【源氏物語 第六帖 末摘花より】 ★若紫が結婚適齢期になるまで

                   源氏は気長に待っている。

                  (少女に大人の化粧を施して

                      たわむれている場面)

 二条の院におはしたれば、紫の君、いとも美しき片生ひにて、紅は

かうなつかしきもありけり、と、見ゆるに、無紋の桜の細長、なよら

かに着なして、何心もなくてものし給ふさま、いみじうらうたし。

(現代語訳)源氏が邸に戻ると、紫の君は、まだ少女ぽくって、なん

とも愛くるしい。心にしみるような紅色の映えた装いだった。無地の

桜がさね(表は白、裏は赤)の細長(上着)をしんなりと重ねて、無

邪気にふるまう姿は、抱きしめたいほどかわいい。

 

古代の祖母君の御名残にて、歯黒めもまだしかりけるを、引き繕はせ

給へれば、眉のけざやかになりたるも、美しう清らなり。

(現代語訳)古風なお祖母さま(尼君)のしつけで、お歯黒もまだだ
ったが、源氏が大人っぽく化粧させると、眉なんかもくっきりと描か

れて、かわいらしい美貌が生まれた。

 

         

 

  出典 角川ソフィア文庫 

      ビギナーズ クラシックス 日本の古典 源氏物語より