源氏物語 第一帖(桐壺)より ( 桐壺の更衣----光源氏の生母 )

                       

 いづれの御時にか、女御・更衣あまた侍ひ給ひける中に、いとやむごとなき際には

あらぬが、すぐれて時めき給ふ、ありけり。

(現代語訳)どの帝のころだったか、女御や更衣と呼ばれる何人もの妃が仕えていた

その中に、女御よりは下位の更衣で、帝の寵愛を独り占めしている妃がいた。

 

初めより我はと思ひ上がり給へる御方々、めざましき者におとしめそねみ給ふ。

(現代語訳)自分こそ第一の妃と、うぬぼれていた女御たちは、下位の更衣に出し抜

かれて、嫉妬のあまりに、さまざまな嫌がらせをした。

 

 同じほど、それより下臈の更衣たちは、まして安からず。

(現代語訳)更衣を見下すことができる上位の女御でさえこの調子だったから、まし

て同格の更衣やそれより下位の妃たちは、公然たる対抗する手段もないまま、いらい

らするばかりだった。

 

 

        出典 角川ソフィア文庫 

            ビギナーズ クラシックス 日本の古典 源氏物語より