想い出の欠片ひと夏のできごと とつぜん熱く燃えた夏は なにも告げずに消えた 残り火のような火照りをのこして 消えた 一瞬の瞬きの季だった あれはまさに 妖艶のありさまだった 狂おしいほどに 怪しく燃えた夏 燃え尽きた夏 影も形も残さず消えた夏 かすかに疼く胸の片隅は 想い出の欠片なのかもしれない 独りの浜辺で思う (過去詩集から) 紫敷布