PM8:00帰宅したときマンションの入り口階段下に、見なれないおひとりさまらしき影が……
おひとりさまのわたしは、見てはいけないものを見てしまつたようである。
ほっておけない気もするし、なんとなく哀れをさそう風情もあるし…… どうしよう
「あらアンタそこでなにしているの?」
無言のままじっとただ睨んでいるだけ。
「どうしたの?、なにをしているの?どこから来たの?なぜどうしてここにいるの?」
「………」
ただじっとこちらをうかがうように睨むだけ。

連日の暑さで入り口のドアを昼夜閉め切ることはぜず、扉をひらけゴマ!にしていたせいか……
入ってこれたのであろう。
「アンタそんなところにいちゃだめよ、出て行ってくれる?」
なんの反応もない。ただじっと恨みがましく睨むだけである。
次の朝になってもじっとうずくまったまま、人影があれば丸めた背中をよじるように顔を向けるだけだ

「アンタまだいたの、そこにいてもらっても困るんだけどね」
「……ー」
ただ無言、うんでもなければすんでもない。

夜になっても朝と同じ場所、同じ姿勢のままだ。背中を丸めてじっとうずくまっている。
「あら、まだいたの?、アンタもおひとりさまなの?寂しいの」
「……」
相変わらず無言のままめんどくさそうにじっと目を向けるだけなのだ。目

3日目の朝も同じ場所に同じ姿勢のままうずくまっている。

3日目の夜とうとう耐えられなくなったおひとりさまのこの私は言った。
「アンタ行く所ないの?ひとりぽっちなの、もしかして、もしかしてホームレス?」
またしても無言。じっと見据えるだけである。
「困ったね、うんとかすんとか言ったらどうのよ!そうしてそこにいてもらっても困るのよね」
動けないわけでもなさそうだけれどお腹が空いているのかもしれない。今日で3日、同じ場所で
同じ姿勢のままいるのだものね。
部屋にとってかえしなにか食べれそうなもの、好きそうなものをと冷蔵庫の中を物色してみる。
ああこれならたべれそうかな……
「ねえ、これ食べてよ、食べたら帰ってくれるお願いだからから」
「しらない人から食べ物なんかいただいちゃいけません」って育てられたのだろうか。
臭いをかいで確かめるようなしぐさはするものの食べようとはしない。
「どうして食べないの嫌いなのでもお腹空いているんでしょう。これ美味しいんだけどね」

「しかたがないわね。ここに置くから気が向いたら食べてね」
ホッケの開きの頭二個置いておひとりさまのわたしは立ち去ったのである。

あの「猫」どこから来たものやら、ノラ猫にしては毛並みがきれいだし人なつこい様子もみうけられるし、どうしたことやら……こまったね。もしかしてリストラ猫かもしれない。飼いきれなくなった飼い主にリストラされたのではないだろうかと、迷い猫の身を案じて秋半ばの宵闇を眺めながら、身につまされるおひとりさまのわたしであった。にゃー