最後の紅茶よ

あなたはそっと微笑んだ

 

震える指が

二器のカップをそろえる


好みの香りが静かに漂う

 

冬の初めの雨粒が

無情に窓辺を濡らす午後だった

 

あの日からどれほどの季が

 

繰り返されたのだろう

 

想い出という亡霊がかけぬけただけだった

 

好みのあの香りすら遠に忘れてしまった

 

想い出の墓標さえもない

 

冷えた雨が降る

 

冬来たりなば春遠からじはあるのだろうか

 

 

今朝は独りの昆布茶を含む

 

 

  2018030808520000.jpg