あらすじ

 秋、六条の御息所は、源氏との愛情生活に終止符を打って、

娘の斎宮とともに伊勢に下って行った。あの生き霊事件以来、

気まずい間柄になったが、源氏にとっては未練の残る年上の

愛人だった。

 十月、桐壺院の病状が悪化して崩御する。政権は、朱雀帝

の外祖父、右大臣方に移った。左大臣や源氏方にとっては政

敵である。

 年が明けて、右大臣方の圧迫は露骨になり、源氏や藤壺方

には官位の昇進もなく、ついに左大臣は辞職する。源氏は公

務に出ず、詩作で憂さを紛らわす日々を送るようになった。

 

 

藤壺は、東宮の後見役である源氏を信頼する一方で、その求

愛の激しさに悩んだあげく出家してしまう。不安定な政情の

もとで、わが子の東宮を守るための、意義ある決断であった。

 

十帖には政敵である右大臣の娘 朧月夜 が最高位の女官 尚侍

(ないしのかみ)となって登場し、帝に寵愛されることが描か

れている。

 

朧月夜という女性が最初に登場するのは 第八帖(花の宴)

 である。宴の後、花見酒に酔った源氏は、藤壺に会おうと 

 向かいの御殿に忍び込むが、そこは右大臣の娘 弘徽殿の

 女御の邸だった。つまり源氏は政敵の邸にしのびこんだこ

 とになる。そしてその夜 結ばれた女性(朧月夜)は、弘

 徽殿の女御の妹 六の君だった。

 このことが発端となって、後に源氏は須磨に退居すること

 になる。

 

      角川ソフィア文庫ビギナーズクラシックス

                   源氏物語より