表紙の、ピントがずれたバラの花と、伊島りすとというマイナーな作家の名前に惹かれて手に取ってみた。
デパートの、洋服売り場の洋服の襞(ひだ)の中に、少女が入り込んで行方不明になる場面から始まる。
それから、時代は数十年飛び、現代に変わる。
静岡県のアイランド病院に、一人の少女が、救急患者として担ぎ込まれる。
緑色の嘔吐物を吐き続けることから、医師の立花麗火(レイカ)は、農薬を飲んだと判断し、内臓を洗浄するが緑色の液体が流れ続ける。
心停止し、AEDでも心臓の鼓動は戻らない。最後の手段として胸を切開し、直接、手づかみで心臓マッサージを行い、命を取り止める。
しかし、内臓が緑色をしていることに驚く。農薬ではなく、血液が腐敗を始めて緑色になっている。
昏睡状態になった少女は、病院がある、桜市のファミレスの窓際に座って、外を眺めていたところが目撃されている。その後、パニックを起こして、通路で倒れていたところを発見され、搬送されて来たのであった。
この病院では、身元不明の患者に仮名として、その年の干支と何番めかを表す数字を使って、「羊の7子」と名付けられた。
場面は変わり、高1の少年「直也」が登場し、顔がよく似た「桃」という少女と知り合う。
麗火の遠縁にあたる「マリ」がニューヨークから祖父母のところへやって来る。
長野で「羊の7子」と同じ症状の女子高校生が救急搬送される。
また、大阪で、父を金属バットで殴り殺した少年が、拘留中に緑色の吐瀉物を吐き亡くなる。
麗火は、調べるうちに「羊の7子」長野、大阪の少年少女が、そっくりな顔をしていることに気がつく。
さらに、何かに導かれるように「直也」と「マリ」が麗火の勤めるアイランド病院にたどり着く。この二人も先の3人と同じ顔をしている。
共通するのは、子供の頃、火傷をして皮膚移植をしていることと、16歳の高校1年生ということである。
しかも、その皮膚の提供者は「綾乃」という同一のドナーにたどり着く。
さらに調査を続けると、「綾乃」よりもっと昔の1945年の原爆にたどり着くことになった。
設定では日本に原爆が3度落ちたことになっており、3番めに静岡県桜市に落ちたことになっている。
その頃、女生徒たちは勤労学徒といって、男手がない工場などで働いていた。
病院でも勤労学徒として色々な仕事をしていた。そこに、同じ顔があった。しかも、麗火や同僚の先祖が関わっていた。
病院の真上で原爆は爆発し、爆発地点が想定より地表に近かったために地表に大きな穴があき、一帯の建物や人々は蒸発するように消え去った。
一瞬にして消されてしまった少女が、時代を超えて何かを伝えに来たのか?
戦争で亡くなった人の声なき声を伝えたかったのかな?
そういう話でした。