源氏物語 第一帖(桐壺)より ★( 桐壺の更衣----光源氏の生母 )
いづれの御時にか、女御・更衣あまた侍ひ給ひける中に、いとやむごとなき際には
あらぬが、すぐれて時めき給ふ、ありけり。
(現代語訳)どの帝のころだったか、女御や更衣と呼ばれる何人もの妃が仕えていた
その中に、女御よりは下位の更衣で、帝の寵愛を独り占めしている妃がいた。
初めより我はと思ひ上がり給へる御方々、めざましき者におとしめそねみ給ふ。
(現代語訳)自分こそ第一の妃と、うぬぼれていた女御たちは、下位の更衣に出し抜
かれて、嫉妬のあまりに、さまざまな嫌がらせをした。
同じほど、それより下臈の更衣たちは、まして安からず。
(現代語訳)更衣を見下すことができる上位の女御でさえこの調子だったから、まし
て同格の更衣やそれより下位の妃たちは、公然たる対抗する手段もないまま、いらい
らするばかりだった。
出典 角川ソフィア文庫
ビギナーズ クラシックス 日本の古典 源氏物語より