢を奪い、国民に不便さを味わわせることで、マイナカード一択に追いやろうとしている。マイナカードの登場によって、どんどん“不便”になっている。「人に優しいデジタル化」をうたっているが、そんなデタラメな看板は一刻も早く下ろすべきだ。